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MBAに入る前に読んでおくべきオススメ書籍ベスト163冊

※本記事では、経営学研究科・経営管理研究科・現代経営研究科・ファイナンス専攻・マネジメント専攻・国際マネジメント研究科・ビジネスロー専攻その他MBAに関連する研究科及び専攻について、その名称を問わず、すべてまとめて「MBA」と表記することにします。



今年から、私の教え子が2名ほどMBAに入学します。
私が勉強を教え始めて2年くらい経った子たちなので、一つの節目であり、巣立ちとして嬉しく思っています。
2人共これで学歴が大きく更新されることになるので、キャリアにとって大きなプラスになるでしょう。

そして、かつては私自身も大学院で研究をしておりました。
私が修士号を取得した一橋大学院は、当時はMBA領域の研究分野が細かく分かれていて、経営管理、ファイナンス、経済学、ビジネスロー(更に細分化されていて、著作権法、特許法、労働法、国際法、租税法、金融法、企業法やM&Aなどの専攻がある)という感じで、それはもう様々な分野の専門家(主に士業や外資コンサルの皆さん)が在籍しておりました。

そして一橋大学の一つの魅力として、研究科や専攻に関係なく、講義を担当する教授がOKを出せばどの分野の授業を取っても良いという制度があります(今もあるかは不明)。
MBAに関連する研究科の講義は、同じ千代田キャンパス内で開講されているので、簡単に他の研究科の講義を受けられるのです。
そのため、MBAのファイナンス専攻の人が、ビジネスローのM&Aの講義を受けたり、労働法専攻の人がMBAの経済学の講義を受けることも全然可能です。
むしろよくあることで、私も自分の興味にしたがっていろいろな講義を受けさせてもらいました。
私の知人の同期たちは、誰が何の専攻なのかを知らないことが多く、そもそもあまり気にもしていなくて、みんなで一つの大学院に行っているという気持ちでした。

他のMBAも実質的には近い環境だろうと思います。
最近のMBAのカリキュラムは本当によくできていて、とても広いジャンルの講義を開講しています。
そのため、履修科目の工夫次第で様々な学問分野を専攻することができます。

しかし、私の知る限り、多くの学生が入って2ヶ月程度でMBAの洗礼を受けます。
ちょうど今の時期(4月~5月)ですね。
MBAに入ってすぐに、意外と課題が多くて、意外と授業が難しくて、意外とテストやレポートが大変だと気づかされるのです。
その結果、修士論文が書けずに留年したり、成績がボロボロになったりします。

それだと単に作業に忙殺されるだけの2年間を過ごすことになり、行く意味がほとんど無くなる(研究者としては大きなマイナスになる)ので、できれば事前にきちんと十分な準備をした上で入学するべきです。

私は心配性なので、大学院入学前に大学院で学ぶ範囲と先行研究をすべて学習した上で入学しました。
お陰様で授業を難しいと感じることはほとんどなく、成績もオールA(GPAでいうと最高得点の4.0)で、修士論文もA+で卒業することができました。

私と同等の成績を修めている人たちが他にも数名いましたが、やはり似たような感じで、入学前にほとんどの勉強及び先行研究を終わらせた状態で入学していました。
もしくは、元々その分野の専門家(公認会計士や弁護士)だった方です。

そういう人たちは、入学段階でスタートダッシュを決めるどころか、スタートの時点でけして追いつけないほどの差をつけた状態で入学しているので、2年間自分の研究だけに集中できます。

私としては、そういう状態で入学するのがベストだと考えています。
先々のことを考えると、大学院の成績が良くて困ることはまずないので、できる限りの準備をした上で入ることをオススメします。

そこで今回は、入学前の段階で大きな差をつけるための書籍(MBAに入る前に読んでおくべき書籍)をご紹介したいと思います。
冊数が多くなりますが、プロの皆さんについてはすでに学部時代に読んでいる書籍が多いと思いますので、そういう書籍は飛ばしてください。

あくまでも今回は、初めてMBA領域に足を踏み入れる方々の参考になることを目指して書いていきますので、それを前提にしてお読みいただけると幸いです。




【知っておいた方が良いあれこれ】

まずはMBAに入学する前に知っておいた方が良いだろうと思われることを2点簡単にまとめていきたいと思います。
既にご存知の方は読み飛ばしてください。


1.修士号には2種類ある

MBAは一般的には「経営管理修士号」を意味するのですが、実は修士号には大きく分けて2種類あるということをまず知っておきましょう。
これはMBAホルダーでも意外と知らないことが多いので注意が必要です。

修士号には、専門職学位の修士号正規の修士号の2種類があります。
それによって学位の名称も変わります。

先生方の中には、この2つを明確に区別して、専門職学位を正規の修士号の劣化版と考えている方もいます。
なぜその差が生まれるかというと、修士論文の有無に差があるからです。

一般的に、専門職学位というのは、ビジネスマンが実務で活かすための知識や技術を身につけるために行く大学院で、社会人が空いた時間(主に夜と土日)に通うことを想定しているので、原則として卒業の必須条件に「修士論文」が入っていません。
大学院によっては選択的に修士論文を書くという選択もできるのですが、基本的には簡易的なリサーチペーパー(プロジェクト論文という名称のこともある)で卒業が可能です。
リサーチペーパーのテーマは、基本的に教授が指定した範囲から選ぶという形式が採用されることが多いです。
そのため、専門職学位の場合は「修士号(専門職)」という括弧書きが付されることが多く、それで区別されています。
また、課程の名称でも区別されていて「専門職学位課程」となっているはずです。

一方で正規課程は、研究者になるために行く大学院なので、ほとんどの大学院が昼間(夜間はかなり少数)に開講されています。
そして名称も単に「修士課程」または「博士前期課程」という名称が使われていて、かつ、修士論文が必須要件になっています。
ここでいう修士論文は、入学前の段階で研究計画調書を提出して審査を受け、入学後も自分で先行研究をして、最後まで一人で論文を書き上げることを前提にしている修士論文です。
理系の場合は先生からテーマを与えてもらうのが普通ですが、社会科学では原則として自力でテーマを見つけ出してこいというスタンスです。

私立だとかなり優しい指導をしてもらえる(ちょうどいいテーマに導いてもらえる)ことが多いですが、国立の場合は基本的にはスパルタ方式で、相当にしんどい指導が待っています。
捉え方によっては、今話題になっているアカハラ(アカデミックハラスメント)と思えるような指導もなきにしもあらずです。

例えば、教授の指示にしたがって数ヶ月かけて一生懸命調べて、やっとの思いでまとめてきた構成を同じ教授に全否定されて、最初からやり直し、またはテーマそのものの変更を余儀なくされるなんてことも比較的頻繁に発生しますし、教授自身が前回指摘した内容を忘れていて、真逆のことを言い出すなんてこともあります。
このような指導をすべて愛のある指導だと思えるタフさが必要です。

そして、正規課程では、卒業する前に修士論文に対して教授陣による審査が入りますので、その審査に落ちないように、審査前の段階で様々な指摘をされます。
その指摘があまりにも的確かつコテンパンなので、心が病んでしまう人も一部いて、国立の場合は強いメンタルが必要だと思います。

これは教授が厳しすぎるという問題もありますが、それ以上に国立の大学院に入るべきではない学力の人が大量にいるということが主な問題だと思っています。
先生方が思う「院生としての最低限のレベル」に学生の多くが到達できていないのです。
もちろん、先生によっては私立と同等の優しいご指導をしてくれることもあるのですが、確率でいうと高くはないと思っておいた方が良いです。

そして、あまりに出来が悪いと、先生から「この内容では修士号をあげられないから、卒業を伸ばしたら?」というアドバイスをもらうことになります。
これは実質的な留年を意味します。

また、能力的に修士論文を書き上げられないと判断された場合には、リサーチペーパーを提出するよう指示され、修士論文なしで卒業させられることもあります。
私もそういう人を何名か見たことがあります。
正規課程なのに修士論文なしで卒業させられるというのは、相当ヤバいです。
研究者としての資質はゼロですよという引導を渡される感じです。

こういう違いがあるので、正規課程を経て研究者になった人たちからすると、専門職学位に対して「修士論文も書いていないのに修士号?」という疑問符がつくわけです。

しかし、ビジネスの世界では正直どうでもいいことです。

そもそもMBAのほとんどは夜間大学院かつ専門職学位課程なので、大半のMBAには修士論文がありません(国立を除く)。
先々国立の大学院で博士号を取ろうと思っているなら正規の修士論文を書いた方が良いですが、ビジネスでMBAを活かしたいだけなら専門職学位で十分です。

なお、参考までにお伝えしておくと、修士号が「経営管理修士」となっている場合は専門職学位であることが多いです。
一方で「経済学修士」「法学修士」「経営学修士」「ファイナンス修士」などになっている場合は正規課程であることが多いです。
大抵の場合、卒業のときにもらう学位記に、専門職学位なら「●●学修士号(専門職)」と記載されるので、それで見分けることができます。
入学前に知りたい場合は、募集要項を見ましょう。
そこに学位の種類が書かれているので、修士号(専門職)と書いてあれば専門職学位です。

以上のような正規課程と専門職学位課程の違いは一応知っておいた方が良いことだとは思いますが、わざわざ文系の博士号を取りたいという変わり者は滅多にいませんので、MBAだけで考えれば、専門職学位で全く問題なしです。
むしろ、修士論文という(理不尽な)地獄を経験しなくて良い分、専門職学位の方が合理的だと思います。


2.私立と国立の違い

次に、私立と国立の違いについても簡単に説明しておきます。

MBAに行こうと思った場合、多くの人が学費とネームバリューで決めると思います。
そして学費とネームバリューの両方で有利なのは国立大学です。
学費に関しては、私立の半額以下で行けるはずです。

関東でいうと一橋大学MBA筑波大学MBAが有名で、転職でも高く評価される傾向があります。
公立なら東京都立大学MBAもあります。
また、募集人数は少ないですが、横浜国立大学もMBAを開講しています。

しかし、皆さんご存知のとおり、一橋大学や筑波大学は、毎年倍率が高く、かつ、学生のレベルもかなり高い傾向があるので、なかなか合格できません。

また、運良く合格できたとしても、講義のレベルが高いので、ある程度自学自習が進んでいないと置いていかれます。
生徒も士業やベテラン(40代)が多いので、基礎的な知識なんてあって当たり前という感じです。
そのせいで、生徒の半数くらいは授業についていけなくなります。
私が通っていた頃は、学期の途中くらいから生徒が3割減~半減しているクラスが結構ありました。
それでも関係なくガンガン進んでいくのが国立クオリティです。

そして、国立大学の講義では、主に一流の研究者である先生方が教壇に立つので、内容も極めて学術的で、実務でほぼ使わないだろうなと思う内容が多いです(資料も英語資料が多い)。
一応参考テキストみたいなものはあるのですが、ほぼ使わないです。
当たり前のように英語の論文が登場しますし、基礎的な論点を習得していないと意味すらわからないような最先端論点の話をし始めたりもします。
少なくとも私の時代はそういう講義が多く、学術的な内容で喜んでいるのは私と一部の変態たち(研究者志望の仲間たち)だけでした。
そのため、実務で活かせる知識がほしいと思っている人にとっては、好き嫌いが分かれると思っています。

一方で、私立大学のMBA(MARCH以上を想定)は、基本的に手厚い説明と指導をしてくれます。
早稲田は若干スパルタで知られていますが、それでも国立よりはだいぶマシです。

有名私立の講義は、実務家(元コンサルや現役士業など)が担当することも多いので、そこまで高度なものではなく、きちんと実務で活かせるような内容にアレンジされていることが多いです。
また、横のつながりを作りやすい環境が整備されていて、生徒同士のつながりを持ちやすいです。
たしかに私立の方が授業料は高いですが、それ相応の教育サービスを得られると思って良いと思います。

それに、私立のMBAの場合は、教育訓練給付金の支給対象になっていることが多いので、実質的な学費はかなり安くなります。
そういう意味でも、最近は私立大学の方が人気が高くなっていっているかもしれません。

私立と国立、どちらが良いのかと言われるととても難しいのですが、きちんと基礎を学びたいと思うなら私立大学の方が良いのではと思います。
国立大学は、先生の多くが研究者なので、実務に寄り添ったことを学ぶというより、研究者としての学問を学ぶという側面が強いです。

そして、国立は修士論文が必須であることが多いので、かなり手厳しい指導も受けます。
そういう場所に学力が足りない状態で入学すると、痛い目に遭うだけで終わることになります。
同期の多くも成績がガタガタになっていて、2年間特に成長もなく、ろくに学べていない(授業についていけていない)まま卒業していきました。
あれだと立派な学歴はあるけど実力はないという状態なので、後々実務の世界で損をするだけです。

あくまでも一橋大学での実例を見る限りだと、早稲田やMARCHのMBA又は他の学問分野の修士号を取得した人や士業で何年間も活躍してきた人が入学していることが多いので、そういう進学の仕方をした方が良い成績で修了できると思います。
いずれにしても、現在の学力次第で結論は変わると思うので、入学する前に真剣に考えて決めた方が良いでしょう。



【書籍紹介】

ということで、やっと本題である書籍紹介に入ります。
ここからはMBAに入る前に読んでおくべき書籍を紹介していくので、片っ端から買って読んでいってください。

ただ、既にその分野の専門家といえるレベルにいる人については、必要な書籍だけ読めば足りると思います。

一方でこれからMBAを目指そうかなと思っている人については、入門書籍はすべてお読みいただいて、その後自分の専攻したい分野の書籍を中心に読んでいけば良いと思います。

なお、以下では、MBAの主な専攻に従って、以下の8分野の書籍をご紹介していきます。

1.入門書籍
2.会計分野の書籍
3.ファイナンス分野の書籍
4.経営戦略分野の書籍
5.経済学分野の書籍
6.組織論及び組織行動論の書籍
7.ビジネスロー分野の書籍
8.M&A

一般的な私立のMBAであれば入門書籍だけ読んでおけば十分についていけると思います。
一方で一橋、筑波、京都、神戸、早慶などの難易度の高いMBAに行く場合は、できれば全分野の全書籍を読んでおくことをオススメいたします。
そのうえで、各分野の主要な論点について議論できる程度に理解していることが望ましいです。
有名大学院のトップ層はそのレベル感で入学してきます。



1.入門書籍

MBAに入る前に読んでおくべき書籍は無数に存在しますが、その中でも入門書籍に位置づけられるものをいくつかご紹介していこうと思います。

原則はすべて読むべきだと思っておりますが、専攻の違いによって取捨選択は可能かもしれません。
入学までの期間や自分の専攻分野に応じて対応いただければと思います。


【簿記の入門】

(1)簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記3級

(2)簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記3級 総仕上げ問題集

(3)簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記2級 商業簿記 テキスト&問題集

(4)簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記2級 工業簿記 テキスト&問題集

(5)簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記2級 商業簿記 総仕上げ問題集

(6)簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記2級 工業簿記 総仕上げ問題集


まずは、入学前の段階で、日商簿記2級(全経簿記1級でも可)を取得しておくことを強くオススメいたします。

MBAで良い成績を獲得する人は、通常この程度の知識は当然に持っていますし、公認会計士や税理士資格を保有している人も多いので、日商簿記2級程度の知識は必須と言って良いと思います。

なお、日頃から実務で会計を使っていて、既に財務諸表をスラスラと読めるという人については資格取得までは不要です。
ただ、取っておくと転職でも一定の評価を受けるので有益だと思います。



【その他入門書籍】

以下の書籍もあくまで学部レベルの入門書籍が多いので、大学院に入る段階では当然に頭に入っているだろうと思われる書籍ばかりです。
学部生時代に既に読んだ事がある書籍は飛ばして良いと思いますので、各自の学習歴に応じてご判断ください。


(1)プレMBAの知的武装(神戸大学MBA)

(2)人生を変えるMBA(神戸大学MBA)

(3)ビジネススクールで教えている会計思考77の常識

(4)MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

(5)ビジネススクールで身につける 会計×戦略思考

(6)MBAのアカウンティングが10時間でざっと学べる

(7)MBAの経営戦略が10時間でざっと学べる

(8)ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門

(9)世界標準の経営理論

(10)両利きの経営


ここまでは全員が読んでおいた方が良いだろうと思われる書籍です。
たった10冊で、難易度も低いものばかりなので、数ヶ月で読み終えられると思います。

そして、これ以降の書籍は、原則としてすべて読むべきですが、取捨選択も可能と思われる書籍です。
いずれも学部レベルの書籍なので、学部ですでに学んだことが書籍や読んだことがある書籍は飛ばして大丈夫です。


(11)ビジネス・アカウンティング

(12)ざっくり分かるファイナンス

(13)起業のファイナンス増補改訂版

(14)増補改訂版 起業のエクイティ・ファイナンス

(15)ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論

(16)経営戦略原論

(17)ストーリーとしての競争戦略

(18)経営戦略入門

(19)マーケティング入門

(20)大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる

(21)入門経済学

(22)マネジメント・テキスト ビジネス・エコノミクス

(23)ミクロ経済学の力

(24)ミクロ経済学の技

(25)マクロ経済学入門

(26)大学4年間の行動経済学が10時間でざっと学べる

(27)行動経済学入門

(28)はじめての経営組織論

(29)はじめての組織行動論

(30)組織行動 組織の中の人間行動を探る

(31)ベーシック会社法入門

(32)知的財産法入門

(33)技術者・研究者のための 特許の知識と実務

(34)プレップ労働法

(35)労働法入門 新版

(36)金融商品取引法入門

(37)ビジネス実務法務検定試験2級公式テキスト

(38)国際関係私法入門

(39)これ1冊でぜんぶわかる! 貿易実務

(40)M&Aコンサルティングの実務

(41)この1冊でわかる! M&A実務のプロセスとポイント

(42)図解でわかる企業価値評価のすべて


入門書籍としてはこんなものかなと思います。
どの分野を専攻するかによって重点的に読むべき書籍が変わりますが、基本的には上記の42冊程度の知識は持っておいた方が良いと思います。
ビジネスマンとしての常識に近い入門的な内容ばかりなので、読んでおいて損はないです。



2.会計分野の書籍

入門的な書籍で基礎を固めたら、ある程度専門的な書籍も読んでおくべきだと思います。
正規課程で修士論文を書く必要がある大学院に行く場合は、以下で紹介する書籍よりも深い内容の文献や論文を読み漁らないといけませんが、そのレベルになってくると細分化されていって紹介しきれないので、ご自身で頑張って探してください。
ひとまずは、一般的な書籍をご紹介してきます。

なお、以下で紹介する会計分野の書籍については、公認会計士及び税理士の皆様は飛ばしていただいて結構です。
MBAの学生の中でもトップレベルの会計知識を既にお持ちなので、読む必要性が低いと思います。


(1)財務3表一体理解法

(2)財務会計講義

(3)財務3表一体理解法 「管理会計」編

(4)管理会計

(5)財務諸表分析

(6)現代税務会計論

(6)については税法を専攻しない限り読まなくていいかなと思います。
MBAで税金を専門に教える講義は少ないのと、あったとしても取る人が少ないので、必要な方だけお読みください。

一方で、(4)の管理会計の書籍(超分厚い)は読んでおいた方が良いと思います。
管理会計はMBAの科目の中でもコア科目の一つなので、深く理解しておいた方が良いです。



3.ファイナンス分野の書籍

ファイナンス専攻に関しては、基本的にプロしか進学しない専攻だと考えているので、書籍を読むというよりは、論文調査や実証研究に時間を使うべきだと思います。
そのため、以下の書籍は、ファイナンスのプロではないけどなぜか進学してしまおうと思っている勇者向けです。

なお、私が知る限り、MBAの専攻の中で最も賢い人が多いのがファイナンス専攻です。
一橋もその傾向が強く、ファイナンス専攻は異次元の頭脳の持ち主たちが行くところだと思っています。
逆にいうと、一般的な頭脳の人たちは全く講義についていけてなくて、ただ聞き流していただけという状態でした。
なので、ファイナンス専攻に行く人は、相当な覚悟を決めてから進学してください。
某国立大学院の数学修士号まで取った優秀な男が、一橋のファイナンス専攻に進学して「舐めてた。マジで難しい」と嘆いていたので、ファイナンスで使用する数学については高いレベルで仕上げておきましょう。


(1)コーポレートファイナンス 戦略と実践

(2)ゼミナール コーポレートファイナンス

(3)コーポレート・ファイナンスの法務

(4)金融マンのためのエクイティ・ファイナンス講座

(5)数理統計・時系列・金融工学

(6)数理統計学 統計的推論の基礎

(7)基礎から学ぶ統計学

(8)例題で学ぶ初歩からの統計学

(9)証券アナリストのための数学・統計学入門

(10)証券アナリストのための企業分析

(11)新・証券投資論 1 理論篇

(12)新・証券投資論 2 実務篇

(13)経済統計の活用と論点

(14)企業価値評価 第7版 上

(15)企業価値評価 第7版 下

(16)企業価値向上のための 経営指標大全

(17)新・企業価値評価

(18)企業価値評価の実証分析 モデルと会計情報の有用性検証

(3)についてはビジネスローの範囲なんですが、ファイナンス専攻の皆さんはなぜか法務にも詳しいので、一応入れておきました。

そして、これ以上のレベルのファイナンス書籍を私は知らないので、より高度な書籍についてはファイナンス専攻の先輩方に聞いて下さい。

そういえば、ファイナンス専攻の人たちに修士論文を見せてもらいましたが、数式だらけで何書いてるのかようわからんレベルでした。
未だにあの人達を神だと思っています。
たしかファイナンス専攻のあの人達は、東大卒と京大卒と海外の有名な大学卒の人でした……しかも有名な外資コンサルで働いている人たちです。
入学前からレベルが違う人達です。



4.経営戦略分野の書籍

経営戦略論については、進学する大学院の教授が、どういう学派(見解)に属するのかを確認しておいた方が良いかもしれません。
私としては、企業における競争優位の源泉は会社の内部にあると考えるRBV(Resource Based View)の考え方が性に合っていますが、もしかしたら現代経営戦略論においては、企業の外部環境を分析するポジショニングアプローチの方が優勢かもしれません。

ただ、先生によってはSECIモデルを信奉していることもありますし、ゲーム理論大好きという先生もいます。
担当教授によって内容が大きく変わってくるので、一旦は全体像を理解するために以下の(1)の書籍を読んで、その後で他の書籍で深めていくというスタンスが良いかもしれません。

いずれにしても、経営戦略論は非常に面白い分野なので、専門書籍を大量に読んでおくことをオススメいたします。
なお、ファイナンス専攻と同様に経営戦略専攻もなかなかの粒ぞろいで、外資コンサルの現役マネージャーや公認会計士等がゴロゴロいる専攻になっております。
そのため、こちらも覚悟を決めた状態で進学することをオススメいたします。


(1)競争戦略論

(2)企業戦略論【上】基本編 戦略経営と競争優位

(3)企業戦略論【中】事業戦略編 戦略経営と競争優位

(4)企業戦略論【下】全社戦略編 戦略経営と競争優位

(5)競争戦略論I

(6)競争戦略論II

(7)知識創造企業

(8)ゼミナールゲーム理論入門


それぞれがなかなかの分厚さで、かつ、内容も高度なので、読み終えるのに時間がかかると思います。
ただ、国立に行くなら読んでおくべきだと思います。
経営戦略論を学術として研究するなら、おそらく優秀な人なら全員が読んだことがある書籍になると思うので、入学前のお作法という位置づけです。
講義の中でも当たり前のように出てくるワードが結構あるので、少なくともそれぞれのフレームワークの概要は覚えておきましょう。

一方で、私立大学のMBAに行く場合は、経営戦略論を学術として研究するのではなく、単に議論の道具として使うこともあります。
その場合は、有名なフレームワーク等を理解していれば十分なので(1)の書籍だけでもついていけるかもしれません。
そのうえで、以下の書籍などを読んでおくと議論のネタになるかもしれないです。


(9)コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法

(10)ROIC経営 実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上

(11)仮説思考

(12)ロジカル・プレゼンテーション

(13)プラットフォームの教科書 超速成長ネットワーク効果の基本と応用

(14)ハーバード流交渉術

(15)この一冊で全部わかる ビジネスモデル 基本・成功パターン・作り方が一気に学べる

(16)日経テクノロジー展望2024 世界を変える100の技術


上記(9)~(16)の書籍は、学術書ではなく、ただのビジネス書です。
なので、けして研究では使えないのですが、私立のMBAでは研究よりも議論が重視されるところも多く、議論に積極的に参加できない人は成績が悪くなるという傾向があります。

そのような講義では、知識の豊富な人よりも瞬時にそれっぽいことを発言できる人の方が教授に気に入られやすく、印象にも残りやすいです。
さすがにテキトーなことばかり言う人はダメですが、それっぽいことをそれっぽくいう技術は身につけておくべきだと思います。

上記の本はそういう技術を身につけるためのヒントが載っているビジネス書という感じです。
理想としては、それぞれの知識を深く習得して、瞬時に短く説明できることですが、そこまで到達するのに数年かかるので、まずは広く浅く押さえておきましょう。

ちなみに、一橋の講義内の議論で、浅い知識のまま議論に参加すると、集団でボコボコにされることがあるので注意が必要です。
なぜか教授も参戦してこれでもかというほどに恥をかかされることもあるので、中途半端な知識ならもう喋らないという方針のほうが精神衛生上良い気がしてます。

そういうことも大学院では起こり得るので、皆さんが進学する大学院で議論の場があるとしても、その議論に参加するメリットがあるかどうかをよく検討したほうが良いと思います。
鬼の首を取ったように振る舞いたいがために議論をする人や単にマウントを取りたいだけの人が多い場では、議論に参加するだけ損をすると思うので、避けましょう。



5.経済学分野の書籍

経済学分野の書籍は、ファイナンス専攻の書籍とかなりかぶっています。
特に統計学については必須だと思いますので、ファイナンス分野の書籍も参考にしてください。

また、経済学で修士号をもらう場合は、通常のMBAと異なり、修士論文が必須になることが多いので、一般的なMBAとは異なり研究者としての技能が求められる傾向があります。
そのため、若干難易度の高い書籍も読んでおくべきです。


(1)マンキュー マクロ経済学I 入門篇

(2)マンキュー マクロ経済学II 応用篇

(3)スティグリッツ入門経済学

(4)スティグリッツ ミクロ経済学

(5)スティグリッツ マクロ経済学

(6)行動経済学 伝統的経済学との統合による新しい経済学を目指して

(7)データサイエンスの経済学

(8)入門 計量経済学

(9)計量経済学

(10)実証分析のための計量経済学

(11)経済学の歴史

(12)経済論文の書き方

(13)質の高い研究論文の書き方


大学院に入学する前に読んでおくべき書籍はこのくらいかなと思います。
あとは入学後に大量の先行研究を読み漁ってください。
経済学分野なら100~200の文献は読まないといけないと思うので、頑張るしかないです。

そもそも経済学という世界は思っている以上に広いので、読もうと思えばいくらでも文献が出てきます。
また、MBAの中でも花形に位置する研究科だと思うので、論文の書き方や作法がきちんと存在し、かつ、研究の着眼点も無数に存在します。
したがって、読み始めるときりがない世界です。

大学院生にとってより重要なことは、上記のような書籍で基礎的な理論や作法をしっかりと押さえた上で、どういう着眼点で研究を行うのかという点です。
おそらくほとんどの学生は、何らかのデータを集めて分析するという実証研究によって修士論文を書くと思うのですが、その際にどれだけ論点を絞れるのかで成否が分かれます。
論点を絞れていない学生の論文は、とても読んでいられない代物になります。
そのため、基礎的な理論と分析手法を押さえたら、できる限り早く論点を絞る活動に移ってください。

修士課程はたった2年間しかない上に、単位も取らないといけないので、実質的に実証研究を行える期間は半年~1年程度です。
単位が取るのが遅い人は3ヶ月程度しかない場合もあります。
そんな短期間で集められるデータはたかが知れているので、早く始めればはじめるほど、良いデータを大量に集められます。

そして、良いデータが揃っていれば、それだけ分析を正確かつ多角的に行えるので、他の人の修士論文より深みが出ます。
そういう意味では、入学前からすでに勝負は始まっていると思っているので、基礎的な書籍を早く読み終えて、実証研究の検討に移りましょう。

経済学研究科の上の方には、天才級の猛者が何人もいるので、早く始めた方が有利です。
それでも勝てはしないと思いますが、時間さえあれば彼らの論文に近い品質の論文が書けるはずなので、時間を有効に使ってください。



6.組織論及び組織行動論の書籍

ここ数年で人気が出てきたのが組織論及び組織行動論を専攻するコースです。
マネジメント専修と呼ばれていたり、マネジメント専攻と呼ばれたりします。
最も人数が多いMBAのコースです。

この専攻では、経営学全般を広く浅く学ぶことに加えて、組織論・組織行動論・組織心理学の分野を中心に学ぶことになります。
しかし、けして簡単な分野ではありません。
むしろ、極めて学際的な分野なので、難易度は高いです。

組織論や組織行動論は、経済学、心理学、社会学、法律学などのそれぞれの分野から違ったアプローチで研究がなされているので、教授がどの分野からのアプローチを試みているのかで話が全然違ってきます。
そのため、基礎的なところを押さえるだけでもかなり苦労する学問分野だと思います。

なお、組織行動論と組織心理学は大枠では同じものだと思ってください。
MBAの課程では組織行動論という名称が用いられることが多いです。


(1)組織論

(2)組織行動論

(3)オーガニゼーショナル・ビヘイヴィア

(4)組織行動論の考え方・使い方

(5)組織行動の考え方 ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト

(6)産業組織論 理論・戦略・政策を学ぶ

(7)組織の経済学

(8)経営管理論

ここまでを押さえておけば十分だろうと思います。

そのうえで、話のネタとして、以下のような書籍も面白いです。


(8)なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践

(9)学習する組織 システム思考で未来を創造する

(10)恐れのない組織「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす


この3冊は学術書ではなくビジネス書なので、研究にはあまり使えないですが、着眼点としてはとても面白いと思うので、参考になるだろうと思います。



7.ビジネスロー分野の書籍

ビジネスロー専攻に関しては、よほどもの好きでもない限りは進学しない方が良いのではないかと思っています。

というのも、ビジネスロー専攻の学生の多くが弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、米国公認会計士、司法書士又は10年以上の法務実務経験を有するプロだからです。
他の大学院のMBAや法務博士号(ロースクールでもらえる学位)をすでに保有している人もかなり多くいます。
それもあって、講義の内容も高度になりがちです。

私の同期には弁護士と税理士が多かったですが、単なる法務部員であっても誰もが知っている企業の法務部長クラスや監査役などがそのへんにゴロゴロといたので、そういうレベル感だと思ってもらったほうが良いと思います。
比較的平均年齢も高い研究科なので、行くならある程度勉強をした上で行くべきです。

そういう事情をあまり知らない状態で入学すると、成績もボロボロになりますし、授業にもついていけないので、学費が無駄になります。
現に学生の半数近くが講義についていけていませんでした。

そもそも、法学というのは、1科目を仕上げるのに何ヶ月もかかるような分野です。
それをたった13~14コマ(20時間程度)の講義で終わらせようというのですから到底無理な話です。
そのせいで、かなり駆け足で講義が進んでいくか、又はテキストを読了していることを前提として最先端の論点を扱うかという講義になります。
したがって、講義内で基礎を学ぼうなんていう発想は捨ててください。
ビジネスロー専攻は、すでに基礎を学び終わった人間が、自分の研究を更に深めるために行くところだという認識を持った方が良いです。

ただ、学生の数もそこそこいるので、平均的なレベルは高くはないとも思っています。
トップ層に天才が多いというだけで、他は普通の人たちです。
そもそも法学の世界は、広く深く知っている本当に優秀な人は極一部(1割程度)だけなので、それ以外はどんぐりの背比べ状態です。
大抵の学生は、特定の分野(特定の法令)を少し知っているだけで、それ以外の科目だと素人と変わらないです。
そのため、一般的なビジネスローの基礎を学んで、かつ、自分の専攻する特定の分野を徹底的に学んでおけば、十分に戦えるレベルになります。

有り難いことに法学の世界はとても広いので、誰にでも戦える分野が見つかるはずです。
まずはビジネスローの基礎的な書籍(入門書籍で紹介済み)を読み漁って、基礎を固めましょう。
そのうえで、以下の書籍を通じて法学という底なし沼に入っていきましょう。


(1)会社法

(2)株式会社法

(3)民法(全)

(4)我妻・有泉コンメンタール民法

(5)独占禁止法

(6)景品表示法

(7)法律要件から導く論点整理 景品表示法の実務

(8)スタンダード所得税法

(9)スタンダード法人税法

(10)基礎から身につく国際課税

(11)交渉の作法: 法交渉学入門

(12)基礎から学べる金融商品取引法

(13)著作権法

(14)特許法講義

(15)特許法

(16)詳解 労働法

(17)労働法 第13版

(18)AIの法律

(19)国際ビジネス法務のベストプラクティス

(20)新・国際売買契約ハンドブック

(21)基礎から学べるアメリカ法

(22)新版 負けない英文契約書 不利な条項への対応術

(23)企業法務のための民事訴訟の実務解説

(24)コーポレート・ファイナンスの法務

こちらの書籍についてはファイナンス分野でも紹介しています。

(25)不動産ファイナンスの法務と契約実務

(26)プロセス講義 倒産法

(27)プラットフォームビジネスの法務

(28)ファンドビジネスの法務

(29)詳解 デジタル金融法務

(30)デジタルマネービジネスの法務

(31)詳解 個人情報保護法と企業法務


このあたりの書籍を読んでおけば大学院でも十分についていけるだけの基礎学力は身につくのではないかと思います。
長年企業法務に携わっている弁護士や法務部員にとっては「こんなもんで良いんだ」と思うくらいの分量だと思います。
ベテランなら2~3ヶ月あれば上記30冊程度はすべて読めるはずです。
それに、実務ですでに読んでいる本も多いと思うので、そういう本は飛ばしてください。

そして、大学院の2年間では、極力学術論文を読むようにしてください。
ビジネスロー専攻が設けられている大学院では、修士論文を書き上げることが必須になっていることが多いと思いますので、早い段階で法学論文のお作法に慣れて、自分でアウトラインを書けるようにしておきましょう。

法学は他の学問よりも論文のお作法に厳しい傾向があって、言葉の定義や書式(形式的ルール)、論証の美しさなどを重視します。
司法試験論文とはまた違った形式なので、弁護士の皆さんも注意して学び直してください。
私が知る限り、弁護士資格を持っている人の方が論文のお作法を知らないことが多く(特にナンバリングが下手な人が多い)、学術的な論述もあまり上手ではない人が多いので、論文の評価も低くなりがちです。
そのため、過信せずに一から学ぶ気持ちでいた方が良いと思います。

また、法学論文のお作法は大学院によって若干異なります。
その大学院の権威がこうだと言えばそれに従うしかないので、その形式を遵守してください。
一行の文字数、ナンバリングの仕方、スタイル設定、参考文献の書き方、パラグラフライティングの方法に至るまで細かく指定されるはずです。

むしろ、指定してくれるだけ有り難いと思ってください。
法学研究科では、学部時代にそういうお作法を教えている(ゆえに知っていて当然と思われている)ので、大学院では何の説明もしないことがあります。

論文提出期限ギリギリになって急に「形式が全然ダメ。やり直せ」と言われて留年することもあるので、法学論文のお作法を知らない人はネットで検索して調べてみてください。
もしくは、以下の書籍を参照してください。


(32)法学系論文の書き方と文献検索引用法

(33)法を学ぶ人のための文章作法


大学院で上記の書籍とは違うことを言われた場合は、すべて言われたとおりにしましょう。
逆らっても学生側には一切メリットがないので、素直に従う方が得です。

そして、経済学と同様、できる限り早い段階で論点を絞ってください。
ビジネスロー専攻で成績が伸びない人がよくやりがちなこととして、広すぎる論点を扱ってしまったり、メイン論点を扱ってしまうという失敗があります。
これは講義の課題レポートでも同様です。

広すぎる論点は書ききれないですし、書いても内容が薄くなります。
また、メイン論点はすでに多くの研究者がこすり倒しているので、新規性が無くなります。
その結果、修士論文の質が低下するので、よほどの天才でもない限りは、狭い論点又は誰も書かないようなマイナーな論点を狙うのが良いでしょう。

最後にもう一つ注意点として、法学の先生は他の研究科の先生より厳しい傾向があるので、心を強く持ってください。
法学の教授陣の中には、天才的な頭脳を持っている先生や弁護士資格を持っている先生も多いため、学生の平均的な学力との間に極めて大きな実力差があります。
そのため、そういう先生は日頃から話が通じない学生に対してストレスを感じていて、無意識的に学生の心を折る一言を言ってきたりします。
そういう言動を一々気にしていたら心が保たないと思うので、法学者とはそういう人の集まりだと思って進学してください。
優しい穏やかな先生に当たったらラッキーというくらいの認識で入学すると良いと思います。
健闘を祈ります。



8.M&A

最後に、M&Aに関する書籍をご紹介しましょう。

MBAにM&A専攻というのはまだないですが、いずれ出てきてもおかしくないくらいに重要な分野です。
この分野は、経営戦略、財務、ビジネスモデル論、ビジネスロー、組織論などの学際的な論点を包含していて、様々な分野からの検討が可能です。
少なくとも私はM&Aというテーマだけで、経済学、経営学、経営戦略、法学、ファイナンス、組織論などの分野でそれぞれ修士論文が書けると考えています。
それくらい学際的で、非常に面白い分野です。

しかも、日本のM&Aはまだまだ発展途上なので、論文で書ける論点が山程眠っています。
実務界にも本当の意味での専門家はまだ少ないので、専攻するキャリア上のメリットもあるでしょう。
ゆえにオススメ分野です。



(1)ストーリーでわかる初めてのM&A 会社、法務、財務はどう動くか

(2)ストーリーで理解するカーブアウトM&Aの法務

(3)M&A実務のすべて

(4)M&A契約 モデル条項と解説

(5)M&A戦略の立案プロセス

(6)M&A無形資産評価の実務

(7)弁護士・公認会計士の視点と実務 中小企業のM&A

(8)ゴールドマン・サックスM&A戦記

(9)M&A 財務デューデリジェンス入門

(10)人材獲得型M&Aの成功法則

(11)9つの失敗パターンでわかるM&A戦略の基本と実務

(12)M&Aを成功に導く法務デューデリジェンスの実務

(13)M&Aを成功に導く 財務デューデリジェンスの実務

(14)中小企業M&Aにおける財務デューデリジェンスのすべて

(15)論点解説 クロスボーダーM&Aの法実務

(16)アジア新興国のM&A法制

(17)M&Aシナジーを実現するPMI

(18)JTのM&A 日本企業が世界企業に飛躍する教科書

(19)税務からみたM&A・組織再編成のストラクチャー選択

(20)企業買収の実務プロセス


上記の本の中に、修士論文のテーマになり得る論点が少なくとも10個以上眠っています。
M&Aはまだまだ論文数も少なく、検討すべき論点も多いので、いくらでも論点が見つかる分野です。

また、日本ではまだM&Aの数が多いとは言えない(小さいものはたくさんあるが公開情報が少ない)ので、いくつかのM&A事例を詳細に調べるだけでも修士論文になり得ます。

そして、MBAに行く人のほとんどが社会人なので、研究者との差別化という意味で、個性的な論文を書きやすい分野でもあります。
そもそも、フルタイムで働いている人間が、学術的な論文で研究者と勝負をしても絶対に勝てません。
実務家には実務家の良さがあるので、修士論文として良い論文を書きたいと思うなら、実務に寄り添った論文を書くべきです。
それこそが教授陣が読みたい論文だと思うので、M&Aのドロドロした話とか、公開されていない内情に関するインタビューなどは教授陣が好む論点の一つです。

実務家だからこそ書ける内容を探すと良い成績を修めやすいと思うので、そういう視点で論点を探してみてください。
M&Aはそういう論点がたくさん眠っている分野です。


まとめ

全部数えてみたら163冊(1冊重複)も紹介していました。
すべて読む猛者はいないと思いますが、専攻によっては100冊くらいは軽く読む人もいると思います。
それくらいが成績上位者の普通です。

大学院で良い成績を取って、かつ、修士論文も高評価を得るためには、それ相応の文献を読まないといけません。
2年間で150~200くらいは読むべきだと思っているので、入学前の段階で100冊くらいはこなしておきましょう。

そうすることで講義もわかりやすくなります。
先生たちのいうことを瞬時に理解して、いつ当てられても即答できるくらい予習しておけば、ほぼ確実に名前を覚えてもらえますし、成績も良くなります。
入学前の段階で8割方勝負は決まっていると思うので、これから進学したいと思っている皆さんは、ぜひ頑張って読破していってください!
心から応援しております。

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