トーキョーガールズストーリーズ〜四季の匂いを感じながら〜

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夏のパーティーモンスター

20:30 湿気を帯びた夏の空気に触発されたのだろうか。 「縛ってみたいなぁ。ナツメさんを」 「はい?」 この爽やかなイケメンから、そんな言葉が出てくるとは思わず、ナ…

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/6(最終回)

「児童相談所に来る親って高圧的な人が多くて、女性職員は怖い思いをしてるの。カナミちゃんみたいに強い人が居たら心強いから」 「……………」 「それに、今の仕事はや…

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/5

あの男が、蹴られた腹いせに家族に暴力を振るったら―? 背筋がゾクッと震える。 私は、間接的に罪なき子供を死に追いやっているのかもしれない。 「ごめん。仕事の弱…

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/4

「はぁ……」 あれ、またため息吐いてる…。どうしたんだろう? 口数が少なくなったのが気になって、食べる手を止めた。 「顔色悪いけど、何かあったんですか?」 「……

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/3

足を伸ばして代々木公園まで来た。 桜が咲いているせいか人が多い。遠くでは犬たちが嬉しそうに走っている。 私はこの社会で……何がしたいんだろう。 頭の中を探っ…

短編小説x写真【ブラックホールにも春は来る】渋谷のものがたり 6/2

「やめて!死んじゃう!やめてよぉ…!」 ………! せっぱつまった幼い声が耳にリフレインしている。 今のは、夢……? 夢にしてはリアルすぎて、ドキドキが止まらない…

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/1

目の前を飛んでいったのはカラスアゲハだろうか。 渋谷の雑踏の片隅で、カナミは思わず立ち止まった。 あれは確か桜の咲く春の夕暮れ、町内放送でクラシックの曲が優雅…

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本日のおまけの写真。短編小説の中で使わなかったBロールのの中から。

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写真と短編小説のコラボはじめます!

夏のパーティーモンスター

夏のパーティーモンスター

20:30
湿気を帯びた夏の空気に触発されたのだろうか。

「縛ってみたいなぁ。ナツメさんを」
「はい?」

この爽やかなイケメンから、そんな言葉が出てくるとは思わず、ナツメはしばし岸田の顔を見つめた。
パーティー会場は、新郎によるバンド演奏で盛り上がっていた。外の喫煙所にいるのは、ナツメと岸田の2人だけ。

「僕、悲しそうな人見ると縛りたくなっちゃうんですよね。やったことあります?亀甲縛り」

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短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/6(最終回)

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/6(最終回)



「児童相談所に来る親って高圧的な人が多くて、女性職員は怖い思いをしてるの。カナミちゃんみたいに強い人が居たら心強いから」
「……………」
「それに、今の仕事はやり甲斐が無いって言ってたでしょ?」
「え…、ああ……」
「キツイけど、児相はやり甲斐すっごくあるよ。社会に貢献できる素晴らしい仕事だし」

社会に貢献―、その言葉が胸に残る。

「実際に相談員になるためには、公務員試験を受けないといけな

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短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/5

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/5

あの男が、蹴られた腹いせに家族に暴力を振るったら―?
背筋がゾクッと震える。
私は、間接的に罪なき子供を死に追いやっているのかもしれない。

「ごめん。仕事の弱音なんて吐いて」
「いえ……」

やっぱり連絡先を交換しなければよかった。
一緒に居るべきじゃない。私と彼女の間には、見えない境界線がくっきりと引かれている。

その時、大きな怒鳴り声が聞こえた。
あたりを見渡すと、近くで一人の男が

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短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/4

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/4

「はぁ……」
あれ、またため息吐いてる…。どうしたんだろう?
口数が少なくなったのが気になって、食べる手を止めた。

「顔色悪いけど、何かあったんですか?」
「……昨日告別式だったの」
「え?」
「今年になってから、都内だけで三人。みんな、何の罪も無い子供たち」
「…………」

かける言葉が見つからなかった。
彼女は児童相談所で相談員として働いている。
そこで虐待や育児放棄に遭って

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短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/3

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/3



足を伸ばして代々木公園まで来た。
桜が咲いているせいか人が多い。遠くでは犬たちが嬉しそうに走っている。

私はこの社会で……何がしたいんだろう。
頭の中を探っても何も見えない。

ざわざわとした人の声が、耳を滑っていくだけ―。

立ち上がり、パンに合うミルクティを買って喉を潤す。
ベンチに腰を下ろすと、前から見知った顔が歩いてきた。

「カナミちゃん、こんにちは。来てたんだ」

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短編小説x写真【ブラックホールにも春は来る】渋谷のものがたり 6/2

短編小説x写真【ブラックホールにも春は来る】渋谷のものがたり 6/2



「やめて!死んじゃう!やめてよぉ…!」
………!

せっぱつまった幼い声が耳にリフレインしている。
今のは、夢……?
夢にしてはリアルすぎて、ドキドキが止まらない。
…………落ち着こう。
目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をする。

一度は起き上がりかけたが、結局また枕にダイブした。

今日は休日―、客をぶん投げたり、怒声を浴びせたりしなくて良い日。

季節は春とは言え、朝はまだ冷える。
それで

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短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/1

短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/1



目の前を飛んでいったのはカラスアゲハだろうか。
渋谷の雑踏の片隅で、カナミは思わず立ち止まった。

あれは確か桜の咲く春の夕暮れ、町内放送でクラシックの曲が優雅に響き渡る小学校の帰り道だった。
上京して二年、あの蝶を渋谷で見たのは初めてだ。

平凡な田舎で育った私だけど、素性は平凡じゃない。
戸籍上は庶子、いわゆる妾(めかけ)の子だ。

父親は首都圏の暴力団幹部で、母はその愛人だった。
母は

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