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ともみの部屋 #2

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
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#ポエム

見えなくなるまで見つめるなんて、しないから【ポーランド・ワルシャワ】

見えなくなるまで見つめるなんて、しないから【ポーランド・ワルシャワ】

彼女たちを乗せたバスが走り出したとき、その背中の空は青かった。昨日も一昨日も、その前なんかたしか少し夕刻に雨が降ったような気さえしたのに、今日のその時に限って雲ひとつない快晴の美しい夏の日だった。

こんな時に限ってバスは信号に引っかかったりしないのだ。何も障害なんてなくてまっすぐまっすぐ、彼女らを乗せたバスは小さくなって、点になって、やがてその角を曲がって私の知らない道をゆく。

とかいって私は

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伊佐知美と行く、海外旅ツアーが始まります!〜モロッコ周遊7泊10日間〜

伊佐知美と行く、海外旅ツアーが始まります!〜モロッコ周遊7泊10日間〜

こんにちは、伊佐知美です。

私には人生で大きく2つ叶えたい夢がありました。それが「自分の名前で本を出版すること」「長い期間、世界を自由に旅すること」。

29歳で書籍出版の話を運良くいただき、同じく29歳で初めての世界一周に出発しました。

オーストラリア・ウルルの砂漠でチェックしていた、書籍の第一稿

2016年4月に出発した1度目の世界一周旅

30歳で一度帰国、そして出版も経て、「もうこれ

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【増席30名でラスト!】#旅と写真と文章と SUMMERクルー 7/1-9/30

【増席30名でラスト!】#旅と写真と文章と SUMMERクルー 7/1-9/30

こんばんは、伊佐知美です。

アメリカ、キューバ、メキシコ、ペルーの約1ヶ月の旅を終え、昨日よりヨーロッパin。現在ドイツ・ベルリンにてこのnoteを書いています。

そして! Twitterで告知させていただいていますが、2017年12月より募集開始した、「Slackコミュニティ #旅と写真と文章と 」の次期クルーの募集をはじめています。

■【SUMMERクルー募集開始】#旅と写真と文章と Sl

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旅と共に生きること。行きたい場所に、辿り着く美しさ【ペルー・マチュピチュ/クスコ】

旅と共に生きること。行きたい場所に、辿り着く美しさ【ペルー・マチュピチュ/クスコ】

これだけ心が動いて私が文章を紡ごうとしないのは、本当に、本当に珍しかった。感動や感情が文章やことばで出てくるタイプなのだ。けれど今回動いたのは写真だけだった。

ことばはいつも降ってきていた。けれどそれを綴る時間を惜しむように、私はペルーの空を見て、みて、見つめて。

標高3,400の山々に落ちる雲の影が美しかった。刻一刻、変わるそれ。小さく細い坂道を登ってゆくと、やがて壁を白く塗る青年や、ゆった

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変わりゆく切なさを内包したカラフルな町並みの中で【キューバ・ハバナ→メキシコ・カンクン】

変わりゆく切なさを内包したカラフルな町並みの中で【キューバ・ハバナ→メキシコ・カンクン】

「ことばが一番降ってくる瞬間は、帰り道なのかもしれない」とキューバのハバナ、空港へ向かう午前10時。

今回の旅はみんなと一緒に歩くと決めていた。だから、ほんの数日。たった5日間だったけれど、キューバの空気を吸って、ごはんを食べて、街角を曲がって海で泳いで。たくさんの写真をとめどなく撮りながら、私たちは国を進んだ。

キューバは、ずっとずっと早く行かなくては、と感じていた。国が、変わりゆくと聞いて

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「大冒険だね」と、はなむけの言葉を【キューバ・ハバナ→ビニャーレス】

「大冒険だね」と、はなむけの言葉を【キューバ・ハバナ→ビニャーレス】

キューバの空はとても広くて、私は久しぶりに視界に入りきらない雲と青を見る。南国の植物と気温と湿度、そして知らない言葉の響き。

愛している、と私は想う。同じ気持ちを思い起こさせるのは、ラオスのルアンパバーンやミャンマーのバカン、そしてカンボジアのシェムリアップ。私はどうしても都会じゃなくて緑豊かで街が完成されていない、いわゆる途上国の景色が好きなようだった。

このnoteを書いている今日は、首都

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春の日差し窓からふわり、午後も頑張ろうねと、noteを書く【東京・三軒茶屋】

春の日差し窓からふわり、午後も頑張ろうねと、noteを書く【東京・三軒茶屋】

朝、ちょっぴりだけれど、私の部屋には日差しが入る。ちょうど枕を置いているあたりの場所に、窓から太陽の光が入る時、私は「あぁ、朝が来たんだなぁ」って最近毎日思ってる。

窓を20センチくらい、少し開けて。隣の部屋も開けて、私の部屋は2階だから、階段のところへ行って、そこの窓も少し開く。ついでにキッチンも開けよう。

春になったばかりの、あたたかすぎもせず、涼しすぎもしない、4月の今、特有の風がふわり

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空から降ってきた言葉を、ただ綴る夜も悪くはない

空から降ってきた言葉を、ただ綴る夜も悪くはない

手放そうと思ったわけではなく、受け渡したい、と思っていた。考え始めたのはずっとずっと前で、言い出したのはたしか2017年の秋だった。月日は流れる。それを捕まえてくれたのはみんなだった。

居場所を創りたい、と彼は言った。そのとおりになっている、と私は思う。そこに甘んじていいのか、と彼女は言う。それでも私はここに居たい、と応えていた。

そうなのか?と自問自答する。私は別にここにいなくてよくて。誓っ

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ただ並べたかっただけ。桜が今年も綺麗だったから

ただ並べたかっただけ。桜が今年も綺麗だったから



島根・大森町(撮影:小松崎拓郎)

東京・上野公園の咲き始め

桜が咲いたら私たちはそれを「春」と呼んでいい

色づいたら止まらないから

所変わって宮崎

桜並木抜ければ

夕陽浴びて

時は来たれり

満開になるは中目黒

心奪われ

撮り撮られ

ため息とまらない

刻一刻

そろそろ桜、ひらり、はらり

ただ並べたかっただけ。桜が今年も綺麗だったから。

期待することを、私はまだやめたくない。春、桜、舞う季節のはじまりに

期待することを、私はまだやめたくない。春、桜、舞う季節のはじまりに

赤坂見附の歩道橋を渡っている時、ふとそこにピンク色の存在が「咲いているよ」と主張するのを見た。青い空に、少しだけ白い雲。そしてそこに、ピンクの彩りを加える花が、今年も咲く季節がやってきた。開花予報の日を間近に迎え、今みんな、気付き始めている。

目黒川沿いを歩いている時、冬はまだ茶色だけの存在だった彼らが、「もうすぐで咲くからね」と、やはり大きく膨らむのを見ていた。その日はやっぱり寒い冬の日だった

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窓の外の雨と冬。名残すぎればすぐそばにはきっと春が

窓の外の雨と冬。名残すぎればすぐそばにはきっと春が

自分のために近所の食料品店で買い物をして、お湯を沸かして、お味噌汁をつくるなんて、いつぶりだろうと私は思う。洗濯機から、昨日買ったダウニーのよい香りがする。お茶を淹れたり、お風呂を沸かしたり、洗濯物を干したり、お布団を畳んだり。

デスクに向かって、音楽をかけながら、Macを充電して、Wi-Fiにつなぐ。お気に入りのスピーカーが、ほかの人の家にまだあるのが口惜しい。移動ばかりして、私はコートを失く

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旅人による旅人のためのシェアハウス「えいとびたー」を、はじめます!

旅人による旅人のためのシェアハウス「えいとびたー」を、はじめます!

たしかあれは、失恋したばかりの時。モロッコの青い街シャウエンで、「どこかに帰りたいな」って、少しだけ疲れたなと思いながら坂をひとりで登ってた。

けど、すぐに「一体、どこへ?」ってひとりで自問自答した。「そっか、私には帰る場所がないんだな」「それを、自ら選んで旅に出たんだ」って、ひとり坂を登りきった時に確認した。

自由は楽しくて、世界は広い。美しさには限りがなくて、私はどこまで行っても新しい人や

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2/17のうちにできればひっそりと更新したかった、私の日記のようなもの。

2/17のうちにできればひっそりと更新したかった、私の日記のようなもの。

「バタン」と音を立ててキッチンの扉を閉めてしまった時、私はいつも「あぁ、ごめんねマックス」と異国の地で暮らす彼に、どうしてだか想いを馳せる。

スペイン(それはいつかスペインでなくなってしまうかもしれないけれど)のバルセロナ。たしかあれは、Monumental駅の近く。歩けばすぐにバルセロナ凱旋門が見えて、爽やかな風が吹き、海も山も見えて。そう、世界穏やかな2017年4月の頭、私はマックスの家です

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もう一度だけ眠って覚めたら、「昨日までの出来事」になってしまうのが怖くて。

もう一度だけ眠って覚めたら、「昨日までの出来事」になってしまうのが怖くて。

白い壁に、ときおりターコイズ。観葉植物が静かに息づく気配に、毛並みのよい猫がタルタル、と気だるそうに歩くのが視界の隅にとまる。世田谷のすこし古いマンションを、リノベーションして美しくした住まい。

窓の外には、遠くスカイツリーや東京タワー、新宿の街並みや、この街で暮らすひとたちの灯りが見えた。約2年間に渡る「家のない暮らし」「旅と生きた期間」の最後のさいごの夜に私が選んだのは、なんてことない、そん

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