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【レビュー】『逆境を跳ね返す力』~第6節ザスパ群馬VSファジアーノ岡山~


試合結果

2024 J2 第6節
3/24 17:00K.O. @
群馬(1-2)岡山
48分 OG(柳貴博)
53分 仙波大志
90+4分 ガブリエル・シャビエル

スタメン

マッチレポート

90+4分の劇的弾。芯の太さを感じる逆転劇。

前半は首位の岡山が最下位の群馬のビルドアップに苦戦した。岡山が3トップでプレスを仕掛けると、群馬はボランチの風間と天笠がその間から顔を出して縦パスをレシーブ。3バックと2ボランチで前後左右にパスを出し入れしながら前進していく。ハマらない岡山は藤田と仙波が前に出て相手ボランチを捕まえに行くも、今度は群馬が右WBの田頭が内側に入ってきたことで3ボランチ気味になり、中盤で数的不利を強いられる。さらに藤田と仙波の背後に立つ高澤に起点を作られてしまう。岡山は相手陣でボールを奪うことはできなかったが、自陣では冷静に対応。マイボールになると、仙波、田中、柳貴が立て続けにPA外からシュートを放った。しかし、ミドルシュートは精彩を欠き、[5-4-1]のブロックで中央を閉める群馬の守備を崩すことはできず。前半は静かな45分だった。

ハーフタイムを挟んで後半に入ると、立ち上がりに均衡を破ったのは群馬。48分、相手陣内の左サイドでスローインを受けた川上がボックスの外から右足を振り抜く。シュートは不規則な回転をしながらゴール前に飛ぶ。芝生が濡れていた影響でバウンドが伸び、柳貴のクリアミスで岡山のネットが揺れた。

岡山は相手に決定的なチャンスを作らせないでいた中、オウンゴールというショッキングな形で今季初めて追いかける立場に。しかし、誰一人として下を向いていなかった。鈴木は手を叩きながら背番号88に駆け寄って声を掛けた5分後に、同点に追いつく。途中出場のグレイソンが前線でタメを作って全体を押し上げると、仙波がPA手前で鋭い切り返しから右足を一閃。GKが反応できない強烈な一撃がゴール左隅に突き刺さった。

その後は両チームが前線のテコ入れを図る。群馬は前線に187cm90kgの佐川を、岡山は69分にガブリエル・シャビエルを投入すると、移籍後初出場となった岡山の背番号8が攻撃のリズムに変化を加える。同胞のグレイソンと阿吽の呼吸を見せてゴールに迫り、90+4分に試合をひっくり返す。末吉のクロスをグレイソンが落とし、シャビエルが右足でネットを揺らした。

岡山はオウンゴールから今季初めて先制点を許すも、動揺せず。メンバーを代えながら全員でゴールを、勝利を貪欲に目指し続けた。どんなことがあっても決してブレない。チームとしての芯の太さを感じる劇的な逆転勝利だった。

コラム

劇的勝利に導いた、魔法使いの創造性。

90+4分、左サイドでボールを持ったガブリエル・シャビエルは内側に持ち運び、右足でPA内にグラウンダーのパスを差し込むと、そのままゴール前に走っていく。グレイソンの落としを受けた背番号8はさらにダイレクトパスでグレイソンとのワンツーを試み、相手ゴール前の最奥へ。これはわずかに合わなかったが、こぼれ球を拾った末吉が左サイドから中央にクロスを入れると、グレイソンが胸で落とす。待っていたのは、シャビエル。咄嗟の反応で右足をコンパクトに振り、ショートバウンドを巧みに合わせてシュートを突き刺した。

69分にシャビエルがピッチに入ってから、岡山の攻撃は劇的に変化した。同点後、岡山の選手はパスの出し所に困り、バイタルエリアでボールを持ってから考えるプレーが続いていた。そのため、攻撃がスピードアップせず、中央を固める相手守備ブロックの前に停滞感が漂っていた。それを払しょくしたのが、背番号8だった。

シャドーのポジションに捕らわれることなく自由に動き回ってボールを受けると、少ないタッチでパスをさばく。特筆すべきは、逆転ゴールのきっかけにもなった“ゴール前にクサビのパスを打ち込んで自らも進入していくプレー”だ。これにより、相手選手の目線を変え、守備陣形を混乱に陥れた。

チーム攻撃のリズムを変化させ、自身の優れたテクニックをゴールにまで結びつけてしまう。魔法使いと呼ばれるにふさわしい、創造性だった。


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