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次の駅までのひとときに

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わたしのなんでもないエッセイ
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#書くこと

リアルタイムを書く覚悟を決めたら、noteが少し豊かになった

リアルタイムを書く覚悟を決めたら、noteが少し豊かになった

思考はいつも感情の後にやって来る。私の場合、心動かされる出来事が起きてもすぐには言葉にならない。書くときも少し時間を空けて、結論までの道筋が経ってから机に向かう。

一度感情に専念している分、記憶には残りやすいらしい。その時の心情の変化や周囲の景色、ささいな物音まで思い出せる。長く抱えている間に、他の経験と組み合わせて思考を強化させたり、熟成させたりもできる。自分のこの習性に書き手として何度も救わ

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文章教室に通ったら、もやもやがステキで弱さは強みだったこと。

文章教室に通ったら、もやもやがステキで弱さは強みだったこと。

「接続詞は基本的にいりません」
そして、に朱で二重線。
「この文は2行前と同じ内容を説明しているだけですね。消しましょう」
ペンが勢いよく下へ走る。
「この段落はほとんど効果がないです」
ガッ、ガッと紙を掻く音。大きなバツ。
「よくはなりましたが、まだ取材先の魅力に踏み込めていません。都村さんの心がどこに動いたのかもう一度じっくり考えてみて。あと、タイトルも」

空になったコンビニのコーヒーカップ

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今日も1行目と戦っている

今日も1行目と戦っている

1行目は第一印象だ。

私たちは何かを読むとき、この書き手となら心を通わせられそうか、情報と体験を約束してくれそうか、つなぎ合わせた数単語から敏感に相性を探りながら判断している。だから全国に配布する取材記事も、コンテストに応募するエッセイも、twitterの140字だって、真っ白のディスプレイに初めて文字を打ち込むときは「よいご縁がありますように」と祈るようにして言葉を選んでいる。

中でもnot

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ときにはプロットを破り捨てて

“〆切に追われる“

あの押しつぶされそうになる感覚をはじめて味わったのは高校生のときである。

西日に暖められた教室で、私たちは煌々と光るノートパソコンを前にもう30分ほど黙っていた。ぱちぱちとキーを打つ音、止まる、ぱちぱち、止まる、ぱち、ぱち……。教卓をデスクにしてSちゃんは首を捻りbackspeceを長押しする。私とMは膝を抱きしめて、教壇から静かに時計を見上げた。今日中に書き上げなければ。

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