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【roots2】 《22章》代償

「ルビー朝ご飯食べましょう」
ルビーはリリーの声で目が覚めた。隣りで寝るデイブを確認して寝室からそっと出た。
「リリーありがとう。」
「夜も食べてなかったでしょ?ゆっくり食べて、ここにいるから」リリーは食器に付けていたラップを外しながら言った。
ルビーは柔らかく微笑んでダイニングチェアに座った。
「デイブを待つっていつまでかわからないんでしょ」リリーがサラリとそれでいて心配そうに聞いた「うん…でも…今までも何年でも待ってきたから。デイブって私を待たせたいみたいなの」とスープにスプーンを入れながらルビーが言うと「えらいわ。信じてるのね」リリーが隣に座った。
「私…デイブがいない世界が考えられないから…心配かけてごめんね」ルビーが顔を上げるとリリーは力こぶを作って「私はいつだってルビーの味方。デイブが目を覚ましたら怒ってあげる」とニッコリ笑った。
心も体にもリリーの優しさが染み渡ってルビーは目を閉じ深呼吸をした。
「ずっと息が浅かったの。胸が苦しくて…でもありがとう。頑張るね」
さ、食べて食べて。とリリーが言ってルビーはお腹いっぱい綺麗に食べた。

リリーと別れて寝室に戻ると。
そこには現実があった。
横たわるデイブ。
「よし!」ルビーはカーテンを開けて部屋に明かりを入れた。
「朝ですよ!お顔を拭きましょうね」ぬるま湯に着けたタオルを絞って顔を拭き、手のひらと足の裏も拭いて。「体は夜にね」と洗面器を持ち上げ立ち上がると「あぁありがとう。気持ちが良い」と声がした。
ルビーは振り返りデイブをまじまじと見つめてみた。
声がしたような気がしたけど…
デイブはゆっくりと目を開けてルビーを見つめた。
ルビーは驚きながらも静かに
洗面器をテーブルに戻してデイブの顔を両手で持って目をじーっと見た。目が合っている。おそるおそる「見えるの?」と聞くと
「見える。おはよう」と何でもない朝のように伸びをして答えた。
なにそれ?なになに?ルビーは
「おは…よう。本当に早かったわね」と精一杯のかすれた声で言うと涙をポロポロとこぼした。
「あれ?どうしたの?大きな涙が見える」とデイブは少しふざけてルビーを隣に寝かせ背中をぽんぽんと叩いた。ルビーは「早くてびっくりしただけ。目が覚めないかもしれないって…思ってたから」と言いながら声を上げてワンワン泣いた。
「そうか…そんな風に。久しぶりに見れた顔が泣き顔だなんて。僕はダメだな」とデイブが言うとしゃくり上げながら「見えて良かった!」とルビーが怒ったように言った。
「そうだね。泣き顔だってルビーが見られて幸せだ」と髪を撫でた。
「何日寝てた?チェイスはどうしたの?」
「寝てたのは夜の間だけよ。チェイスはサイラスが力を貸してくれて」
「そう。僕の周りには優しくて助けてくれる人ばかりだな」デイブがしみじみと言うとルビーが突然体を起こして「ディランとオーウェンを呼んで来る!!」と言って勢いよく走り出した。デイブの言葉で2人を思い出した様子だ。

2人はルビーに呼ばれて急いで4階に来た。
デイブを代わる代わるハグして泣いた。
「体は?どこもなんとも無いのか?」ディランが心配した。「まだ起き上がってもいないからわからないけど。気分は良いよ」と笑って答えた。
「余計なことをしたんじゃないかと…良かった。本当に。良かった。」ディランがベッドに座り込んだ。デイブは体をゆっくり起こして「ディラン。ありがとう。これで僕もまたディランみたいに誰かを守っていける」と言った。
ディランは心から嬉しそうに微笑むと「早かったな」と言って立ち上がりオーウェンに場所を譲った。「一晩だけで本当良かった。」オーウェンが言うと「一晩のわりに…髪が伸びてないか?」とデイブが自分の顔の横にある髪を触った。
2人はクスクスと笑って。「似合っているから良いんじゃないか?」と言う。
デイブはクスクス笑う2人が気になって「トイレ行って来る」とふらつきながら立ち上がって洗面所へ入り鏡をみて驚いた。
「おーい!!なんだ!?目が見えてない間にこんなに伸びてたのか…気にしてなかった…」デイブは自分の長髪にびっくりして洗面所を出た。
この数ヶ月、髪の長さなんて気にも留めていなかった。
「あら、似合ってるわよ。お姫様みたいよ」とルビーに言われ恥ずかしさが倍増しグシャグシャに頭を掻いた。
「見えるって厄介だね」目から入った1番目の情報が羞恥心とは。デイブらしくて皆安心した。
その晩すぐにリリーに短く切ってもらって、すっかり元のデイブになった。

一週間経ち、歩く力も戻って来たのでルビーと2人でサイラスに会いに行った。
目の前にサイラスか見えて来た時。あまりのことに2人の足が止まった。

サイラスは枯れ果てていた。
茂っていた葉はほとんど無く。折れた枝も地面に散らばり、木肌も剥がれ落ち、幹の中はスカスカになっていた。近づけば近づくほどサイラスの変わり果てた姿が痛々しかった。
おそるおそるデイブが触れると
「やぁ、デイブ目が覚めたのか?」と割れてかすれた声が森に響いた。
「僕のために全てを使ったんだね…だから」デイブが言うと「綺麗な水があれば木はまた育つ。新しくなる時が来たって言うだけさ」優しく言って苦しそうに息を吐いた。
「そんな…サイラス!君がいてくれなかったら僕は…きっと殺人鬼になっていたよ。君がいてくれたから…いなくならないで!」デイブは涙を浮かべて両腕でサイラスを抱きしめた。
サイラスに回したデイブの手をルビーが握って
「サイラス、私の大切な人を助けてくれて本当にありがとう」と言った。
「あぁ、ルビー。僕もデイブが大好きだから本望だよ」またふぅーっと息を吐いた。
「そんな事言わないで!何か出来る事は無い?」
「見てご覧。幹はスカスカ…手の施しようはない。ただ」
「ただ?」
「良い枝を土に刺しておけばまた木になってゆくかもしれない。今のうちに、まだ生きていそうな枝があれば育ててくれないか?2人に…託したい」
2人は巨木を見上げ近くの枝に手を伸ばした。
パリパリと乾いた音を立てバラバラになるばかり。
「上の方に緑が見える!僕が登って…」
「あぁ、デイブ。登らなくて良い。今日君たちに会えたから。もう俺の役目は終わりだ」
「何言ってるんだよ!!」デイブが怒ると
「もう支えられないんだ、立っていられないんだよ…」ザラザラとした深呼吸をして
「デイブ…負けるな…自分の使命を全うして…また会おう…約束だ。俺を持ち帰って…」
「もちろん!もちろん大切にする。だからって!」「離れろ!!」
サイラスが言うと巨木が倒れ始めた。
デイブとルビーは手を取り走って遠くへ離れた。
ドッシン!!バキバキバキ!!とサイラスは根本から倒れた。
「サイラス!!」2人は叫んで駆け寄ったがもう話す事は出来なかった。


to be continue…
*******

長くなるから中途半端に区切ってごめんなさい🙏
とにかくデイブの目が覚めて、目が見えて。良かった…
サイラスを失いたくない!!

毎週水曜日更新📙✨

ワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀
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