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スター・ウォーズの夢は終わらない

【『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』/ロン・ハワード監督】

かつてジョージ・ルーカスは、盟友であり、今作の監督を務めたロン・ハワードに、ある壮大な夢を語ったという。

「『フラッシュ・ゴードン』っぽいクラシックな雰囲気のある映画。ただし、もっとスピード感のあるSFを『2001年宇宙の旅』のような特撮で作りたい。そしてその世界をいろんな宇宙人で埋め尽くしたいんだ!」

言うまでもなく、ここでルーカスが語っているのは「スター・ウォーズ」シリーズの構想である。

しかし、それがまだ一人の男が胸に抱く夢でしかなかった時、いったい誰がそんな壮大な物語を想像できただろう。

ルーカスの夢は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の公開によって形になり、その後40年以上にわたって、世界中のファンに愛されながら、そのスケールを広げ続けている。

そのあまりにも壮大な世界を前にして、クリエイターたちの探究心は刺激され、新たなイマジネーションに繋がる。

そして僕たち観客は、止めどない好奇心をもってキャラクターやエピソードを究明して、物語に更なる奥行きが与えられていく。

だからこそ、「スター・ウォーズ」が届けてくれる感動は決して尽きることはない。

ルーカス・フィルムがディズニーの傘下に入ったということは、ビジネス的にもそれが約束されたということだ。

きっと、僕たちの子供の世代、孫の世代のクリエイターたちが、「スター・ウォーズ」の物語を紡ぎ続けていく。

そして、僕たちが受け取った興奮は、次の世代の観客に伝統として受け継がれていくだろう。

昨年公開された『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に次ぐ、スピンオフ作品の第2作目である今作では、ハン・ソロの若き日の冒険が描かれている。

"ジェダイ"や"フォース"といった用語こそ出てこないものの、『〜/帝国の逆襲』『〜/ジェダイの帰還』を執筆したローレンス・カスダン、および息子のジョン・カスダンが手がけた脚本は、僕たちが愛し続けてきた「スター・ウォーズ」の世界観を強く想起させる。

旧3部作を思わせるような、どこか懐かしい雰囲気を感じたのも、きっと僕だけではないと思う。

今作では、ファンの間で伝説と語り継がれていた"ケッセルラン"で起きた出来事が描かれるし、ミレニアム・ファルコンに高性能のナビが内蔵されている理由や、ハン・ソロやランドがこの船のことを「彼女」と呼ぶ理由も明かされる。

何より感動的なのは、ハン・ソロとチューバッカが、初めてミレニアム・ファルコンを操縦するシーンだ。

僕は旧3部作をリアルタイムで劇場で体験した世代ではないが、そのシーンで流れる"あのテーマ曲"を耳にした時、往年のファンと同じ興奮を味わうことができた気がした。

このように今作には、無数の小ネタやトリビア、過去作品へのオマージュが散りばめられており、ライトなファンにとっては、ハードルの高い作品と思われてしまっているかもしれない。

しかし、この感動と興奮を味わうために必要な前知識なんてものは一切ないし、むしろ僕は、今作で初めて「スター・ウォーズ」を体験する人が羨ましい。

本国アメリカでは、興行成績が振るわなかったため、ディズニーは今後の製作ペースを見直すことになるかもしれない。

しかし「スター・ウォーズ」は、これからも最も強い影響力を誇る映画シリーズとして、僕たちに夢を届け続けてくれるだろう。

今作を映画館で体験できたことは、ファンとしてたまらなく嬉しいし、またこれから"はるか彼方の銀河の物語"が新たに紡がれていくことが、今から楽しみで仕方がない。


※本記事は、2018年7月16日に「tsuyopongram」に掲載された記事を転載したものです。

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