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伊佐 知美
2018年7月8日 00:16
彼女たちを乗せたバスが走り出したとき、その背中の空は青かった。昨日も一昨日も、その前なんかたしか少し夕刻に雨が降ったような気さえしたのに、今日のその時に限って雲ひとつない快晴の美しい夏の日だった。こんな時に限ってバスは信号に引っかかったりしないのだ。何も障害なんてなくてまっすぐまっすぐ、彼女らを乗せたバスは小さくなって、点になって、やがてその角を曲がって私の知らない道をゆく。とかいって私は
2018年7月1日 18:00
こんにちは、伊佐知美です。私には人生で大きく2つ叶えたい夢がありました。それが「自分の名前で本を出版すること」「長い期間、世界を自由に旅すること」。29歳で書籍出版の話を運良くいただき、同じく29歳で初めての世界一周に出発しました。オーストラリア・ウルルの砂漠でチェックしていた、書籍の第一稿2016年4月に出発した1度目の世界一周旅30歳で一度帰国、そして出版も経て、「もうこれ
2018年6月28日 20:22
こんばんは、伊佐知美です。アメリカ、キューバ、メキシコ、ペルーの約1ヶ月の旅を終え、昨日よりヨーロッパin。現在ドイツ・ベルリンにてこのnoteを書いています。そして! Twitterで告知させていただいていますが、2017年12月より募集開始した、「Slackコミュニティ #旅と写真と文章と 」の次期クルーの募集をはじめています。■【SUMMERクルー募集開始】#旅と写真と文章と Sl
2018年6月27日 20:49
これだけ心が動いて私が文章を紡ごうとしないのは、本当に、本当に珍しかった。感動や感情が文章やことばで出てくるタイプなのだ。けれど今回動いたのは写真だけだった。ことばはいつも降ってきていた。けれどそれを綴る時間を惜しむように、私はペルーの空を見て、みて、見つめて。標高3,400の山々に落ちる雲の影が美しかった。刻一刻、変わるそれ。小さく細い坂道を登ってゆくと、やがて壁を白く塗る青年や、ゆった
2018年6月20日 12:05
「ことばが一番降ってくる瞬間は、帰り道なのかもしれない」とキューバのハバナ、空港へ向かう午前10時。今回の旅はみんなと一緒に歩くと決めていた。だから、ほんの数日。たった5日間だったけれど、キューバの空気を吸って、ごはんを食べて、街角を曲がって海で泳いで。たくさんの写真をとめどなく撮りながら、私たちは国を進んだ。キューバは、ずっとずっと早く行かなくては、と感じていた。国が、変わりゆくと聞いて
2018年6月19日 00:07
キューバの空はとても広くて、私は久しぶりに視界に入りきらない雲と青を見る。南国の植物と気温と湿度、そして知らない言葉の響き。愛している、と私は想う。同じ気持ちを思い起こさせるのは、ラオスのルアンパバーンやミャンマーのバカン、そしてカンボジアのシェムリアップ。私はどうしても都会じゃなくて緑豊かで街が完成されていない、いわゆる途上国の景色が好きなようだった。このnoteを書いている今日は、首都
2018年4月4日 12:11
朝、ちょっぴりだけれど、私の部屋には日差しが入る。ちょうど枕を置いているあたりの場所に、窓から太陽の光が入る時、私は「あぁ、朝が来たんだなぁ」って最近毎日思ってる。窓を20センチくらい、少し開けて。隣の部屋も開けて、私の部屋は2階だから、階段のところへ行って、そこの窓も少し開く。ついでにキッチンも開けよう。春になったばかりの、あたたかすぎもせず、涼しすぎもしない、4月の今、特有の風がふわり
2018年4月3日 00:48
手放そうと思ったわけではなく、受け渡したい、と思っていた。考え始めたのはずっとずっと前で、言い出したのはたしか2017年の秋だった。月日は流れる。それを捕まえてくれたのはみんなだった。居場所を創りたい、と彼は言った。そのとおりになっている、と私は思う。そこに甘んじていいのか、と彼女は言う。それでも私はここに居たい、と応えていた。そうなのか?と自問自答する。私は別にここにいなくてよくて。誓っ
2018年3月30日 00:52
島根・大森町(撮影:小松崎拓郎)東京・上野公園の咲き始め桜が咲いたら私たちはそれを「春」と呼んでいい色づいたら止まらないから所変わって宮崎桜並木抜ければ夕陽浴びて時は来たれり満開になるは中目黒心奪われ撮り撮られため息とまらない刻一刻そろそろ桜、ひらり、はらりただ並べたかっただけ。桜が今年も綺麗だったから。
2018年3月19日 19:11
赤坂見附の歩道橋を渡っている時、ふとそこにピンク色の存在が「咲いているよ」と主張するのを見た。青い空に、少しだけ白い雲。そしてそこに、ピンクの彩りを加える花が、今年も咲く季節がやってきた。開花予報の日を間近に迎え、今みんな、気付き始めている。目黒川沿いを歩いている時、冬はまだ茶色だけの存在だった彼らが、「もうすぐで咲くからね」と、やはり大きく膨らむのを見ていた。その日はやっぱり寒い冬の日だった
2018年3月9日 23:12
自分のために近所の食料品店で買い物をして、お湯を沸かして、お味噌汁をつくるなんて、いつぶりだろうと私は思う。洗濯機から、昨日買ったダウニーのよい香りがする。お茶を淹れたり、お風呂を沸かしたり、洗濯物を干したり、お布団を畳んだり。デスクに向かって、音楽をかけながら、Macを充電して、Wi-Fiにつなぐ。お気に入りのスピーカーが、ほかの人の家にまだあるのが口惜しい。移動ばかりして、私はコートを失く
2018年2月20日 00:43
たしかあれは、失恋したばかりの時。モロッコの青い街シャウエンで、「どこかに帰りたいな」って、少しだけ疲れたなと思いながら坂をひとりで登ってた。けど、すぐに「一体、どこへ?」ってひとりで自問自答した。「そっか、私には帰る場所がないんだな」「それを、自ら選んで旅に出たんだ」って、ひとり坂を登りきった時に確認した。自由は楽しくて、世界は広い。美しさには限りがなくて、私はどこまで行っても新しい人や
2018年2月18日 01:41
「バタン」と音を立ててキッチンの扉を閉めてしまった時、私はいつも「あぁ、ごめんねマックス」と異国の地で暮らす彼に、どうしてだか想いを馳せる。スペイン(それはいつかスペインでなくなってしまうかもしれないけれど)のバルセロナ。たしかあれは、Monumental駅の近く。歩けばすぐにバルセロナ凱旋門が見えて、爽やかな風が吹き、海も山も見えて。そう、世界穏やかな2017年4月の頭、私はマックスの家です
2018年2月17日 00:48
白い壁に、ときおりターコイズ。観葉植物が静かに息づく気配に、毛並みのよい猫がタルタル、と気だるそうに歩くのが視界の隅にとまる。世田谷のすこし古いマンションを、リノベーションして美しくした住まい。窓の外には、遠くスカイツリーや東京タワー、新宿の街並みや、この街で暮らすひとたちの灯りが見えた。約2年間に渡る「家のない暮らし」「旅と生きた期間」の最後のさいごの夜に私が選んだのは、なんてことない、そん