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【roots2】 《24章》おかえり

アリソンの家族や近所の人が見送りに来てくれた。トラックの荷台にオスカーとオースティンが乗り込むとゆっくりと動き出す。
皆んなが見えなくなるまで手を振ってくれた。
ここでの生活の長さを感じて胸が熱くなった。
オースティンがそんなオスカーの気を紛らわせるように「父さん元気かな?」と言った。
「オーウェンはきっと笑顔だよ」と答えると「デイブもな」とオースティンが言った。荷台の2人は寝そべって空を眺めるともうすぐ会える父さんの事を想い浮かべていた。

アリソンが運転しながら助手席のシャーロットに「よく頑張ったね」と話しかけた。
「私の方こそ、お世話になるばかりで…本当に感謝しています」シャーロットは体ごとアリソンの方を向いて頭を下げた。
「オスカーは1人じゃ頼りないけど、シャーロットがいるから何とかなってるタイプだよ。ホントに」とワハハと笑った。
「嬉しいです」シャーロットが微笑むとアリソンが「その…父さんと母さんは、どんな人?」と聞いた。シャーロットは前に向いて座ると微笑んで2人を思い浮かべた。
「美しい人です。心がものすごく。もちろん容姿も。でも心の美しさが誰をも包んでくれる人たちです」と2人を慕う溢れてくる気持ちが伝わった。
「そう。私なんかガサツで田舎者で恥ずかしいわ」とアリソンが言うと
「そんな気持ちを持つこと全然必要ないってすぐにわかりますよ」とシャーロットは微笑んだ。
少し夕暮れて来た頃、森の家に着いた。
トラックを停めて皆の住む家に向かった。

チャイムを前にすると帰ってきた感動に手が震えた。キンコンと軽やか音が聞こえた。

「はい」とドアが開きデイブが顔を出した。
途端「オスカー!!」と抱きついて来た。
デイブの高揚した声でオーウェンが飛んで来た。
「オースティン!!」
四階から急いで降りて来たルビーが「シャーロット!!」と次々に飛びついた。
アリソンはその勢いに驚くばかりでオロオロとしているとディランが穏やかな笑顔で近づいて握手を求めた。
デイブたちの興奮はしばらく収まりそうにない。
「なんだかオスカー精悍な顔になったわ!」とルビーが言うとオスカーはテレてニヤけた。
「シャーロットは働いた手だね。オスカーを支えてくれてありがとう」デイブはシャーロットの手を両手で包んでお礼を言った。シャーロットも恥ずかしそうに微笑んだ。
「アリソンさんですね。よく来て下さいました!とにかく入って休んで下さい。」とデイブがアリソンの両手を握り、真っ直ぐ目を見て言った。
アリソンはその透き通るような清々しい心を感じて「本当に噂通りの人だわ…」と思わず呟いた。
「良い噂です?そうであってくれ!」とデイブはふざけて祈りのポーズをするとルビーに頭をポンと叩かれ「ゆーっくり聞いたら良いわ」と言われた。
皆んなが笑って「さぁ、そろそろ中に入らないか?」とディランが言うとそうだねとゾロゾロと中に入って行った。
「オースティン、ありがとう」上に上がる前にデイブがハグをした。オースティンも嬉しくデイブの背中をパタパタと叩いた。
オスカーが階段を登りながら中庭を見て「デイブ木を植えたの?」と言った。デイブは嬉しそうに「後で2人で挨拶に行こう」と言った。

アリソンはソファーに座ってまじまじとデイブとオスカーを見て、2人の会話を聞いて、なんとも言えない不思議な感覚になった。その様子に気づいたシャーロットが「不思議過ぎます?大丈夫ですか?」と声を掛けた。アリソンは
「これは、アレだね。目で見なきゃ良い」と笑って「声だけ聞いていたら、良い父さんと母さん、おじさんたちだ。安心したよ」と言った。
デイブが「僕もこの間まで視力を失くしていたので心で見ることの方が本当だなって思ってました」と嬉しそうに返すと
「え⁈目を⁈怪我したの?」とオスカーが反応した。
「チェイスに差し出したんだ」とオーウェンがデイブの代わりに答えた。
オスカー、シャーロット、オースティンの3人は驚いて声が出ない。
時が止まったような3人に「もう見えるから、何でもない」とデイブが笑って「そうそう、別に不自由も無かったし、楽しかったよね」とルビーが続けて笑った。
するとオスカーが火がついたように
「ルビー!!何故連絡してくれなかったんだよ!!」と怒鳴った。ルビーはびっくりして
「だって、少しの間なのよ…それに皆んなで楽しくやれていたし…」とオドオド答えた。オスカーの怒りは収まらず
「どうして僕を頼りにしてくれないんだよ!!」とまだルビーを責めた。
アリソンが「オスカー!母さんに対してなんて態度だ!あんたに心配かけまいとしてくれた2人にありがとうって言うべきだろ?」と叱ってくれた。
「まぁ!アリソンさんも私の味方ね♡」とルビーはアリソンに抱きついた。オーウェンとオースティンが大笑いして「ルビーに対抗しようなんて。敵わないに決まってんだろ」と言った。
話はそれで収まるかと思われたのに、
それまで黙っていたシャーロットが「怒るなんてどうかしてるわ!!」と泣き出した。
デイブはオロオロして「どうした?怖かったかな?」とシャーロットに寄り添うと「オスカーだって、2人がどんなに大変な戦いをしたのかって言ってたじゃない?わかってたでしょ!私たちを逃してから2人は戦い続けてたのよ!!目を捧げて…想像以上だったわ!!こんなにまでして私たちを守ってくれたのに怒るなんて!!」シャーロットが息するのも忘れているかと思う勢いでオスカーを叱りつけた。大人しいシャーロットがそうまで感情を出すことは珍しかった。
これまでの自分の思いも重なってオスカーの子どもじみた振る舞いに黙っていられなかった。
ルビーがデイブに席を譲ってもらい隣に座ると
「シャーロットありがとう。本当に優しい子ね。自分も苦労したでしょうに。私は大丈夫。オスカーはね焼きもち焼きなの」とシャーロットの頭を撫でてコラッと優しく叱る目でオスカーを見た。
シャーロットは縁もゆかりもない自分たちにチェイスの手が伸びないよう1人犠牲になる事を選んだデイブの気持ちを考えると居た堪れなかった。
どれだけの恐怖を一人で抱えると決めたのか。
それを側で支えていた皆んなはどんな気持ちだったのか。
子どもたちを守る親とは、こんなにも愛だけで行動出来るものなのか。

「オスカー、謝りなさい」ディランが場を収めるべく静かに間に入ってくれた。
オスカーはバツが悪そうに「ルビーごめんなさい。シャーロット…ごめんよ」と言った。
「うちの男子は6歳児ばっかりだから本当に大変よ」とルビーが笑うとシャーロットは「6歳久しぶりに聞いた」とルビーの方をみて少し笑った。
その様子をみてアリソンは心からほのぼのとした。こういう所で育った子なんだなとオスカーの甘ったれた所にもうなづけた。
まるで御伽話の世界のように、
ここにいる人たちが全くもって何歳だとか。
大人か子どもかなんて関係ない。
この不思議な空間に心地良いとさえ思い始めていた。
思う事を何でも口に出して、不貞腐れたり泣いたり笑ったり。何でも赦される。
この人達にいつの間にか溶け込んでゆく自分が不思議だった。

to be continue…
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帰る所があるって贅沢だよね✨


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