見出し画像

パイレーツ・オブ・カリビアン、2作目と3作目


 はーい、テツガク肯定です。

 『パイレーツ・オブ・カリビアン』の中での死生観。
 地球の果てやあの世についての話です。

 この話には2作目と3作目のネタバレがあります。
 まだ観ていない方で、ネタバレを嫌う方はお戻りください。



 

 2作目『デッドマンズチェスト』から3作目『ワールドエンド』で描かれた。
 死生観、地球の果て、あの世という概念は。
 私にとって、今でも印象に残るものです。

 キャプテン・ジャック・スパロウは。
 2作目の後半で、あっさりとタコに食べられてしまいます。
 それも衝撃でしたが、それよりも衝撃だったのが1作目で死んだはずの。
 キャプテン・バルボッサが登場したことです。

この後、リンゴをガブリ!


 バルボッサさんが復活する前に。
 ティア・ダルマさんと海賊たちのやりとりがあります。

 そのため(ジャック・スパロウを取り戻す)には何でもする?

 地球の果ての
 その先まで行って――

 あの変わり者のジャックと
 彼の船を取り戻す?


 そのためにバルボッサさんが呼ばれたわけです。
 そして、3作目『ワールドエンド』にて。

 ティア・ダルマさんが言った『地球の果て』の意味を思い知りました。



 寒そうな海原を進み。
 気がつけば、地平線も見えない真っ暗な海原。
 星々が浮かぶ水面を進んでいました。

左下に見えるのが船で、上が空な……はずです
船を上から映しています。水面に星々が反射しています。


 最初に観た時は、夜になったんだと思いました。
 もちろん、夜なのでしょう。

 ただ、今ではこう見えます。
 まるで、宇宙を進む船だと。

 そして、気づきました。
 これが『地球の果て』だったのか、と。

 地球の果て……。
 言い回しを変えたら地球の外とも言えます。
 外には何があるか?
 今のところ、宇宙のはずです。

 そして、その先を進むと……。
 目の前には大きな滝が。

 これで私が連想したのは。
 昔、信じられていた真っ平な世界。

 実は、私もこの世は平面だと思っています。
 ただ、こういう形ではありませんが。
 (どちらか言えば、映画館の映画のようなものです)

 昔、信じられていた平面の世界では。
 海の果てには滝があって、落ちてしまう。
 その落ちた先が、地球の果て(宇宙)の、その先……あの世(宇宙ではない世界)?

 2~3回観ても気づけませんでしたが。
 最近ではそう思えてきました。

 どういう理由であれ、ジャック・スパロウさんがいるであろう。
 この世ではない世界へ行く、という不思議さを上手く描いています。

 さっきまで寒そうな海原にいたのに。
 いつの間にか、真っ暗な海にいて。
 目の前には大きな滝が待っていた。

 まるで、神隠しにでもあったかのような。
 そういう不思議な雰囲気が演出されています。



 『地球の果て』が宇宙で。
 その先、ワールドエンドへ行くために。
 滝から落ちる、という流れも驚きですが。
 映画の中で語られる死生観も面白かったです。

 寒そうな海原でのシーンです。

 ピンテルさんとラゲッティさん。
 ピンデルさんが鋭いことを言います。

 バルボッサを蘇らせた魔術を
 ジャックに使ったら?

 それにティア・ダルマさんが答えます。

 バルボッサは ただ死んだだけ

 ジャック・スパロウは
 肉体も魂も連れていかれたの

 死の国でなく
 罰が待ち受ける――

 生と死の間に

 人間に与えられる
 最も恐ろしい運命が――

 永遠に科せられる

 それがデイヴィ・ジョーンズの海の墓場

 ティア・ダルマさんは死者なら。
 簡単に連れ戻せるようですが。
 ジャック・スパロウさんは連れ戻せない。

 それを私はこう考えました。
 デイヴィ・ジョーンズの海の墓場は。
 今でいう異世界なのかもしれない、と。

 生と死の間に、それは――。

 異世界では生きているが、この世では死んだように思える。

 私達も死という現象を死去と言います。
 死消、死忘ではなく、死んで去る。
 違うどこかへ行った、つまり生まれた。


 すみません、突然ですが。
 全く関係のない私の昔話をさせてください。

 私にとって不思議な縁ですが。
 初めて、ディズニーランドに行った時。
 最初に乗ったのが、カリブの海賊でした。

 まだ、その頃は映画もできていなくて。
 幼稚園の時の私はジャック・スパロウを認識していませんでした。
 ちょうど、その頃、宇宙の外はどうなっているか、と考えた結果。
 幼稚園に通っていた私は真っ白な空間が広がっている、そう思いました。

 そして……ジャック・スパロウさんがいた異世界。
 デイヴィ・ジョーンズの海の墓場も、今の私でいう白影夢中。
 (私の想像では山とかもなく、本当に真っ白な空間でしたが。それから罪も罰もありません)


 話を戻しまして。


 なぜ、バルボッサさんは連れ戻せたのに。
 ジャック・スパロウさんはできなかったのか?

 バルボッサさんの場合、旅立ったのがこの世の別の時代。
 ジャック・スパロウさんの場合、堕ちたのがこの世ではない異世界。
 だから、その異世界まで行く必要があった。

 そう私は解釈しました。
 少なくとも、パイレーツ・オブ・カリビアンの世界観では。
 魔術で死者を蘇らせることができる。
 だけど、そういう死生観の世界でも。
 異世界の人を召喚するのは簡単ではない……かもしれない。



 少し不思議な死生観とあの世という異世界。
 それから地球の果て。

 それは、ただのファンタジー、そう斬り棄てられるほど。
 愚者の私は賢くはありません。

 この映画の海も、私達の海も同じだと思います。
 夜になれば、水面に星々が浮かんでいると思います。

 ただ、それを夜空が反射しているだけ。
 そう賢く正確に認識しているだけで。


 寒そうな海原でこんなやり取りがありました。
 ウィルさんが海図を眺めながら言う台詞。

 今の海図ほど正確じゃない(吹き替え版です)

 それに、隣の海賊さんが。

 だが、より多くの場所を示す(吹き替え版です)

 このやり取りは字幕より。
 吹き替えの台詞の方が好きです。


 この映画で見ている海図も。
 あの時代から見れば、古いファンタジーのようですが。
 隣の海賊さんが仰るように。

 正しい認識よりも多くの場所を示す。


 昔の方がよかった。
 そう言えば、必ずと言っていいほど。
 違う、今の方が圧倒的にいい、といいます。

 たしかに、ポート・ロイヤルからトルトゥーガへ行くのに。
 より速く正確な航路を知りたいのなら。
 確実に今の方がいいと思います。

 ですが、この世とは思えない場所へ行きたければ?
 その時、その正確さというのは足枷でしかありません。



 キャプテン・バルボッサの台詞。

 ああ、我々は完全に迷った(吹き替え版)

 見つからない場所を
 見つけようとしてるんだ
 迷って当然

 誰もが行けるようじゃ
 意味がない(吹き替え版)



 3作目でも、正確ではない海図だから。
 行くことができてしまった、掟破りのイカロス渡り。

 それは、私達の今でも同じかもしれない。
 そう思えてきました。

 別の映画、『ドクタースリーブ』でのやり取りですが。
 

 スチーム(恐怖心)が弱く、少なくなっている。
 その原因がスマホか、食い物か、インターネットかは知らないが
 最近はスチームの痕跡が見つからない

 字幕だと台詞は違いますが。
 正確な認識? そのお蔭で、人は恐怖を感じなくなった。
 『ゲゲゲの鬼太郎』の妖怪達がのさばれた時代ではなくなりつつある。

 ですが、正確な認識というのは私からすれば疑問符です。
 もし、いると信じたら、いるのならば。
 ウィンディゴとかペニーワイズとか雪女とか。
 ローン・レンジャーとかトントさんとかキャプテン・ジャック・スパロウ。
 彼らがいる方が面白いし。
 正確な認識って誰かにとって都合がいいだけで。
 正直、私にはなんの利点もありません。


 この映画(パイレーツ)、海賊時代の昔も、私達の今も。
 より多くの場所へ行くより、その正確さが求められ。
 どんどん限られ、狭い認識の中に逃げ込んでいる。
 そう思えてきます。

 ですが、本当はすぐ隣にITはあるのかもしれません。


 そう思えたのが、あの白い異世界。
 デイヴィ・ジョーンズの海の墓場からこの世へ戻る展開です。

 海原の果てを もう一度

 日の出が沈む 緑の閃光

 ウィルさんには解けませんでしたが。
 キャプテン・ジャック・スパロウは違いました。

 日没じゃない、日が沈むだ。

 そして日は また上がる

 それから船を揺らして下に沈めました。
 その後、異世界の日が沈み、緑の閃光が走り。
 船は再び上がりました。
 浮上した先のこの世では日の出でした。

 おそらく……。
 異世界で日が沈めば、この世では日の出。
 この世で日が沈めば、異世界では日の出。

 (こちらの)日の出が(あちらでは)沈む。
 二つの世界が緑の閃光で繋がる、ということかもしれません。

海図のように船は水に沈んでいますが……
こうなると、夜の海に浮かんでいるようです


 そういう逆さまな世界。
 ロケットなどの面倒な科学技術の結晶などなくても。
 迷い込める逆さまの宇宙だってあれば、この世と似ている異世界もある。

 いつ、そこへ迷い込んだのか。
 気づけないほどそっくりな異世界。
 だけど、確実にこの世とは違う。


 確かに今の認識は、賢く正確だと思います。
 同時にもの凄く狭いと思います。

 ワールドエンドでの。
 バルボッサさんとジャック・スパロウさんのやりとり。

 かつて世界は もっと広かった(吹き替え版)

キャプテン・バルボッサ

 世界は変わってない
 面白味が減っただけだ

キャプテン・ジャック・スパロウ


 字幕版と吹き替え版は少し違いますが。
 まさに、そういうことだと思います。
 あの海図のやり取りもそうでしたが。

 きっと、パイレーツ・オブ・カリビアンの海も。
 今の私達の海も同じなんだと思います。

 ただ、人の認識が賢く正確になり。
 多くの場所を求めなくなった。
 人が小粒になり、面白味が減った。

 まるで、乙事主様の予言のように。
 そう愚者の私には思えてきました。



 人生とは思考がつくりあげる
 そう仰ったかもしれない、哲学皇帝、アウレリウスさん。

 現在が思考の産物なら。
 その認識をより多くの場所へ向けたら。
 新たな思考は何をつくってくれるのか?

 正確とは思えない、超・不可思議なあの世を思考がつくり。
 もし、世界が何も変わっていないのなら……。
 きっと、何れあの世へも辿り着ける、と愚者の私は確信しています。

 今はあの世、それは昔。夢の第七区へ今こそ。
 ハイホー、ワガママ! ウェーイ!



 最後に、どうでもいいことですが。
 タイトルの『デッドマンズチェスト』を。
 無理やり日本語にすれば、死者の胸、胸にあるのは心臓。
 それから、チェストのもう一つの意味、貴重品が入った箱。

 と、なると……死んだデイヴィ・ジョーンズ。
 その心臓が隠された箱もデッドマンズチェストで。
 いいタイトルだと思います。

 死者の宝箱なデッドマンズチェストと。
 世界の終わりはあの世なワールドエンド。

 1作としての完成度は1作目も凄いですが。
 2作合わせていいのなら、2、3は最高です。

 アメリカの映画は日本の物語よりシンプルでわかりやすいのが好きです。
 地球の果て、その平面な宇宙の滝から墜ちた先のあの世の異世界。
 私の相方が抜け出してきた、第七区とは違う、あの世は魅力的でした。




 それでは、また次の機会にお会いしましょう。














この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?