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#021.呼吸4(呼気実践編その1)

ただいま呼吸について解説しています。これまでに、空気が体内に入る「吸気」、そして体外に空気を排出する「呼気」の仕組みについて解説しました。呼吸はぜひ順を追って原理と実践を理解しながら進めていただきたいので、ご覧になっていない方はぜひ以下のリンクより過去の記事を読んでみてください。

それでは、今回は実際にトランペットを演奏する際の呼気について解説します。


演奏用の空気圧

前回の記事で「通常の呼気では「フッ」と、軽くまとまって出て終わるので、このままでは演奏に使えません。」と書いた通り、日常の呼気は吸気に使った横隔膜や肋間筋が元の位置に戻る(弛緩する)ことで体外に排出するだけなのです。

これをトランペットの演奏に使うために必要なのが「空気圧」です。

空気の圧力が体内で発生するということは、例えばスピードのある空気を長く持続させたり、たくさんの量を一気に出したり、少しずつ量を増やすなど、空気の「加工」ができます。こうした空気圧の操作で様々な音の表現の元を作り出し、これこそが、トランペットそはじめとする管楽器の演奏に必要不可欠なのです。

その空気圧を発生させるために必要な器官が「腹筋」と呼ばれるお腹周りの筋肉です。腹筋が働くと(収縮すると)腹筋の内側にある臓器とひとまとめにしている腹腔に圧力がかかる一連の流れは前回の記事に詳しく書きましたのでわからない場合はそちらをご覧ください。


腹筋はたくさんある

出典:https://s.webry.info/sp/rapparapa.at.webry.info/201507/article_24.html

「腹筋を使う」と言っても、腹筋はとても多くの部分からなっています。なぜこのように多くの腹筋があるかと言うと、前かがみになったり、からだをねじったり、ベッドから起き上がったりする際、それぞれメインではたらく筋肉が違うからです。いくつもの違う働きを持った筋肉が存在していることで、我々は自由な動きができるのです。

したがって、トランペットを演奏する際にも腹筋のどれを使うかによって結果が変わります。

今回は2つの腹筋について考えます。ひとつは「腹直ふくちょく筋」そして「腹横ふくおう筋」です。

腹直筋

出典:http://therapistcircle.jp/hukutyokukin/

みなさんは「腹筋」と聞いてまっさきに思い描くものは、たぶん腹筋運動ではないか、と思います。

腹筋運動によって鍛えられる部分が、ちょうどお腹の中央の頑張ると6つに割れる腹直筋と呼ばれる部分です。

腹筋トレーニングの動きでわかりますが、腹直筋が働く(収縮する)と、前かがみになります。

この動作、日常で一番多く使っている場所が、多分トイレです。トイレで頑張ってるとき、前かがみになりますよね。この時、体内では下へ下へと圧力をかけている状態です。当然おしりの穴は開こうとしています。

…ちょっとまってください。今トランペットの話をしているんでしたよね。トランペットを演奏するためには、横隔膜よりも上にある肺や気管などの空気圧を高めたいわけです。これでは真逆になってしまいます。

ですので、腹直筋はトランペットの演奏に適していないのです。

腹横筋

腹筋は様々な働きを持った筋肉の総称ですが、実は面だけでなく3層になっています。

深層にある筋肉をインナーマッスルと呼ぶこともあり、意識的に使うのがとても難しい筋肉です。したがって、その筋肉が働く動きを理解することが一番わかりやすいと思います。

出典:https://kin.mobi/3090

腹横筋はこの3層目の最も深層にある筋肉で、お腹周りほぼ全体を包むように位置しています。この筋肉は、簡単に言えば「良い姿勢」を続けるときに働いていて、例えば姿勢を良くしようとお腹からシャキッとしたときに使われています。

骨盤底筋群

「良い姿勢」になっているとき、同時にお尻がキュッと引き締まりませんか?これは「骨盤底筋群」と呼ばれるちょうど股の間にある筋肉が働いている状態です。日常では、トイレを我慢している時に積極的に使っています。トイレの話ばっかりですいません。

出典:http://hanaemi-tottori.jp/2016/12/09/%E9%AA%A8%E7%9B%A4%E5%BA%95%E7%AD%8B%E3%81%AE%E9%87%8D%E8%A6%81%E3%81%95/

もしお尻がキュッとなっていない場合は、姿勢を良くしたとき、同時にお尻もキュッ締める動作を意識的に働かせてみてください。

これらの筋肉で腹腔を一番下から、そして横から腹圧高め、効率よく上へ(吸気によって空気が満ちている部分へ)圧力をかけることができるのです。

ということで今回はトランペットを演奏する際に使われる筋肉について主に解説をしました。次回はこれらを実際に使う際のからだの使い方について書いていきます。


荻原明(おぎわらあきら)

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