イヴ・サンローラン美術館 パリ
いつの頃からだろう。記憶を辿っても思い出せないのだが、私はいつからかイヴ・サンローランというブランドが好きだ。もしくはサンローラン本人が創り出す雰囲気 - 世界観たるもの含め - とも言えるのだけれど、とにかくお気に入りのメゾンであることは間違いない。
そんなイヴ・サンローランのミュゼ(美術館)がパリに開館したのは2017年だった。私がパリに滞在していた頃にはなかったこのミュゼ、2019年にパリを訪れた際、念願叶ってようやく赴くことができた。
今秋には東京で初のイヴ・サンローランの回顧展が開かれることになっている。そんなタイミングもあり、私は今から待ちきれない気持ちを持て余している。そこで、パリのミュゼの様子もここに残しておきたいと思う。
16区の瀟洒な高級住宅街にあるサンローランのミュゼは、日本で言えば佇まいの美しいマンションの一室にひっそりとある。
パリらしい美的感覚に溢れた16区は、サンローランの雰囲気とも調和していて、まるで彼本人の自宅を訪ねるような気分にさせられる。
受付を済ませると、もうそこにはモンドリアン・ルックのフィギュアやデッサン画が飾られていた。念願叶ってようやく辿り着いたこの美術館に、私は感無量だった。そして胸躍らせながら、中へと進んだ。
人目を引く鮮やかなモンドリアンの “コンポジション” と呼ばれる柄は、ドレスにすると一際モダンに感じられる。花柄や、“有り体” のプリント柄ではないこの格子柄は、ドレスにはめ込まれるとひと時その枠を飛び越えて “幾何学的なアート” とモード(ファッション)を結びつけ、驚きとともに、しかしそれは確実にファッションとして、シックで都会的な雰囲気を持ち合わせたインパクトを、見るものに与える。
ネオンで彩られたモンドリアン・ドレス、ショウのビデオ、鮮やかな何種ものルック、そしてサンローラン本人による下絵やデッサン画。
今も色褪せないモンドリアンコレクションの数々に、私は圧倒され、そして改めて魅了されてしまった。
私が訪れた2019年には、想像以上にモンドリアンコレクションの占める場が多かったけれど、もちろんそれ以外のルックも展示されていた。
イヴ・サンローランのスタイルといえば、色味はバラエティに富むというよりは、どちらかと言えば、落ち着いたトーンが多い。そして黒は彼にとってとりわけキーとなるカラーで、スタイルはシックで現代的。彼はモロッコ出身なので、色味もスタイルもその影響を受けているのかもしれない。
ちなみにモロッコにもイヴ・サンローランの美術館がある。
musée YVES SAINT LAURENT marrakech
私の “バケットリスト” の一つ。
そして、イヴ・サンローランの引退と共に終了してしまった、貴重なオートクチュールラインもいくつか見ることができた。
イヴ・サンローランと、彼と公私を共にしたパートナーで、財団にも名前を遺しているピエール・ベルジェとの写真やビデオも多く展示されており、それらも非常に印象深いものだった。
イヴとピエール・ベルジェのポートレート。
最後はイヴの書斎。アトリエと言ってもいいかもしれない。精巧に再現されたそこで、彼は何を思いながらクリエイションを生み出していたのかと、来場者が思いを馳せてしまう、美しい空間だった。
イヴ・サンローラン美術館パリは、16区の、元はサンローランのオフィスだったという場所にある。こぢんまりして小さな美術館だが、中に入ると想像以上に多くのアーカイブを見ることができ、私はひと時サンローランの活躍した時代に思いを馳せながら、彼のクリエイションを楽しむことができた。
そして、現在は展示内容が変わっているようなので、またパリを訪れた際には再訪したいと思っている。
蛇足だが、私はこのモンドリアン・ルックが好きで、このnoteの “スキ” リアクションにも設定しているくらいである。
この記事が、今秋のイヴ・サンローランの回顧展に行かれる方の何かしらの予備知識に、また、たまたま訪れて下さった方にも、サンローランの魅力が伝わる一助になればとてもうれしい。
そして私自身、今秋の東京での回顧展が今から楽しみでならないこの頃である。
今秋のイヴ・サンローラン回顧展
イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル
2023年9月20日(水)− 12月11日(月)
国立新美術館
https://ysl2023.jp/
イヴ・サンローラン美術館パリ
Musée Yves Saint Laurent Paris
5, avenue Marceau
75116 Paris - France
https://museeyslparis.com
※ 挿入されている写真及び画像、動画コンテンツはすべて筆者によるものです。また、施設・イベント等の情報は、当記事執筆時点(2023年6月)のものとなります。
(Paris, 2 October 2019)
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