未明

そこらにいる学生の短篇集。詩、エッセイ、物語。

未明

そこらにいる学生の短篇集。詩、エッセイ、物語。

マガジン

  • 日々を編む

    日々を編んでいるエッセイです

  • 人間観察日記

    “動物園に行っても動物を見ずに結局人間観察をしてしまう私”がお送りする、日常を生きる人間の観察記録。「八割の妄想」と「二割の観察」の配分。ほぼフィクション。四坪の海開き。

  • ビオトープ観察日記

    • 7本

記事一覧

#10 耳心地

私たちは数多ある言葉の中から、いくつかを選んで会話をしている。 しかも、たくさんのひとたちが使ってきたものを優先的に選んでしまうものだから、耳心地はきっといいも…

未明
2日前
6

#9 サンドイッチ

今日は良い天気。青空がのぞいて、雲ももくもくと泳いでいる。しかし、風が強い。帽子をかぶっていたら、きっと吹き飛ばされてしまっていただろう。もしもかぶっていたのが…

未明
9日前
11

#5 最後のペンギン

それから僕は視聴覚室でやっていた軽音楽部のライブを見に行く。 4階にある自分の教室から2階にある視聴覚室に行く。 3階の踊り場。1フロア降りただけなのに、かき鳴らさ…

未明
1か月前
14

出会い☑︎ 別れ☑︎ ラーメン◻︎

交換日記6ページ目ですね。 いかがお過ごしでしょう。こちらは花粉にひどくやられておりました。 本当に花粉酷くてさ、免疫力をガクッと下げられてしまって、日々の疲れ…

未明
2か月前
6

不思議な出会い

やあ、回ってきました。3ページ目です。 初めましての方は、はじめまして。末っ子の未明です。 これは、すずちゃん、縷々ちゃん、未明ちゃん、の仲良し三人で“何か”した…

未明
3か月前
18

とりあえず、久しぶりだね

「もしもし、今大丈夫?」 「もしもし、大丈夫だよ」 「・・・とりあえず、久しぶりだね」 「うん、久しぶり」 「・・・いつぶり?」 「うーん、もう五年ぶりくらいじ…

未明
4か月前
7

今生きている人生を仮に何周目としましょうか

未明
4か月前
7

忘れられないだろうなあ

暗闇のなかに光が見えたような1年だった気がする。 去年の暮れにつくった「未明」というアカウント。言葉を大切にしたくて、つくったこのアカウント。1年もの間続けるこ…

未明
4か月前
15

#8 九年間の雨の日

一年のうちに何日雨が降るだろう。 その年によっても違うだろうけど、そんなに多くはなかったりするのかな。 今日は雨が降っている。明け方から降っていたらしい。ぽとぽ…

未明
6か月前
9

10/30~11/5

・自動販売機に肘をあててもたれかかる女性。 きっと何かドラマの撮影なのかもしれない。絵になるような服の色だった。強いていうなら探偵もの。たぶん米倉涼子だった。う…

未明
6か月前
10

#7 今朝のこと

・新しく鳥の巣を発見しました。電車の高架のところのちょっとした穴のところ。その中から、三匹の鳥が勢いよく出てきました。朝日に向かって飛んで行くのかなと勝手に思っ…

未明
6か月前
15

10/24

・ロンTのバックプリントに「THE FUTURE」と書いてある人。何だか未来に向けて真っ直ぐな思想を持っていそう。多分デザインとか機能性とかじゃなくて、この文字を見つけた…

未明
7か月前
10

人間観察日記

はじめにこの日記は、“動物園に行っても動物を見ずに結局人間観察をしてしまう”私がお送りする、日常を生きる人間の観察記録である。 物語のように綴られる人、はたまた…

未明
7か月前
9

#6 もっと

全然関係の無い話なのだけど、私がなにか言葉を綴るときはいつもタイトルから決まることがほとんどなのだが、まれに情景から浮かんできて、タイトルがなかなか決まらないと…

未明
7か月前
7

#4 文化祭

高校生のときの文化祭はよく覚えている。もしかしたら、鮮明に覚えているのかもしれない。 文化祭は一年生の頃と三年生の頃、数でいえば2回しか開催されなかった。 コロ…

未明
7か月前
9

また競った

また競おうとしている自分がいる 相手は歩道橋上の今にも飛び降りようとしている あの人 あの数分前の自分に勝ちたい きっとあの人は競った末に負けた人 だからあそこ…

未明
7か月前
4
#10 耳心地

#10 耳心地

私たちは数多ある言葉の中から、いくつかを選んで会話をしている。
しかも、たくさんのひとたちが使ってきたものを優先的に選んでしまうものだから、耳心地はきっといいものになってしまっているかな。

あそこのカフェの窓際の席に座るカップルもきっとそうだ。誰もが聞いたことのある愛の言葉を魔法のように囁いて、甘いひとときが溶け出したハチミツをふわふわのパンケーキの上に落として二人で美味しく頬張るのだ。
すっか

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#9 サンドイッチ

#9 サンドイッチ

今日は良い天気。青空がのぞいて、雲ももくもくと泳いでいる。しかし、風が強い。帽子をかぶっていたら、きっと吹き飛ばされてしまっていただろう。もしもかぶっていたのが麦わら帽子だったとしたら、かなり高くまで飛ばされていたのではないかと、くだらないことまで考えてしまう。

明日は一限がある日。朝早く起きなくてはいけない日。だのに、今日はポップコーンを食べた。一人で食べきるにはあまりある量のポップコーンだ。

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#5  最後のペンギン

#5 最後のペンギン

それから僕は視聴覚室でやっていた軽音楽部のライブを見に行く。

4階にある自分の教室から2階にある視聴覚室に行く。

3階の踊り場。1フロア降りただけなのに、かき鳴らされたギターの音と芯を震わすようなベースの音に心躍らすドラムの音。一段一段と階段を下りるたびに、胸は高鳴り早足になった。

2階まで降りれば、視聴覚室はもうすぐそこにある。角を曲がった暗い廊下の先の、美術室と向かい合った視聴覚室。建付

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出会い☑︎ 別れ☑︎ ラーメン◻︎

出会い☑︎ 別れ☑︎ ラーメン◻︎

交換日記6ページ目ですね。

いかがお過ごしでしょう。こちらは花粉にひどくやられておりました。
本当に花粉酷くてさ、免疫力をガクッと下げられてしまって、日々の疲れも重なってしまったのか微熱が出てしまって、久々にうんうんとうなされる夜を過ごしたよ。

時は前後してしまうのだけれど。おじいちゃんの代から行きつけだったラーメン屋さんが突然閉店してしまったの。チェーン店ではあるんだけど、家族三人で切り盛り

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不思議な出会い

不思議な出会い

やあ、回ってきました。3ページ目です。
初めましての方は、はじめまして。末っ子の未明です。
これは、すずちゃん、縷々ちゃん、未明ちゃん、の仲良し三人で“何か”したいねということで始まりましたビオトープ観察日記(仮)です。

すでにね、書かれてあるふたりの記事を読まれた方も多いかもしれませんが、もしまだ読まれてない方がいらっしゃったら是非とも読んでくださると嬉しいですね。(マガジンの方にまとめられて

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とりあえず、久しぶりだね

とりあえず、久しぶりだね

「もしもし、今大丈夫?」

「もしもし、大丈夫だよ」

「・・・とりあえず、久しぶりだね」

「うん、久しぶり」

「・・・いつぶり?」

「うーん、もう五年ぶりくらいじゃない」

「もうそんなに経つのかあ」

「はやいね」

「久しぶりな気がしないね」

「そうかね」

「今何してるの?」

「仕事。・・・・・・ごめん、嘘。月見てる」

「そっか、今日満月だもんね」

「五年前の同窓会の日もこん

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忘れられないだろうなあ

忘れられないだろうなあ

暗闇のなかに光が見えたような1年だった気がする。

去年の暮れにつくった「未明」というアカウント。言葉を大切にしたくて、つくったこのアカウント。1年もの間続けることができたのは、ひとえにみなさんのおかげだと思う。何度も何度も消えてしまおうかとも考えていた。流れてくるツイートたちに打ちのめされたり、励まされたりして、嫌になって、まだまだ頑張ろうと思って。なんとかここまでやってこれた気がする。

今年

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#8  九年間の雨の日

#8 九年間の雨の日

一年のうちに何日雨が降るだろう。
その年によっても違うだろうけど、そんなに多くはなかったりするのかな。

今日は雨が降っている。明け方から降っていたらしい。ぽとぽとと屋根にぶつかる雨の音を聞きながら、毛布をかぶって眠れない夜をやり過ごした。だから本当は何時から降り始めていたか知ってるけど、知らないふりをしたい。眠れなかった夜を雨には知られたくないなって思ったから。

朝、ベッドから起きるのは辛かっ

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10/30~11/5

10/30~11/5

・自動販売機に肘をあててもたれかかる女性。
きっと何かドラマの撮影なのかもしれない。絵になるような服の色だった。強いていうなら探偵もの。たぶん米倉涼子だった。うん、きっとそうだ。たっかいヒールを履いていた。うん、きっと履いていた。

・赤いスポーツタイプの自転車に乗る久しい友。
久しぶりに君のことを見かけた気がする。後ろ姿で断定して不躾だとは思うが許してくれ。お前の寝癖が俺にお前だと叫んでいたんだ

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#7  今朝のこと

#7 今朝のこと

・新しく鳥の巣を発見しました。電車の高架のところのちょっとした穴のところ。その中から、三匹の鳥が勢いよく出てきました。朝日に向かって飛んで行くのかなと勝手に思っていたら、近くのゴミ捨て場に一直線でした。鳥も私と同じように生きていました。

・一部分がクリアーになっている手帳型のスマホケースを見ました。初めて見ました。スタイリッシュでカッコよかった。持っている人は白のロンTを着ていて、胸にラスタカラ

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10/24

10/24

・ロンTのバックプリントに「THE FUTURE」と書いてある人。何だか未来に向けて真っ直ぐな思想を持っていそう。多分デザインとか機能性とかじゃなくて、この文字を見つけたから、このロンTを買ったんだと思う。他にもたくさん文字が書いてあるけど、ドあたまの「THE FUTURE」に一目惚れしてそう。多分これしか読めない。

・23日を跨いですぐのコンビニの前で、ふたりきりでひとつの豚汁で温まっていたカ

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人間観察日記

はじめにこの日記は、“動物園に行っても動物を見ずに結局人間観察をしてしまう”私がお送りする、日常を生きる人間の観察記録である。
物語のように綴られる人、はたまたそれからの一日を予想される人、その人の過去など、様々な人間模様を私の独断と偏見で描写していきたいと思う。
「八割の妄想」と「二割の観察」の配分。いや、ほぼフィクションとして読んでもらってかまわない。そのくらい自由に人間を見て聴いて触れて感じ

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#6  もっと

#6 もっと

全然関係の無い話なのだけど、私がなにか言葉を綴るときはいつもタイトルから決まることがほとんどなのだが、まれに情景から浮かんできて、タイトルがなかなか決まらないということもある。

前者のタイトルが先行した場合は、結局タイトルのことをなぞってしまうから、つまらなくなりがち(ほとんど)。以前、友人に「タイトル回収はやすぎてつまらないね」と言われたことも。後者の場合は自分的には気に入った内容になるのだけ

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#4  文化祭

#4 文化祭

高校生のときの文化祭はよく覚えている。もしかしたら、鮮明に覚えているのかもしれない。

文化祭は一年生の頃と三年生の頃、数でいえば2回しか開催されなかった。

コロナウイルスのおかげで3回しかなかった文化祭が2回になってしまった。今となってはもっとやりたかったって思う。なんで当時そうは思わなかったかというと、クラスに友達がいなかったからだと思う。多分そうだった気がする。

1度目の文化祭はタピオカ

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また競った

また競った

また競おうとしている自分がいる

相手は歩道橋上の今にも飛び降りようとしている

あの人

あの数分前の自分に勝ちたい

きっとあの人は競った末に負けた人

だからあそこにいる

負けの味しか知らない人

勝ちの味を知らない人

上にも下にも天井があるように見える

右にも左にも底があるように感じる

圧迫感とは違う冷えた空気のない恐怖

負けたあとの臭い

競った

勝った負けた

もう聞き飽き

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