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斗花
2024年3月29日 01:29
卒業式が終わって、陽と家に向かっていたら、陽の妹の瑠璃ちゃんが陽の家の前に立っていた。相変わらず、セーラー服がコスプレみたいで全く似合っていない。「瑠璃が自分の足で道路に立ってるの久々に見た」陽は隣で変なことを言っている。「毎日、通学してるだろ」「あいつ、よく分からない男に車で送迎させてるから」相変わらず陽の家族は全員モテすぎて価値観が狂ってしまっている。いまも陽はブレザ
2023年9月6日 09:24
喉が痛すぎて目が覚めた。体の節々が痛くて、高熱が出ていることを熱さで感じる。シーツの上に敷いたバスタオルが濡れていて、シャツはぐっしょりと重みも帯びていた。だるい体を半身だけ起き上がらせて、シャツを脱ぐと重みから解放されて、暑さも少しだけ軽減した。このまま裸で寝てしまおうか。そんな考えも僅かに頭をよぎったが、明日は絶対に外せない仕事があるし、と、思い直して力を振り絞って新しいシャツ
2023年9月6日 00:43
寝込む私を空さんが看病してくれている。温かい生姜のスープと、たまごのおかゆが身に染みる。「うう…、空さんごめんなさい…」「いや、謝ることじゃないでしょ。むしろ大丈夫?梅ちゃんが体調崩すなんて、年に一回あるかないかだよね?」「高校は皆勤賞、仕事も皆勤賞でした…」「今日も休みの日に熱出してるしね」体が強いのを取り柄に生きてるから、取り柄がなくなった私はいま、無力どころの騒ぎでは
2023年9月6日 00:09
結婚式は“the Big day”なのか、と、披露宴が始まる前に渡された席次表を見て思った。そして俺は“新郎親友”でも“新郎新婦仲人”でもなく、“新郎友人”なのかよ、とも。新郎友人代表にガチガチになっている空を遠目で見ながら、俺は既にビール三杯目に突入している。「本日はお日柄もよく、って、俺も覚えたのによお!新郎新婦ご着席ください、って言いたかったわ俺も!そんであそこでギンがバイト
2023年8月18日 08:43
竜の言葉を聞いて私は頭が真っ白になってしまった。「…かいがい、てんきん…」「確定って訳じゃないんだけど。でも、大抵の先輩達がみんな海外から始まってるから、俺もそうなるかも。」高校一年生の頃から交際している柏葉竜は昔から、優秀だった。私たちの高校は、そこそこ頭が良かったけどその高校で成績は上位5%には必ず入っていたし、最難関と言われる私立の大学に進学して、就活も、断るのが
2023年8月13日 15:54
意識を失うように眠りについた波音ちゃんを見て俺は我に返った。そこから一気に血の気は引いて、慌てて彼女の首筋で脈と寝息を確認し、眠っていることに、安堵する。俺が昨日、ほぼ無意識のように脱がせた彼女の肌着を拾って隠すように洗濯機に落とし、彼女が自ら脱いだ俺のシャツを首に通すが、彼女は起きなかった。体を起こし、腕を通しても、彼女は起きなかった。力の入らない身体が俺に吸い付くように倒れ
2023年7月6日 14:11
やっぱり、そうだよね??友達から名前を呼ばれたのを聞いて、私は確信した。やっぱり、あれってギャラスタのカクだよね?「カク、おっせぇよ!」「ごめんごめん!レコーディング長引いちゃってさ。」声が出そうになるのを必死で堪えながら私は静かに移動する。そして隣に座った私にカクは何も気付いてないようだ。え、やばい、私、ギャラスタのカクの隣に座ってるんだけど…⁈「そー
2022年8月22日 09:11
リビングに、お菓子の缶が置いてあって食えるかと思って開けてみたら中にはよく分からないボタンやら空のマニキュアやらがごちゃごちゃ入っていた。俺の視線はソファで寝る蘭にうつる。 「蘭。おい、蘭。これ良いのかよ。」俺の声に気づく様子もなくスースー寝息を立てる蘭。俺はため息をついて蘭をそのまま放置する。これ、全部、フクがプレゼントしたやつだ。こいつこんなの全部と
2022年10月3日 21:57
俺には才能に満ち溢れてしまった兄がいる。「陽兄、なんか、今朝こんな手紙が来てたよ。」「あー、懸賞だ。千早に送れって言われてたやつ。やっぱり当たったな。」くじ運とか、ツキとか言われる非科学的な才能に始まって、学業はもちろんのこと、運動はなんでもできてしまっていた。そんな兄を持って大変だろうと人々は俺を哀れみがちだが俺はそんなこと思ったことはなく、むしろ、
2023年2月18日 09:08
私って、なんでこうなんだろ。「ちょっとー、またサリーに飲ませたー?酒弱いんだってばー。」「いや、そいつが勝手に飲んだんだよ」「乗せるからでしょー。サリー押し弱いんだからさー。」霞む天井。私の上から降るように聞こえる、男女のやり取り。はあ、とため息をついた女子が私の肩をゆする。「さりな?大丈夫?」「んー…、ん…。」お酒は嫌いだ。全然飲みたくない。それなのに、強
2023年2月1日 03:16
冴島はたぶん、変な子だ。俺は今までたくさんの女を見てきたがその中でも冴島は変だ。「流星先輩ってぶっちゃけ、何人抱いたんですか。」淳士のバイト先に行ったら偶然、冴島がいて送らなくちゃいけなくなってそう聞かれた時に思った。そもそも、こいつと二人きりなんてなりたくてなるもんじゃないし、なってしまったことを激しく後悔した。「…いや、かぞえきれ、」「かぞえて
2023年1月26日 05:17
俺が彼女の涙を見たのは多分あれが、最初で最後だ。「ヒロくん、ちょっとは慰めてよ」泣き腫らした赤い目をこすりながら彼女は軽音部の部室の隅で俺を睨むようにして言った。「いやいや…。かれこれ、ここに30分いて、ずーっと話を聞いてますが。」「どうして日高くんは七香ちゃんなのよぉ!」「…聞いてみたら?」「いい子だからに決まってるでしょ!」部活が同じで、俺が社交的だ
2023年1月15日 22:28
美波先輩と野上先輩の校庭ど真ん中キスを見たのは別に、俺だけじゃない。…いや、まぁ、俺の目の前すぎたけど、でも、校庭にいたほぼ全員が体育館にいた奴らもそれを見ていた。後ろを振り返ると高山が呆然と立ち尽くしていた。ーーー「いつまで落ち込んでだよ」俺の言葉も聞かずに水を蛇口から流したまま流しのタイルをなぞっている。「…美波せんぱい…」「いつかはって
2023年1月11日 09:53
皆川と義旭が付き合ったことでその日の野球部の部室は話題持ちきりだった。「あぁ…。とうとう皆川の恋が叶ってしまった…。」「俺たちの明日香ちゃん…。」「まぁ、あの子変人だから伊達と付き合っても別にショックはないけどな」皆川は当時から高みの見物されるタイプの美女で、明日香ちゃーん、とか言って大騒ぎはするものの、彼女にする勇気のあるやつは、いなかった。皆川の朝や帰り