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短編小説x写真【ブラックホールにも春が来る】渋谷のものがたり 6/4
「はぁ……」
あれ、またため息吐いてる…。どうしたんだろう?
口数が少なくなったのが気になって、食べる手を止めた。
「顔色悪いけど、何かあったんですか?」
「……昨日告別式だったの」
「え?」
「今年になってから、都内だけで三人。みんな、何の罪も無い子供たち」
「…………」
かける言葉が見つからなかった。
彼女は児童相談所で相談員として働いている。
そこで虐待や育児放棄に遭っている子供たちのケアをしているのだ。
「保護施設も限りがあるから、帰宅可能とみなされた子から家に帰すの。でもダメだった…」
「…三人も?」
「うん」
痛々しいその表情を見て、ふと昨日、借金男の脇腹に蹴りを入れたことを思い出した。
彼にも子供は居ただろうか。
「おい、いい加減払えって言ってんだよ」
「すみません!いっ、今は手持ちが無くて…!」
「嘘吐けコラ、利息分の五万、どうせ財布の中にあるんだろ?」
「……それは、勘弁して下さい!今日は新台が出るんで、当たったら絶対返しますから…!」
男は必死に頭を地面に擦りつけている。哀れさをもよおす光景だが、退屈で欠伸が出そうになった。
しかしその時、急に男がゆらりと起き上がった。
「おいっ!このジジィ、何か持ってやがるぞ!」
「うわぁぁー!お前らを殺して俺も死んでやる!どけ!」
男は刃物を持って暴れ出したが、私は驚かなかった。
追い詰められた顧客は何をしでかすかわからない、とボスに教えられている。
一瞬の隙を突いて、刃物を持った手を取り上げ、背中から投げた。
苦痛に歪む顔を見ても力は弱めない。
機械のように無感情で男に近づくと、ダメ押しで脇腹を思いきり蹴りつける。
「ぐぁっ!」
肋骨が折れる音が狭い路地に響く。
道に赤黒い血が飛び散り、男はひくひくと痙攣した。
続く
第一話はこちら
https://note.com/tokyogirlsstory/n/n2c96f16a8e5e
文章を考えてくれた新田さんが、制作裏話をこちらで紹介してくれています。本編の方で使わなかった写真などもこちらに掲載しているので、是非こちらもよろしくお願いします!
東京ガールズストーリーさんが公開中の短編小説×写真のショートストーリー「ブラックホールにも春が来る」のシナリオを書いたのでその裏話を語る。
https://note.com/nittamayu331/n/ne43940d71c9e
writer. 新田まゆ. https://note.com/nittamayu331
photography 江部公美
https://vimeo.com/user20809234
hair & makeup by Hinata Sakurai https://www.instagram.com/h__ppppp/
featuring 山田佳奈実 https://www.instagram.com/yamada_kanami
インスタグラム https://www.instagram.com/tokyo_girls_story
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