未明

私の人生の短篇集。物語が多いですが、日記のようなエッセイもあります。

未明

私の人生の短篇集。物語が多いですが、日記のようなエッセイもあります。

マガジン

  • ビオトープ観察日記

    • 7本
  • 日々を編む

    日々を編んでいるエッセイです

  • 人間観察日記

    “動物園に行っても動物を見ずに結局人間観察をしてしまう”私がお送りする、日常を生きる人間の観察記録。「八割の妄想」と「二割の観察」の配分。ほぼフィクション。四坪の海開き。

最近の記事

#5 最後のペンギン

それから僕は視聴覚室でやっていた軽音楽部のライブを見に行く。 4階にある自分の教室から2階にある視聴覚室に行く。 3階の踊り場。1フロア降りただけなのに、かき鳴らされたギターの音と芯を震わすようなベースの音に心躍らすドラムの音。一段一段と階段を下りるたびに、胸は高鳴り早足になった。 2階まで降りれば、視聴覚室はもうすぐそこにある。角を曲がった暗い廊下の先の、美術室と向かい合った視聴覚室。建付けの悪い美術室の扉がガタガタと震えている。土足禁止である視聴覚室には前の廊下の壁

    • 出会い☑︎ 別れ☑︎ ラーメン◻︎

      交換日記6ページ目ですね。 いかがお過ごしでしょう。こちらは花粉にひどくやられておりました。 本当に花粉酷くてさ、免疫力をガクッと下げられてしまって、日々の疲れも重なってしまったのか微熱が出てしまって、久々にうんうんとうなされる夜を過ごしたよ。 時は前後してしまうのだけれど。おじいちゃんの代から行きつけだったラーメン屋さんが突然閉店してしまったの。チェーン店ではあるんだけど、家族三人で切り盛りしていて、カウンター6席に小上がりのテーブル席が1つのこじんまりとしたお店だった

      • 不思議な出会い

        やあ、回ってきました。3ページ目です。 初めましての方は、はじめまして。末っ子の未明です。 これは、すずちゃん、縷々ちゃん、未明ちゃん、の仲良し三人で“何か”したいねということで始まりましたビオトープ観察日記(仮)です。 すでにね、書かれてあるふたりの記事を読まれた方も多いかもしれませんが、もしまだ読まれてない方がいらっしゃったら是非とも読んでくださると嬉しいですね。(マガジンの方にまとめられているので、僕はあんまりわからないのですが、なんかフォロー?とかしたりすると見やす

        • とりあえず、久しぶりだね

          「もしもし、今大丈夫?」 「もしもし、大丈夫だよ」 「・・・とりあえず、久しぶりだね」 「うん、久しぶり」 「・・・いつぶり?」 「うーん、もう五年ぶりくらいじゃない」 「もうそんなに経つのかあ」 「はやいね」 「久しぶりな気がしないね」 「そうかね」 「今何してるの?」 「仕事。・・・・・・ごめん、嘘。月見てる」 「そっか、今日満月だもんね」 「五年前の同窓会の日もこんな満月だったよ」 「そうだっけ・・・」 「そうだよ、覚えてないの?」 「飲

        #5 最後のペンギン

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        • ビオトープ観察日記
          7本
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          9本
        • 人間観察日記
          3本

        記事

          今生きている人生を仮に何周目としましょうか

          今生きている人生を仮に何周目としましょうか

          忘れられないだろうなあ

          暗闇のなかに光が見えたような1年だった気がする。 去年の暮れにつくった「未明」というアカウント。言葉を大切にしたくて、つくったこのアカウント。1年もの間続けることができたのは、ひとえにみなさんのおかげだと思う。何度も何度も消えてしまおうかとも考えていた。流れてくるツイートたちに打ちのめされたり、励まされたりして、嫌になって、まだまだ頑張ろうと思って。なんとかここまでやってこれた気がする。 今年はいろんな人と出会ったなあ。 かろやかに韻を踏んだ人。天使。拡声器のような人。星

          忘れられないだろうなあ

          #8 九年間の雨の日

          一年のうちに何日雨が降るだろう。 その年によっても違うだろうけど、そんなに多くはなかったりするのかな。 今日は雨が降っている。明け方から降っていたらしい。ぽとぽとと屋根にぶつかる雨の音を聞きながら、毛布をかぶって眠れない夜をやり過ごした。だから本当は何時から降り始めていたか知ってるけど、知らないふりをしたい。眠れなかった夜を雨には知られたくないなって思ったから。 朝、ベッドから起きるのは辛かった。寒いことはもちろんなんだけど、今日はテストがあったから余計に起きたくなかった

          #8 九年間の雨の日

          10/30~11/5

          ・自動販売機に肘をあててもたれかかる女性。 きっと何かドラマの撮影なのかもしれない。絵になるような服の色だった。強いていうなら探偵もの。たぶん米倉涼子だった。うん、きっとそうだ。たっかいヒールを履いていた。うん、きっと履いていた。 ・赤いスポーツタイプの自転車に乗る久しい友。 久しぶりに君のことを見かけた気がする。後ろ姿で断定して不躾だとは思うが許してくれ。お前の寝癖が俺にお前だと叫んでいたんだ。お前が悪い。あの頃からついた寝癖を風に乗せる癖は変わっていないようで安心したよ

          10/30~11/5

          #7 今朝のこと

          ・新しく鳥の巣を発見しました。電車の高架のところのちょっとした穴のところ。その中から、三匹の鳥が勢いよく出てきました。朝日に向かって飛んで行くのかなと勝手に思っていたら、近くのゴミ捨て場に一直線でした。鳥も私と同じように生きていました。 ・一部分がクリアーになっている手帳型のスマホケースを見ました。初めて見ました。スタイリッシュでカッコよかった。持っている人は白のロンTを着ていて、胸にラスタカラーのスレッズに酷似したロゴがくっついていました。初めて見ました。スタイリッシュで

          #7 今朝のこと

          10/24

          ・ロンTのバックプリントに「THE FUTURE」と書いてある人。何だか未来に向けて真っ直ぐな思想を持っていそう。多分デザインとか機能性とかじゃなくて、この文字を見つけたから、このロンTを買ったんだと思う。他にもたくさん文字が書いてあるけど、ドあたまの「THE FUTURE」に一目惚れしてそう。多分これしか読めない。 ・23日を跨いですぐのコンビニの前で、ふたりきりでひとつの豚汁で温まっていたカップル。短パンの男の子に、全身ジャージの女の子。きっと高校生くらいな。ふたりそろ

          人間観察日記

          はじめにこの日記は、“動物園に行っても動物を見ずに結局人間観察をしてしまう”私がお送りする、日常を生きる人間の観察記録である。 物語のように綴られる人、はたまたそれからの一日を予想される人、その人の過去など、様々な人間模様を私の独断と偏見で描写していきたいと思う。 「八割の妄想」と「二割の観察」の配分。いや、ほぼフィクションとして読んでもらってかまわない。そのくらい自由に人間を見て聴いて触れて感じて、表現したいと思ったのだ。人間がとても怖いけど、結局人間が好きだから。 今ま

          人間観察日記

          #6 もっと

          全然関係の無い話なのだけど、私がなにか言葉を綴るときはいつもタイトルから決まることがほとんどなのだが、まれに情景から浮かんできて、タイトルがなかなか決まらないということもある。 前者のタイトルが先行した場合は、結局タイトルのことをなぞってしまうから、つまらなくなりがち(ほとんど)。以前、友人に「タイトル回収はやすぎてつまらないね」と言われたことも。後者の場合は自分的には気に入った内容になるのだけれど、その分タイトルを決めるのに困ってしまう。なかなか良いタイトルが決まらなくて

          #6 もっと

          #4 文化祭

          高校生のときの文化祭はよく覚えている。もしかしたら、鮮明に覚えているのかもしれない。 文化祭は一年生の頃と三年生の頃、数でいえば2回しか開催されなかった。 コロナウイルスのおかげで3回しかなかった文化祭が2回になってしまった。今となってはもっとやりたかったって思う。なんで当時そうは思わなかったかというと、クラスに友達がいなかったからだと思う。多分そうだった気がする。 1度目の文化祭はタピオカ屋さん的なものをやった気がする。ポケモンセンター風のタピオカ屋さんだ。クラスのリ

          #4 文化祭

          また競った

          また競おうとしている自分がいる 相手は歩道橋上の今にも飛び降りようとしている あの人 あの数分前の自分に勝ちたい きっとあの人は競った末に負けた人 だからあそこにいる 負けの味しか知らない人 勝ちの味を知らない人 上にも下にも天井があるように見える 右にも左にも底があるように感じる 圧迫感とは違う冷えた空気のない恐怖 負けたあとの臭い 競った 勝った負けた もう聞き飽きた だから負けた また競った 勝った 惜しくも負けた また勝った 勝

          また競った

          #3 真っ暗闇だったはずの未来

          今日は10代最後の日。 昨日は疲れていて、家に帰ったら泥のように眠ってしまった。リビングの床の上で夜を明かした。久しぶりに床で寝た。床で寝たときのあの感覚はやっぱりベットで寝るときとは全く違って私は好き。硬いし冷たいんだけど、やさしい感じがする。ベットはたまにやさしくないときがあるから。床はいつでもやさしい。そんな気がする。あくまでも私の感覚だけど。 いつかのこの時期もうちの前の道路は工事をしていた。今年もしている。たまたまかな。 いつかのこの日もうちのトイレにゴキブリが

          #3 真っ暗闇だったはずの未来

          #2 行きの電車

          私はバイトに行くとき、必ず電車に乗ります。ゆらゆらがたごとと揺られて、バイト先までのらり行くのです。 ラッシュの時間帯じゃないから、座席もまばらに空いていて座れたりすることもあるのだけれど、そんなに座りたいとは思わないのです。座っているとどちらか一方の景色しか眺めることが出来ないから、そんなに好みじゃないんです。欲張りな私はどちらの景色も平等に眺めたいので、むざむざ自身の欲望に我慢を強いるようなことはしたくありませんし、片方の景色しか見ることが出来ないなら運賃は半額しか払い

          #2 行きの電車