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歴史本書評

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オススメ歴史本の読書記録。日本史世界史ごちゃ混ぜです。
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2021年10月の記事一覧

【書評】阿部拓児「アケメネス朝ペルシア」(中公新書)

【書評】阿部拓児「アケメネス朝ペルシア」(中公新書)

 中東(オリエント)やペルシア地域(イラン)と聞くと、現代人は「イスラム圏」のイメージを持つだろう。だが、この地域がアラブの征服を受けてイスラム教が定着したのは7世紀のこと。イスラム以前のオリエント世界について、現代日本人はあまり多くを知らない。

 アケメネス朝ペルシアは、今から約2500年前にペルシア~エジプトまでにいたるオリエント世界を統一した「世界帝国」である。アケメネス朝に関する逸話は、

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【書評】本郷和人「新・中世王権論」(文春学芸ライブラリー)

【書評】本郷和人「新・中世王権論」(文春学芸ライブラリー)

 日本中世史を専門とする著者による、「鎌倉の王権」をテーマとした本である。書名は「中世」であるが、最後に後醍醐天皇が出てくるくらいで、鎌倉時代の議論がメインである。

 鎌倉時代の日本の支配体制は、どのように理解すればいいのか。幕府と朝廷の関係については、研究者の間でも見解が分かれている。

1.権門体制論

 天皇(朝廷)が中心となり、政治をつかさどる公家、軍事をつかさどる武家、宗教をつかさどる

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【書評】高田博行「ヒトラー演説」(中公新書)

【書評】高田博行「ヒトラー演説」(中公新書)

 たぐいまれな扇動政治家であったヒトラー。彼の武器は何といっても「演説」だ。だが、そのすごさを具体的に説明できる人はあまりいないと思う。

 本書の著者は歴史学ではなく、言語学方面の専門家(専門は近現代のドイツ語史)だ。なので、歴史の専門家とは違う新鮮な切り口で、ヒトラーの実像に迫ることができる。例えば、150万語に及ぶヒトラーの演説のデータを用い、単語の出現回数などを統計的に分析している。

 

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