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マスクを取るな、『ローン・レンジャー (2013年)』


 はーい、テツガク肯定です。

 『ローン・レンジャー(2013年)』のネタバレ全開です。
 苦手な方はお戻りください。





 『トントさんは何を間違えたのか?『ローン・レンジャー(2013年)』』
 で紹介できなかった、夢のあるこの映画の不思議な魅力。
 そのご紹介です。




 映画、13分頃のシーンですが。
 少年、ダニー・リードとレイサム・コール。
 コールさんがダニーさんに遊び方を教えます。

 片方には鳥の絵。
 その裏側には籠の絵。
 それがついた棒を素早く回すと……。

 籠の中に鳥がいるように見えます。


 

 なんてことのない場面ですが。
 私にはこれがもの凄く重要なカギに思えました。

 この映画をつくったのは。
 『パイレーツ・オブ・カリビアン』をつくった方々です。

 製作にジェリー・ブラッカイマーさん。
 監督にゴア・ヴァービンスキーさん。
 脚本にテッド・エリオットさん、テリー・ロッシオさん。
 製作総指揮は ジョニー・デップさん。

 ほぼ、パイレーツのチームですね。
 それで、パイレーツの2作目と3作目では。
 とても面白い死生観だったり、世界観が登場しました。

 それについては私の別の話にあります。


 この話を要約しますと。
 私達が信じているほど、世界は絶対的なものではなく。
 今は遠くに感じる異世界は、本当は身近にある、ということです。

 地球の果て(宇宙)の、その先(あの世)は。
 わざわざ科学技術の結晶って足枷がなくても。
 簡単に抜け出せる、そういう力が人にはある、ということです。

 そう解釈できるような映画をつくった方々です。
 この鳥かごの遊びを、ただの場面と流せるほど。
 愚かな私は賢くはありません。



 それで、この遊びを、鳥が人、籠が世界。
 そう置き換えて考えてみると。

 睡眠と覚醒を繰り返す、私達は。
 ゲンジツって刑務所に囚われた囚人のように思えますが。
 本当は、そんなグリーンマイルの上にはいないのでしょう。

 それから、こう置き換えることもできます。
 鳥をあの世(第七区)、籠をこの世(ゲンジツ)。
 交わることがないと信じていた、第七区も。
 何かを繰り返すことで交わる。

 まるで、パイレーツの3作目で。
 船を揺らして、水中へ沈め、ひっくり返したら……。
 緑の閃光と共に、裏側の世界の日の出へ浮上したように。
 さあ、浮かぶ時間だ。



 この5作目の『ローン・レンジャー』では。
 1933年のサンフランシスコにいたマスクの少年。
 彼が鍵のように思えます。

 彼は誰なのか? 
 きっと、役名があるのでしょうが。
 私の調べでは、その名がわかりませんでした。

 ですが、名前なんてものは。
 おそらく、あまり重要ではありません。

 1869年の『ローン・レンジャー』って話をするのに。

 果たして、マスクの少年が必要だったのか?

 そう疑問に思える、この少年こそ。
 この5作目において、最も重要な人物。
 今の私からすれば、彼こそが主人公、ローン・レンジャー。
 そう思っています。



 5作目は1933年に少年が老いたトントさんに出逢い。
 お菓子とネズミの交換後に、マスクを外した少年に。


 マスクを外してはいかん

 そして、トントさんがこう言って、話が始まります。

 善人がマスクをする、そんな時代があった


 少年はマスクを外したまま。
 その1869年の話を聞き、それが終わると家に帰ると言います。
 帰ろうとしましたが、引き返してトントさんにこう訊ねます。



 ねぇ、ウィンディゴとか自然界の秩序とか
 マスクマンとか――

 全部、作り話だよね?
 ローン・レンジャーなんていない

 そうでしょ?

  それにトントさんは。

 君次第だ、キモサベ

 そういい少年に銀の弾丸を渡します。
 トントさんの話の中で、登場した銀の弾丸。
 それを受け取ったら、トントさんは消えていて。
 かわりにトントさんの頭の上にいた鳥。
 それに似た鴉が突然現れ、飛び立った。


 そして、少年も。


 マスクを外しちゃいけない

 そう言い、再びマスクをつけ直すと。
 次の場面は――。

 ハイヨー、シルバー! ウェーイ!


 1933年から再び1869年へ。
 ローン・レンジャーって精霊(魂)を信じる人が。
 スピリット・ウォーカー、ローン・レンジャー。
 愚かな私には、そう思える結末でした。

 1933年にいた少年が、1869年の青年に?
 馬鹿げている、と思える賢さもわかりますが。

 最初にご紹介した、遊びです。
 人と世界はあの遊びのようなもので。
 裏面にどんな絵を描くか。
 そして、ITを信じるかどうか。

 それ次第で、ペニーワイズが歪むとしたら?

 そう愚かにも思えてきました。
 正直、ロケットやAIに電子機器。
 それらの科学技術の結晶とか。
 回りくどい公式に法則、定理とか。
 そういうものを使わずに飛び込める。

 それでこそ、不思議な国はワンダーランド。
 馬鹿げたことにマジに夢中になれる。
 そういう今があれば、誰だって飛び込める兎穴。

 兎穴入らずんば不思議の国知らず。

 デリーのビル・デンブロウさんがやったように。


 ハイヨー、シルバー! ウェーイ!


 と叫びながら、自転車で下りを攻めれば。
 誰だって、この世ってウィンディゴ。
 その悪霊を振り祓えるかもしれません。

 ただのピエロです。
 臆病者のか弱い独裁者。
 青く醜いスターダスト、滅び行く星屑。
 それを今は昔と忘れ去る、ドッカンターボの我がままでインテグラ。
 もちろん、ロードスターになることなく。


 ですから、マスクを取るな。

 人がマスクをする、そんな世界があった。

 マスクをしなければ。
 夢が見れない、そういう器の小さな夜が。
 そう思えてきます。

 永く描きましたが。
 あの何気ない遊びの場面は。
 けっこう重要だと私は思えます。

 君次第だ、キモサベ

 トントさんが別れ際にそう言えば余計に。

 ずっと、この世をゲンジツだと思っていた。
 違った。

 お前もただのピエロだ。
 バッドチョイス。
 



 

 それでは、また次の機会にお会いしましょう。










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