未明

忘れないための短篇集。詩、エッセイ、物語。

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    いつか本にしたい

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    “動物園に行っても動物を見ずに結局人間観察をしてしまう私”がお送りする、日常を生きる人間の観察記録。「八割の妄想」と「二割の観察」の配分。ほぼフィクション。四坪の海開き。

最近の記事

#15 あなたが人生を始めた"一番最初の日"はいつですか

ふと思ったんです。「自分はいつから人生を始めたんだろう」って。 もちろん、母の身体から出てきて、産声をあげたときでもあるんですけど。物心がついて、明確に「これから人生を始める!」って思えた瞬間っていつだろうって。 私、実はまだないんです。あったかもしれないんですけど、思い出せないのでたぶんまだないんです。勝手に始まってたなあ、という感覚だけあるんです。だから、明確にはまだ自分の人生は始まっていないんだということにしています。いつ始めようかな。もう二十だし早めに始めた方がい

    • 水も飲んでます

      交換日記9ページ目だね。 「9」って特別な感じがするんだよね。0から始まると最後の数字だし、タロットでも隠者ってカードでなんか好き。あとは何だか紫色に見える。それから、私のソウルナンバーも9なの。 さあここで『Q』uestionです。 なーんて書き出しをしてしまっていたんだよね。 なっかなかクイズが思い浮かばなくて、ボツにしてしまおうと思った書き出しなんだけど、わざと残しておくことにしちゃうね。 書いてる途中でクイズが思い浮かぶかもしれないから! もう毎日暑いねえ。も

      • #14 この夢だけは偏っちゃおうか

        空き教室で、本を読んでいた。 すると、前の方の席で話している女の子二人の会話が聞こえてきてしまって。 教室内には、僕とその二人とはるか後方に二人ほどしかいなく、彼女たちは普通の声量で話をしていた。 どうやら、病み期の対処法や他の授業での話、さらには夢の話。 いま読んでいる殺し屋の物語とのギャップに耐えかねた私は、本を読んでいるフリをして、少しだけ身を乗り出して話を聞く姿勢を取った。 二人だけの世界で繰り広げられていく二人の会話は、徐々に熱を帯びていき声も次第に大きくなっ

        • #13 換気扇の下

          普段からどこにでもいる。空気みたいに。 どこかに吸い込まれて、また吐き出されて。 染められて、綺麗にされて、望んでもいないのに焦がされたりして。 見えないのに、見えるようにされたり。 知ったかぶりをうけて、そうしなくてはならないように。 あるのかないのかも曖昧な存在のままで。 またこの部屋に帰ってきた。 壊れた換気扇の下で、この部屋の空気のまま一生を終えてしまうの。 直してよ、今すぐにでも。治してよ、この身体。 ああ、わたしを吸い出してくれたらよかったのに。 そした

        #15 あなたが人生を始めた"一番最初の日"はいつですか

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        記事

          #12 季節は遅刻しても怒られない

          梅雨入りをしたらしい。 例年より二週間くらい遅いらしい。 大遅刻だ。 でも梅雨は四時間目の授業中に教室に入っても、みんなに振り向かれたりはしないだろうし、反省文も書かなくていいんだと思う。 挙句の果てに一番前の窓際の席でノートも開かずに頬杖をついて中庭をのぞいてる。先生は何も言わない。 昼休みはお弁当も食べずに中庭のベンチに寝っ転がって本を読んでる。きっと遅めの朝ごはんを食べてから来たんだろうな。 午後の授業も一緒。 ぼけーっと窓の外を眺めている。たまに目を大きく見開いて、

          #12 季節は遅刻しても怒られない

          #11 あの時、あの電車はたしかに1983年でした。

          その時代に生きていないのに、なんだかその時代を懐かしく思うことってありますよね。どうしてなんでしょう。これっぽちも詳しくなんか知らないのに。 全然知らないから、むしろ真新しいもの、新鮮なもの、ニュースタイルとして感じているのかも? でもおかしいですよね、たしかに懐かしい感じがするんです。あの胸の奥がじんわりとあったかくなるような、あの感覚に襲われてしまうんです。 ラジオで懐かしのシティポップが流れていたんです。歌手の名前も曲名も聴いたことがなかった、僕が全く知らない懐かしい

          #11 あの時、あの電車はたしかに1983年でした。

          #10 耳心地

          私たちは数多ある言葉の中から、いくつかを選んで会話をしている。 しかも、たくさんのひとたちが使ってきたものを優先的に選んでしまうものだから、耳心地はきっといいものになってしまっているかな。 あそこのカフェの窓際の席に座るカップルもきっとそうだ。誰もが聞いたことのある愛の言葉を魔法のように囁いて、甘いひとときが溶け出したハチミツをふわふわのパンケーキの上に落として二人で美味しく頬張るのだ。 すっかり汗をかいたグラス。 クリームソーダの炭酸が撥ねる音。 氷が溶けて傾いて、直立の

          #10 耳心地

          電話BOX

          夜、目が覚めると、真っ暗だった 少しだけ、鳥肌も立っていた 悪夢にうなされていたのかな 汗もハチミツみたいに染み出して べたついて気持ちが悪い たぶん、さっきまで隣で誰かが眠っていた 形とぬくもりが跡になってる 私と似ていて、私の跡と向かい合ってる もしかしたら、風かもしれない 今何時なんだろう 夜なのは確かだけど 時間が分からないな 部屋に砂時計しか無くて ともだちが南の国のおみやげだと 私の部屋に置いていったやつ 迷惑だったけど、助かると思って 今でも部屋に置いて

          #9 サンドイッチ

          今日は良い天気。青空がのぞいて、雲ももくもくと泳いでいる。しかし、風が強い。帽子をかぶっていたら、きっと吹き飛ばされてしまっていただろう。もしもかぶっていたのが麦わら帽子だったとしたら、かなり高くまで飛ばされていたのではないかと、くだらないことまで考えてしまう。 明日は一限がある日。朝早く起きなくてはいけない日。だのに、今日はポップコーンを食べた。一人で食べきるにはあまりある量のポップコーンだ。某倉庫型販売店で箱買いしてきた。らしからぬ薄味でほんのり香るバターがもうたまらな

          #9 サンドイッチ

          #5 最後のペンギン

          それから僕は視聴覚室でやっていた軽音楽部のライブを見に行く。 4階にある自分の教室から2階にある視聴覚室に行く。 3階の踊り場。1フロア降りただけなのに、かき鳴らされたギターの音と芯を震わすようなベースの音に心躍らすドラムの音。一段一段と階段を下りるたびに、胸は高鳴り早足になった。 2階まで降りれば、視聴覚室はもうすぐそこにある。角を曲がった暗い廊下の先の、美術室と向かい合った視聴覚室。建付けの悪い美術室の扉がガタガタと震えている。土足禁止である視聴覚室には前の廊下の壁

          #5 最後のペンギン

          出会い☑︎ 別れ☑︎ ラーメン◻︎

          交換日記6ページ目ですね。 いかがお過ごしでしょう。こちらは花粉にひどくやられておりました。 本当に花粉酷くてさ、免疫力をガクッと下げられてしまって、日々の疲れも重なってしまったのか微熱が出てしまって、久々にうんうんとうなされる夜を過ごしたよ。 時は前後してしまうのだけれど。おじいちゃんの代から行きつけだったラーメン屋さんが突然閉店してしまったの。チェーン店ではあるんだけど、家族三人で切り盛りしていて、カウンター6席に小上がりのテーブル席が1つのこじんまりとしたお店だった

          出会い☑︎ 別れ☑︎ ラーメン◻︎

          不思議な出会い

          やあ、回ってきました。3ページ目です。 初めましての方は、はじめまして。末っ子の未明です。 これは、すずちゃん、縷々ちゃん、未明ちゃん、の仲良し三人で“何か”したいねということで始まりましたビオトープ観察日記(仮)です。 すでにね、書かれてあるふたりの記事を読まれた方も多いかもしれませんが、もしまだ読まれてない方がいらっしゃったら是非とも読んでくださると嬉しいですね。(マガジンの方にまとめられているので、僕はあんまりわからないのですが、なんかフォロー?とかしたりすると見やす

          不思議な出会い

          とりあえず、久しぶりだね

          「もしもし、今大丈夫?」 「もしもし、大丈夫だよ」 「・・・とりあえず、久しぶりだね」 「うん、久しぶり」 「・・・いつぶり?」 「うーん、もう五年ぶりくらいじゃない」 「もうそんなに経つのかあ」 「はやいね」 「久しぶりな気がしないね」 「そうかね」 「今何してるの?」 「仕事。・・・・・・ごめん、嘘。月見てる」 「そっか、今日満月だもんね」 「五年前の同窓会の日もこんな満月だったよ」 「そうだっけ・・・」 「そうだよ、覚えてないの?」 「飲

          とりあえず、久しぶりだね

          今生きている人生を仮に何周目としましょうか

          この記事を公開したのは、2023年の1月7日。そして今日、本文を書いているのはそれから4か月が経った5月です(もう6月になりますが)。 この記事を投稿した当時の僕は”noteはタイトルだけでも記事を投稿できる”ことに気付いて、わくわくしていたんでしょうね。なにか面白いことができないかなあと、考えてはいたのですが結局それきりで、この記事のことを今日まで忘れていた私なのですが・・・。ということで、ここに少しだけ自己紹介のようなものを書いてみようと思います。もう6月なのでね、

          今生きている人生を仮に何周目としましょうか

          忘れられないだろうなあ

          暗闇のなかに光が見えたような1年だった気がする。 去年の暮れにつくった「未明」というアカウント。言葉を大切にしたくて、つくったこのアカウント。1年もの間続けることができたのは、ひとえにみなさんのおかげだと思う。何度も何度も消えてしまおうかとも考えていた。流れてくるツイートたちに打ちのめされたり、励まされたりして、嫌になって、まだまだ頑張ろうと思って。なんとかここまでやってこれた気がする。 今年はいろんな人と出会ったなあ。 かろやかに韻を踏んだ人。天使。拡声器のような人。星

          忘れられないだろうなあ

          #8 九年間の雨の日

          一年のうちに何日雨が降るだろう。 その年によっても違うだろうけど、そんなに多くはなかったりするのかな。 今日は雨が降っている。明け方から降っていたらしい。ぽとぽとと屋根にぶつかる雨の音を聞きながら、毛布をかぶって眠れない夜をやり過ごした。だから本当は何時から降り始めていたか知ってるけど、知らないふりをしたい。眠れなかった夜を雨には知られたくないなって思ったから。 朝、ベッドから起きるのは辛かった。寒いことはもちろんなんだけど、今日はテストがあったから余計に起きたくなかった

          #8 九年間の雨の日