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ちむらの不思議な世界

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ちょっと不思議な話を中心に、短編小説書いてます
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記事一覧

【短編小説】タイムマシンの少年〈前編〉

【短編小説】タイムマシンの少年〈前編〉

 ある日の午後、社会の授業中。頭の禿げ上がった教師が1929年に起きた世界恐慌の影響について汗を流しながら説明しているが、クラスのみんなは暑さのあまり授業そっちのけで下敷きをうちわのように仰いでいた。まだ夏休みが終わって間もない9月の上旬、残暑の厳しい日が続いている時季で勉強なんかに身が入らないのも仕方ないだろう。
 窓際の席の私も授業の内容など全く頭に入らず、ジリジリと日が照らす校庭をぼんやりと

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【短編小説】死を招く指摘

【短編小説】死を招く指摘

 早朝5時、コンビニバイトの夜勤がもうすぐ終わるという頃、私はキッチンで溜ったゴミを外のゴミ捨て場に捨てに行った。すると駐車場の灰皿から離れたところで、1人の男性がタバコを吸っていた。普段ならあまり気にも留めないのだが、その日は大学の試験期間中ということもあり、寝不足だった私は少しイライラしており、男性に少し強い口調で声をかけた。
「お客さま、タバコはこちらの灰皿で吸ってください!」
男性はぼんや

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【短編小説】卵を売る老人

【短編小説】卵を売る老人

 ある日の夜、仕事帰りのこと。路上に1人の老人が座り込んでいた。遠目でもわかる、小汚いなんだか怪しい老人だった。老人の背後には木で作った看板が置いてある。そこにはこう書いてあった。
「卵を売っています 1個100円」
1個100円…?やけに高いな、そんなことを思いながら視線を下にずらすと、老人のすぐ脇には籠が置いてあり、そこにはたくさんの卵が入っていた。よく見ると、卵のひとつひとつに何かが描いてあ

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【短編小説】愛子との交換日記

【短編小説】愛子との交換日記

「あ、このノート…」

 1年ぶりに実家に帰省した私は、自分の部屋の片付けをしていた。高校生の頃まで使っていた勉強机には、小さい頃に使っていた文房具やメモ帳、大切にしていた食玩のおもちゃなど、懐かしい物の数々が眠っていた。こんなところまともに開けたの何年ぶりだろう、そんなことを考えながら、片付けを進めた。というのも、去年結婚した実家に住む姉に子供ができ、私の使っていた部屋をその子の部屋にするから片

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【短編小説】ウルトラギフテッド

【短編小説】ウルトラギフテッド

 「ギフテッド」、という言葉をご存知だろうか。ギフトとは神から贈られた生まれつきの才能のこと。ギフテッドはそのギフトを持ち、生まれながらにして平均より著しく高い知数能力を授かった人間のことである。

 それに加えここ最近、「ウルトラギフテッド」という言葉が巷で話題だ。ウルトラギフテッドはその名の通り、生まれながらにして通常のギフテッドよりもとんでもなく高い知能指数を持った人間のこと。また、知能指数

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【短編小説】地下室の秘密

【短編小説】地下室の秘密

 私の家には地下室がある。といっても、生まれてから中学3年生になる現在まで、1度も中に入ったことがなければ、中に何があるのかもわからない。いや、正確に言うと、遠い昔に入ったことはあったかもしれない。しかしあまりにも遠い過去のことすぎて、入ったことがあったとしても何も全く思い出せない。地下室を使っているのは大学で研究職をしている父親だけだ。私は父とあまり仲良くもないし、父が仕事で何の研究をしているの

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【短編小説】貸切の遊園地

【短編小説】貸切の遊園地

「お客様、おめでとうございます!お客様が当園通算1,000万人目の来場者になります!」
 入場ゲートをくぐると、クラッカーの音と共に周りの従業員全員が拍手をしてコチラを見ている。ここは都心の少し外れにある遊園地、「しらぬいランド」。小さな遊園地ではないが、出来てからだいぶ経ち、周りには他にも綺麗なレジャースポットも増え、客の数はそこまで多くない。きょうは平日だし、朝9時の開園からまもない時間という

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