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Azurという色

Azurという言葉をご存知でしょうか。

フランス語で、青系統の色を指す言葉です。

いわゆる南仏の海岸地帯を指す言葉、Côte d'Azur(コートダジュール)のAzurはこの色を指しており、紺碧海岸と訳されます。

青にはいろんな種類があり、日本にも青、紺、濃紺、水色…などたくさんの種類がありますが、Azurは日本のそのどの色とも異なります。

この色はヨーロッパの空と地中海に存在する色で、この地域に住む人々の脳裏に確実に刷り込まれている色。この色を認識すると、ヨーロッパの人々の色彩感覚を少し理解できる気がします。フランスの画家イヴ・クラインが生み出したクライン・ブルーも、Azurに属する色。ずっとそう感じていました。

インターナショナル・クライン・ブルー

wikipedia

初めて地中海に来た時、日本にはないこの色に魅せられたものでしたが、マルタに来て、真っ先に思い出したのはこのAzurという言葉でした。ここでは、この言葉を感じずにはいられませんでした。

マルタはどこを切り取っても美しいところで、温暖な気候(ただ3月も非常に強い風が吹く日が続いています)、人々も柔和でかなり暮らしやすい印象です。田舎でもなく、でも都会過ぎないこの国はほどよく洗練されていて、古い歴史を持ち、文化的にはヨーロッパの要素が強いけれど(スーパーマーケットはフランス、イタリアのそれと全く同じ匂い、ラジオも同じテンション)、建物や街並みは、北アフリカを想起させます。背が低くて、乾いた茶色の建築物。これらがAzurの空と海の色とコントラストを生み出していてとても美しい。そしてクラブもあちこちに。まるでIbizaを思い起こさせるように。この島では、ツーリストは現実を忘れて踊りたいのかもしれません。

そして、マルタはヨーロッパのツーリストにとってさえも特別な観光地のようで、ヨーロッパ外から訪れた人々と同様みなこぞって観光しここでの生活を楽しんでいます。もしくは、気に入って再度訪れたリピーターにも何人か出逢いました。

聞いた話によれば、マルタには、人生の転機に訪れる人が多いそう。恋人との別れ、離婚…それ以外にもいろいろな転機に短期間訪れて、この島で人生のほんのひと時を過ごしていく人が多いそうです。

そうやって、時間が飛ぶように過ぎていく、と呟きながら皆精一杯限られた時間を満喫して去っていく人が多い気がします。

すでにピザとハンバーガーには飽き気味ですが、マルタとこの空と海の色には飽きることがない。

私は、もちろんマルタには来たくて来たのですが、いろんな人に出逢う度、ここで逢えた奇跡を祝い、また逢える度その偶然を喜び合い再会を誓う毎日です。もう二度とこの人と逢うことはないのかもしれない。ここはなおさらそういうところだから「次」はないかとしれない…そんな気持ちで、自分を含めいつも何かを惜しむように本気で過ごす人が多い。そう感じる毎日です。

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