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【roots2】《29章》父母の想い・2
もう1通は父からだと分かった。
心して手に取った。
封筒にロウで封がしてある。Dの飾り文字。紋章ではないのでプライベートな手紙に使っていたのだろうか。
デイブは出来るだけ丁寧に封を剥がした。
愛するデイビッド
この書は国王としてではなく父として記す
デイビッド会いたい。何日何年経とうと君にまた会える日を願わずにはいられない。
アリソンもそうであろう。
父として、何も教え諭す事も出来なかった
【roots2】《29章》父母の想い
トレバーが発掘調査の機械を大学から運んでサイラスの下を調査した。
確かに地中に何かが埋まっていると判断して
タイラーに重機を出してもらい慎重に掘りおこした。
棺のような大きな石の箱が出て来た。
土から引き上げるのは容易じゃなく、周りの土を綺麗にどかして蓋を開けてみる事になった。
重機を使って蓋をずらすと中にも小さな箱がいくつか入っていた。
砂埃を払うとキラキラと光る貝細工の模様が入った白い箱。
【roots2】《28章》絆・2
三人分のコピーの山を眺めて、この一枚一枚に自分たちの歴史が書かれていると思うと。より重たく思えた。
この後の冒険が未だに続いている事にもため息が出た。
帰宅がすっかり遅くなり、ルビーとリリーで夕食を取ってもらった。もう寝ているかとデイブとオーウェンはそっと階段を上ってそれぞれの部屋に別れた。
リビングでルビーは待っていてくれた。
「何かわかったから遅かったんでしょ?」
顔を見るなりルビーは言っ
【roots2】《28章》絆
デイブもオーウェンもしばらく言葉を発する事が出来ずにいた。
夕陽が窓から差し込んで来て。
ハッとしたようにオーウェンが「これ、俺たちの事だよな」と言った。
デイブも「間違いないよ」と答えた。
「借りて来る」オーウェンが本を持って窓口に歩いて行った。
デイブは間違いないと口にした事でますますドキドキが収まらず深呼吸をした。閉館前の静かな夕暮れの図書館にデイブの呼吸が響き渡った。
真っ直ぐに帰宅する
【roots2】《27章》はじまり
御伽話のような昔々の話
人と自然が調和し神々が宿ると信じられている時代。豊かな森林を有する小さな国があった。
主人と民、全てが家族のような温かな国だった。
若い王と王女に初めての子が生まれる。王子だった。王は健やかな成長を願って聖なる森に植樹をし、森の神に守護を祈祷する祭事を開いた。
民の全てが森に集い王子を囲んで喜びに包まれていた。
そこへ邪悪な鬼がやってきて王子に呪いをかける。鬼が放った炎に
【roots2】 《26章》なぞとき
次の日、デイブはルビーにもサイラスの事を聞いてみた。ルビーは記憶に無いと答えた。
「オーウェンにも聞いてみたんだ。僕は前の記憶が曖昧だから…」
「ほら、前にデイブが書いた本を読んでみたら?何か思い出すかも知れないし」とルビーが提案してデイブはリビングのソファーに寝転がり自分が書いた古い本を読み返した。
特別それらしいくだりはなかった。
もしかしたら…キツネの所でデイブが落ちた穴に植えた枝かな…って
【roots2】 《25章》主人の証
次の日、朝早くからアリソンと畑を整え。
庭に木を植えて丘からの景色を眺めながら昼食を取った。
「良い眺めだね。水が良いから木も草花も良く育つんだろうね。空気も良いし!本当に良い所だね」アリソンがしみじみと口にした。
ルビーは自分が褒められたように気持ちになって「水の主はデイブなの。後で見にいきましょう!私もずっと行ってないから」と嬉しそうに話した。「大丈夫かな…」デイブが不安そうに言うとルビーはデ
【roots2】 《24章》おかえり・2
リリーが仕事から帰り4階に上がって来た。
「ただいま。お客様なのね」と言うと「リリー!!」とオスカーが喜んだ。リリーは「初めまして…?」と不思議そうにニッコリ笑った。
「リリー、僕だよ。オスカー!」張り切って言うオスカーにオーウェンは頭をかいた。
するとアリソンが「ここにいる人たちは全員が生まれ変わってもまた一緒にいるって本当かい?」と聞いた。踏み込んだ事さえも聞けてしまった。
「はい?」リリーが
【roots2】 《24章》おかえり
アリソンの家族や近所の人が見送りに来てくれた。トラックの荷台にオスカーとオースティンが乗り込むとゆっくりと動き出す。
皆んなが見えなくなるまで手を振ってくれた。
ここでの生活の長さを感じて胸が熱くなった。
オースティンがそんなオスカーの気を紛らわせるように「父さん元気かな?」と言った。
「オーウェンはきっと笑顔だよ」と答えると「デイブもな」とオースティンが言った。荷台の2人は寝そべって空を眺めると
【roots2】 《23章》新しい目標・3
次の日、オスカーがアリソンに手紙を見せた。
「色々はわからないけど…あんた達が来た時のあの必死に何かから逃げていて…頑張って働かないといけないわけがあるんだろうなとは思ってたよ。
それがこの人達とのことなんだね」
アリソンは真っ直ぐにオスカーの目を見て優しく言った。
「信じてもらうのが難しい話なんだけど…アリソンに嘘をつきたくないから。正直に話すね」オスカーが自信なさそうに一度視線を下に落とすとア
【roots2】 《23章》新しい目標・2
テクテクと階段を三階まで上がるとオーウェンが「デイブ!ちょっと寄って!」と声を掛けた。
「ん?どうした?」
「コラムだけどさ、途中になってて。場所は空けてあるからいつでも書いてよ」
オーウェンからの思いがけない誘いに驚いた。とっくに無くなった話だと思っていたから。
「まだ待っててくれてるの?」
「もちろん」オーウェンはニッコリ笑った。
「ありがたいけど…何を書こうかな。今さ畑を…丘の家に畑を整えて
【roots2】 《23章》新しい目標
「おはよう。今日は何か予定ある?」
ルビーが遅く起きて来たデイブに聞いた。
デイブは眠そうに目をこすり頭を掻きながら
「おはよう。ないよ。なんにも」と答えた。
「じゃあ、久しぶりに丘の家に行ってみない?」
とルビーがデイブの朝食をテーブルに並べながら言うとデイブはパンにかじりつきながら頭を振ってうなづいた。
「ここに住んだの短かったね」デイブがテラスに出ながら言った。
「私はここが好きよ」とルビ
【roots2】 《22章》代償・2
緑が残る枝を出来るだけ大きく持ち帰る事にした。ルビーは持っていたピンク色のハンカチをサイラスに結んで「また来るわね」と言った。
自分のせいでサイラスを失ってしまった事でデイブは茫然と倒れた木の根をただ眺めていた。
「デイブ!早くて帰ってサイラスを植えましょう」とルビーに声を掛けられ「あぁ、」と立ち上がった。「家の真ん中の庭に植えましょう」
ルビーが腕を引っ張って半ば無理矢理引きずられるように家に向
【roots2】 《22章》代償
「ルビー朝ご飯食べましょう」
ルビーはリリーの声で目が覚めた。隣りで寝るデイブを確認して寝室からそっと出た。
「リリーありがとう。」
「夜も食べてなかったでしょ?ゆっくり食べて、ここにいるから」リリーは食器に付けていたラップを外しながら言った。
ルビーは柔らかく微笑んでダイニングチェアに座った。
「デイブを待つっていつまでかわからないんでしょ」リリーがサラリとそれでいて心配そうに聞いた「うん…でも
【roots2】 《21章》サイラス
ディランとデイブは釣りに来た。
湖の風は優しく気持ち良かった。
「エサは付けてもらえる?」デイブがディランに頼むと「お安いご用さ」とディランが針に付けて
ポチャンと湖面に糸を投げ入れてデイブの手に竿を持たせてくれた。
「ありがとう」
静かに揺れる水の音と鳥の声。穏やかな時間を過ごし心を休める事が出来た。
デイブが三匹、ディランが二匹。5人分釣れたので帰ることにした。
ディランが「サイラスの所に寄