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ツキノエッセイ

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なにげない日常だったり、ふらりと立ち寄った過去や、ふと思い出した記憶を拾い集めて、言葉の花束にしてみたい。 切り取ったシーンをそのままに ノンフィクションを始めてみる。 人生…
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#ノンフィクションが好き

曇りガラスの記憶

曇りガラスの記憶

今日はふと、
父のことを考えていた。

長年、自動車業会で働いていた父。
三年前に定年退職し、
今は再婚した奥さんの実家の神戸で
タクシー運転手をしている。

言葉数は少なく、
いつも穏やかで優しい人。
怒られたことは一度もないし、
怒っているところを見たこともない。
とは言っても、
父とは生まれてから9年しか
一緒に暮らしていないから、
もっと長く一緒にいられたら…
もしかしたら、
怒られること

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茜色の紅茶

茜色の紅茶

平日の午前中

院内の小さな喫茶店は、
付き添いの人達の待合室になる。

大学病院の診察は、
いつだって一日がかりだ。

神妙な顔つきの人
待たされてイライラしてる人
晴れやかな表情を浮かべた人

ここには様々な感情が散らばっている。

わたしは今、
どんな表情をしているんだろう?

混み合う喫茶店の
窓側の特等席に座れたわたしはツイている。

血液検査を終え、
診察まで少し時間があったので
病院

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