【roots2】《28章》絆
デイブもオーウェンもしばらく言葉を発する事が出来ずにいた。
夕陽が窓から差し込んで来て。
ハッとしたようにオーウェンが「これ、俺たちの事だよな」と言った。
デイブも「間違いないよ」と答えた。
「借りて来る」オーウェンが本を持って窓口に歩いて行った。
デイブは間違いないと口にした事でますますドキドキが収まらず深呼吸をした。閉館前の静かな夕暮れの図書館にデイブの呼吸が響き渡った。
真っ直ぐに帰宅する気持ちになれない2人はカフェに寄った。
コーヒーを飲んでも頭がクリアにはならない。
「本当に、本当の話だよね」
「俺たち以外は信じないだろうけどな」
デイブはかしこまって
「オーウェン、君に謝らないといけない。僅か10歳で僕のために両親から離れなくちゃいけなくなったなんて。知らなくて。ごめん」と頭を下げた。
「運命だったんだ。おかげで楽しく暮らしてる。お前のせいじゃないだろ。気にするなよ」と優しく言ってくれた。
「全ての始まりがチェイスだったんだな」
「それでサイラスが助けてくれた」
「本当に助けてくれたんだな。すげぇな」
オーウェンが感激した様子で言った。
「ルビーに話すのが怖いな」
デイブが下を向いた。オーウェンはすぐにデイブが言いたい事がわかって。少し怒って
「なんでだよ」と言った。
「だってさ、僕と同じ日に生まれたってだけで。両親から引き離されて、僕を…僕しか選べない人生を。選択肢が与えられないなんてさ。あんなに美しくて優しい人が僕しか選べないで生き続けてるなんて…」
やっぱり思った通りだと思いながら
「本気でそう思うのか?」オーウェンは静かに話し出して
「ルビーにそんな言い方するな!!絶対にだ。」と語彙を強めて言った。
「だって」
「だってじゃないだろ!この1000年。ルビーは純粋にお前を愛してるだろ?疑う余地があるのか?一度だってお前を裏切ったのか?」
「いいや」
「お前だってどうなんだ!!ルビーが嫌だったのか?自分で選んでるんじゃないのか?」
オーウェンの真剣な瞳がデイブを突き刺していた。
「愛してるよ。心からだ」デイブが真っ直ぐにそう言うと。
オーウェンは座り直して
「じゃあ、それでいい。他には何もない。それが全てだ」と話を収めた。
「ごめん。オーウェン」
「いや…俺も。すまない」
2人してシュンとして。コーヒーを口に運んだ。
デイブは、こうして叱ってくれるオーウェンがいることに心から感謝した。
それでも、1000年…2人に背負わせた重さを口に出さずにはいられなかった。
オーウェンは、デイブか何を言い出すかわかっていたのに興奮した事が恥ずかしくなっていた。まっさらな気持ちだと判っていても、
デイブの正直さを、どうにも受け止めてやれない自分の器の小ささに恥ずかしいのかもしれない。守り番。判っていた。なのに。
オーウェンもデイブと同じように動揺していたのだ。
ルビーも、きっと驚くはずだ。そして、選ばれて良かったと思うはず。デイブに謝られたら…デイブの性分がわかっていても寂しいはずだ。
じゃあ、あなたは。無理矢理選ばれた2人が嫌だったの?
俺がこんなに嬉しいのに。
そう捻くれたくなるのは俺だけか…。
「この本さ…随分と古くてもう買えないからさ。うちの会社でコピーして帰ろうか」
「うん。僕も欲しい」
「ルビーと3冊分コピーしよう。」
著作権利はとうに過ぎている。大丈夫だろと。
カフェを出て新聞社まで歩く間、オーウェンはデイブの肩に手を組んで
「俺たち三人の絆が明らかになって俺は嬉しい!!」と明るく言った。
「僕もだよ。今までの色々が腑に落ちてホッとしてる」
「俺を選んでくれた。デイブの父さんと母さんに感謝だな」肩に回した手で肩をポンポンと叩いた。デイブは何よりの嬉しい言葉に
「オーウェンありがとう!」と子どもみたいに弾んで答えた。
to be continue…
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デイブってそういう人🍀口に出して伝えて、分かり合えるように心を砕ける。
ありがとうとごめんなさいの使い方って難しいよね😌
毎週更新📙✨
ワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀
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