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電話BOX

夜、目が覚めると、真っ暗だった

少しだけ、鳥肌も立っていた
悪夢にうなされていたのかな
汗もハチミツみたいに染み出して
べたついて気持ちが悪い

たぶん、さっきまで隣で誰かが眠っていた
形とぬくもりが跡になってる
私と似ていて、私の跡と向かい合ってる
もしかしたら、風かもしれない

今何時なんだろう
夜なのは確かだけど
時間が分からないな
部屋に砂時計しか無くて

ともだちが南の国のおみやげだと
私の部屋に置いていったやつ
迷惑だったけど、助かると思って
今でも部屋に置いてある

時間に縛られなくて過ごせるから
お気に入りのアイテム

さらさらと流れて
決まった時間を刻むだけ
満月の日、ときどき分解して
中の砂を月光に浸してみたりする

冷えた砂は軽くなって
逆向きに時を刻み始める
ひとりぼっちのこの部屋で唯一
生きてるもの


まだ暗いけど
少し落ち着いてきた
ベランダの淵にもたれて
外を眺める

公園
街灯
線路
公衆電話BOX

あの電話BOXがタイムマシーンだって
砂時計をくれたともだちが教えてくれた
どうやらある番号に電話をかけると
タイムリープできるらしい

なんとも胡散臭い話だが
度々ちょんまげ人間や
タキシードにハットを被った英国紳士
などが電話BOXから出てくることがある

そういえばしばらく
あの胡散臭い姿を見ていないけど
天井のデリヘルのちらしが全部剥がされたのと
何か関係があったりして

「一緒に連れてってくれ」と頼んだことがあった
変な角とくるぶしを光らせながら
「お前にはまだはやい」と丁重に断られた
むかついたから、くるぶしの方を蹴ってやった


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