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浦和レッズが初めて勝利した29年前の5月29日。スタジアムに「大ハンドコール」が沸き起こった


ファンの存在やその素晴らしさ。
これを考えていくことや、この大切さを伝えていくことが自分のライフワークになっている。

もし「ファンの素晴らしさを知る原点となる出来事を挙げてください」と聞かれたら、自分はこの日のことを答えるだろう。

1993年5月29日。
ホーム駒場競技場で行われた、浦和レッズvsヴェルディ川崎。
ちょうど29年前の今日のことであった。




実は、この日のことは映像やWEBなどでもほとんど見つけることができず、正直うろ覚えの部分もあった。

ところが、浦和レッズのマッチデープログラムを長年制作している清尾 淳さんが本日のnoteでかなり詳しい内容を書いてくださったおかげで、その答え合わせをできることになった。

あの「ハンドコール」が実際にあって、その後にハンド取り消しがあったこと(もちろん審判の判定には影響してなかったと思うけど)。

一進一退の試合の中、PK戦の末、ギリギリで勝利(浦和レッズとしてのJリーグ初勝利)し、その後浦和の街が勝利の喜びに包まれたこと。

やっぱり、自分の記憶は間違っていなかったのだ。

そこで、1年前に書いた記事をリライトし、29年前の熱い試合を再び蘇らせていこうと思う。



1.熱狂のスタジアムを作るために

これまで、スポーツの素晴らしさや熱狂のスタジアムを作るためにはどうしたら良いかをテーマに記事を書き続けてきた。


その中で、応援するファン・サポーターの熱量を上げるためには、どうしたらいいか。その熱量が上がるトリガー(引き鉄)は何かということを深く考えるようにもなってきた。

そこで、ファン・サポーターの熱量が上がる瞬間を探るために、まずは自分が浦和レッズの存在を無二のものと感じるようになった体験を思い出し、そこで何が起こっていたのか、そこで心はどう動いたかを自分なりに紐解いていきたい。



2.Jリーグ開幕元年 レッズvsヴェルディ

Jリーグがスタートした1993年。
日本に新しいプロスポーツが誕生したということ当時は、日本中が熱狂するような社会現象が起きていた。地上波のゴールデンタイムに試合が中継されるようなことも普通にあった。

当時の1番の人気チームと言えば、やはりヴェルディ川崎(現 東京ヴェルディ1969)だろう。今でも現役のカズを筆頭に、ラモス、武田、北澤、柱谷哲二とまさにスター軍団と言われるほどメンバーが揃っていた。

対する浦和レッズは、この日まで開幕4連敗。
攻守が噛み合わず、リーグ開幕のお祭り気分になれないような試合が続いていた。

そんな対照的な両者が、浦和レッズの本拠地である駒場競技場(現 浦和駒場スタジアム)することになった。


(現在の浦和駒場スタジアム)

実は…いろいろ調べてみたけれど、この試合の動画はインターネット上では見つけることができなかった。
それどころか記事としてもほとんど残っていない。
よくよく考えると、まだインターネットが一般に普及していない時代のことだ。まだ携帯電話にカメラ機能はなく、ポケベルが普及していて「ポケベルが鳴らなくて」というドラマがヒットしたのもこの年である。

記者の方もそうだし、一般のサポーターの方も、記事を残すということが出来にくかったのかもしれない。


だからこそ、今、自分が記事で残すことは意味があると思う。

ここからは、自分の記憶の中と、わずかに見つけた記事を照らし合わせながらこの先を書いていきたいと思う。   
(もしかしたら、少し思い込みの部分があるかもしれないけれど、ご容赦いただければと)

※参考にさせてもらったのは、浦和レッズのオフィシャルサイトに11年前に上げられたコラム「18年前の今日(5月29日)」
清尾 淳さんが書いてくださった記事だ。



3.一進一退の攻防

スタジアムは駒場競技場。
4連敗中で気落ちをしているとは言え、スター軍団のヴェルディに一泡食わせてやろうと言う熱い気持ちでサポーター達は集まっていた。

しかし、その気持ちを打ち砕くように、前半8分柱谷哲二のゴールでV川崎が先制。

それでも自分たちのホームということで、前半は0-1のまま踏ん張る。

そして迎えた後半4分。浦和レッズの攻撃が牙を向く。池田が遠めからシュート。名取篤に当たったボールを河野が蹴り込み、同点!
これまでの試合で相手の先制点に追いついたことが一度もなかった浦和レッズ。

いける。勝てる。
そんな雰囲気にスタジアムが包まれた。 

(写真はオフィシャルサイトのコラムより転用させてもらっています。使用不可の場合はご連絡ください)


4.武田選手の試合を決定づけるゴールが突き刺さる!しかし

しかし、世の中そんなに甘くない。
試合の後半、ヴェルディの武田修宏が放ったシュートがゴールネットに突き刺さった。
喜ぶヴェルディの選手とサポーター達。

浦和側は、シーンとした雰囲気に。
でもその時、今では考えられないことがスタジアムで起こった。

スタジアムがざわつき始めたのだ。

「いま、手でトラップしたよな」
「ハンドだろ。ハンド」

VARが導入されている現在なら、審判団がレビューしてすぐに確認できるだろう。でも、当時にはそんなものはない。



5.スタジアムにこだまする大ハンドコール

スタジアムのざわつきはますます大きくなる。
このまま試合が再開されては、絶対にいけない。そんな気持ちがサポーター達の中で出たのだろうか。


なんとスタジアムが一体となって

「ハンド、ハンド」

と大ハンドコールを始めたのだ。

このハンドコールをバックに審判団の協議は続く。

そして、主審が笛を吹いた。

結果は、ハンド!
なんとゴールは取り消されたのだ。

「うぉー、やった!まだいけるぞ。」
浦和サポーターの応援が一気にヒートアップしていく。

この部分について、参考にした浦和レッズのオフィシャルサイトのコラムではこのように書かれている。

トラップ時にハンドがあったとして、取り消される一幕もあった。

さらっと書かれているけれど、ハンドの取り消しは実際にあった。やはり自分の記憶は間違っていないようだ。このことが、実際のスタジアムで起きていたのだと確信に近いものが持てるような気がした。

(2022年5月29日追記)
このハンドコールについて、清尾さんが今日の記事でこのように書いてくれている。

VARなくても、見逃さないハンド

さすがにヴェルディは試合巧者。
レッズの勢いをうまく削ぐやり方でしのぎ、また攻勢を取り始めた。
そしてヴェルディの武田修宏が右サイドでパスを受け、そのまま持ち込みシュート。
2点目が決まったかに見えたが、パスを受けた際にトラップしたボールが手に当たっていたということで取り消された。主審が副審に確認に行ったのだが、それを促したのはスタジアムを揺らすかのような「ハンド!ハンド!」の大コールだった。




6.試合は延長戦からPK戦へ。そして歓喜

試合はこのままVゴール方式の延長戦に入る。
延長の30分も両者得点がなく、当時のルールであった完全決着のPK戦に持ち込まれた。


なんとか初勝利を掴みとりたい!
これまで勝利から見放されていた浦和レッズ。
前年度に行われたナビスコカップ(現ルヴァン杯)の準決勝で同じヴェルディにPK戦で負けたことを思い出したサポーターも多かったに違いない。

勝ちたい。
スタジアムにヒリヒリするような緊張感が張り詰める。

そして…

勝った!

なんとPKで、スター軍団のヴェルディに勝ったのだ。
負け続けていたレッズのJリーグ初勝利。
それが今日5月29日だったのだ。

歓喜。
スタジアム中に赤いフラッグが振られ、紙吹雪が舞っていた。
スタジアムの中だけではない。浦和の街中にガッツポーズが起こっていたに違いない。

「やっぱり俺たちがついていないとダメだよな」
自分もそうだけど、サポーターの多くがこう感じたことだろう。

浦和レッズがアジアNo. 1の熱狂的なサポーターと言われることがある。その熱狂の原点の一つは、この試合だったのかもしれない。


当時の試合結果がベースボールマガジン社から出ている浦和レッズ10年史に載っている。

記事はなかったけれど、当時の試合結果が残っている。




両チームとも懐かしい選手の名前が多い。
今でも現役を続けているキングカズ。ただただ尊敬としか言いようがない。
同時からキング的なオーラはあったけれど、今はゴッドの領域かもしれないな。

主審は有名な岡田正義さん。

当時の駒場スタジアムは、改修前で満員でも9,690人。
つまり、この勝利をスタジアムで見届けたのはこれだけしかいないことになる。
現在ホームにしている埼玉スタジアムは6万人を超える収容人数。多くの人が熱狂できるということは幸せという他ないだろう。

(昨年、観客数についてこんなことを書いています)


この年、浦和レッズは負け続けダントツの最下位となった。
偉い方からJリーグのお荷物と比喩される屈辱もあった。

この年の悔しさは、後々のリーグ制覇、アジア制覇をした時の大きなバネになったに違いない。
(いずれ、その時の話も書きたいと思う)



7.スタジアムでは多くのドラマと奇跡が起こってきた

あれから29年。
日本中にJリーグのクラブができ、素晴らしいスタジアムとサポーターが増えていった。

スタジアムでは多くのドラマと奇跡が起こってきたし、これからも起こり続けると思う。そして、その瞬間に立ち会ったファン・サポーター達の熱量は高まり、熱狂の渦が沸き起こっていく。
それが、自分達の持っているアイデンティティと重ね合わさり唯一無二の存在になっていくのだ。



最後に

今、スタジアムではサポーターたちの応援の声が出せない状況にある。
しかし、この後、徐々に解除されていくという動きもあるようだ。
そんなに遠くないうちにあの熱狂のスタジアムが戻ってくるはず!

そう。
あの「ハンドコール」のようにサポーターの声が大きなチカラとなるときが間もなく来るはずだ。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


このマガジンでは、スポーツの持つ価値やスタジアムの熱量を上げていくために何が必要かを書き綴っています。

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