過去は絶対的ではないからタイムパラドクスは起こらない、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』


 はーい、テツガク肯定です。

 別の話題でも触れましたが。
 過去は絶対的なものではないから。
 未来同様に変わる。

 それを映画の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で解説したいと思います。



 この映画は、マーティさんとドクさんの話で。
 1作目はマーティさんが過去へ行く話です。
 とりあえず、大まかな話の流れを。

 映画開始時の状況です。

 マーティさんのご両親は控えめで物静か。
 お父さんは自信がなく気弱な感じで。
 車を上司のビフさんに壊されても、ガツンと言えない。


 お母さんは少しふくよかで、真面目な女性。

 女性が男性を追いかけるなんて、はしたない。

 恋愛は運命で決まっている。
 お祖父さんがお父さんを車ではねたように。
 そして、その後、魅惑の深海パーティーへ行った。

 そういうご両親のもとにいました。

 それから、ドクさんに呼び出され。
 デロリアンが次元を超越するのを二人で目撃した後。
 ドクさんは過激派に撃たれ、そこから逃げるようにマーティさんは過去へ行きました。

 過去でやることを終えて。
 未来へ戻る時、マーティさんはドクさんに手紙を託しますが。
 未来のことは知りたくない、とドクさんは目の前でそれを破いてしまいます。
 その手紙には、過激派に撃たれるので、身を守る方法を考えて欲しい、と書いてありました。


 そのまま、マーティさんが未来へ戻ると。
 撃たれて死んだと思ったドクさんは生きていました。
 それから、破かれた手紙を見せてくれます。


 さらに家に戻ると様子が違います。
 凄く裕福な暮らしぶりに、お父さんはイケイケな作家で、お母さんはスリムでノリノリな女性に。
 上司だったビフさんは家の使用人のようで、車を磨いていた。



 開始時とは全く違う家庭環境にいました。

 もし、開始時の状況が正しい過去。
 マーティさんの歩むべき歴史ならば。
 戻った未来(現在)は?
 許されざるタイムパラドクス!?

 昔は私もそんなことを思いましたが。
 今は違うと言えます。

 シンジツもゲンジツもなく、許されぬことなどない
 ハイホー、ワガママ! ウェーイ!

 『アサシンクリード』と『ローン・レンジャー(2013)』と『IT』で。
 そう認識がひっくり返りました。




 この映画には注目するとおもしろい二つの点があります。

 まずは、映画開始時のご両親の会話です。

 マーティさんのお母さんが語る。
 魅惑の深海パーティーの話です。
 遠い昔の忘れられない想い出。

 一生を共にするであろう、と思った。
 大切な過去の記憶を語るのですが……。
 その相手のお父さんは、テレビにお熱で上の空。


 まるで、それを忘れてしまったかのようなお父さん。
 というより、そんなことなどなかったかのように。
 (それが重要だと思います、お父さんの認識が)

 映画の開始時でご両親の認識は。
 こんな感じだと思います。

 魅惑の深海パーティーのことを。
 忘れられない、いい想い出として覚えているお母さん。

 魅惑の深海パーティーのことを。
 正直、よく覚えていない、曖昧な記憶になっているお父さん。

 特別、不思議なことではありません。
 誰だって、そういう認識の違いはあると思います。
 これが、過去は絶対的ではなく、曖昧なものという現象です。


 その後、映画の中でマーティさんは過去へ行き、誰に干渉したか?
 それは、お母さんより、曖昧な認識のお父さんの人生に干渉しました。

 車にひかれそうなところを助けたり。
 ダース・ベイダーとして現れてみたり。
 魅惑の深海パーティーへ行き、車からお母さんを助け出すように要求したり。


 結果的に、それらの全てが。
 イケイケなお父さんに変わるきっかけになりました。

 ただ、お母さんの方は微妙です。
 映画開始時の方が本来の姿とは程遠いもので。
 映画を観た後だと、後半の方が素の姿のように思えます。

 意外とノリノリで。
 お母さんのお母さんの方がお堅い人だった。
 本当は刺激的な内面の持ち主のような?


 もし、そうだとしたら。
 お母さんの場合、映画開始時が様変わりした姿で。
 映画の終わりの姿が素のように思えます。

 そして、大切なことは。
 不思議なことに、映画開始時のお母さんの記憶は……。
 何も間違っていません。

 一生を共にするであろう。
 そう思えるだけの出来事が映画の中ではありました。

 ということは、映画では触れられていませんが。
 マーティさんが過去へ行かなかった記憶でも。
 何か別の出来事があった……?

 あるいは、こうも考えられます。
 映画開始時、認識が曖昧なお父さんの過去。
 それは、まだ未完成の過去で。
 マーティさんが干渉することで、それが完成する。

 過去C→映画開始時→過去B→映画後半の未来C

 魅惑の深海パーティーの想い出。
 映画開始時、その認識が曖昧だったお父さんは様変わりし。
 ほんの少しだけ、スリムになったお母さんの想い出は。
 変わるのではなく、より鮮明になった。

 狙ったのかはわかりませんが、このご両親の会話は面白いです。
 無理矢理、過去を変えたというより。
 最初から変わっても不思議ではない、認識の隙間があったことがです。



 それから、外せない2点目はドクさんです。
 ドクさんはとても頭がいい科学者です。
 過去へ行った時も状況を理解し、無事マーティさんを未来へ送り届けました。

 それで……もし、映画の冒頭が。
 この映画の続きだったとしたら?

 マーティさんがアンプで飛ばされた後に電話が鳴り。
 それをマーティさんがとると、向こう側でドクさんは。
 1時15分にアーケードで実験をするから来てほしい、と。
 ついでに、アンプは使わない方がいいと助言し。
 家の時計が8時を知らせる音を聞いた後、ドクさんは言いました。

 完璧だ、私の計算どおりだ(字幕だと台詞は違いますが)



 まるで、不思議な人。
 そう印象づけで、そういう認識もできますが。
 このドクさんが、映画で行った過去のドクさんだったとしたら?

 その後、タイムマシンをつくってしまうほどに。
 映画での出来事を理解していたとしたら……。
 この日の何時にマーティさんがやってきて、何をするのか。
 それくらい、わかっていても驚きません。

 既に、いつタイムマシンができるのか。
 それは知っているのですから。


 そして、あの映画序盤での襲撃事件です。
 それが30年ぶりの再会になることも知っていた。
 だから、そのまま、マーティさんを過去へ送り出した。

 この時の二人の認識を想像すれば。

 マーティさんは、過激派にドクさんが撃たれた。
 そう出来事を認識して過去へ行った。
 未来へ戻る時は、ドクさんは手紙を読まなかった。
 そう認識して、未来へ戻って来た。

 あのドクさんが過去のドクさんで。
 30年、それを待っていたとしたら。

 ここで撃たれたら、再び30年前のマーティさんに会える。
 あの時の手紙が正しければ、そうなる。

 そう認識して待っていたのかもしれない。
 そして、映画はマーティさんに近い認識でつくられていた。
 ですが、その認識が絶対的で唯一の正しい過去認識ではなかった。


 なぜ、それを映画で明かさないか?
 それは誰も訊ねなかったから。
 仮に訪ねても、全てを明かすとは限らない。
 明かしても、それを信じるとは限らない。

 まさに、浦島太郎現象。
 白髪のお爺さんが、私は18歳なんだ。
 そう本当のことを言ったとして。
 誰も信じず、認識しなければ、浦島太郎です。


 きっと、あのマーティさんですら。
 ドクさんと出会った頃に。

 「実は、君と私はずっと前に会っているんだよ」

 そう言われたとしても。
 ヘビーだね、って返して終わりでしょう。

 ですが、もし……。
 自分と誰かで何かを同じように認識できたとしたら?
 その当たり前のような現象は、奇跡といっても過言ではありません。

 死んだはずのジョン・リードが蘇り。
 ルーザーズクラブへ入会して、ペニーワイズをITに帰した後。
 沈みかかった小舟でポート・ロイヤルに辿り着き、インターセプター号を略奪する。

 それくらいやっても。
 なんの驚きもないほどに。




 今、愚者の私が思うに、過去も未来も認識で。
 自分以外の誰かも認識です。

 マーティさんがドクさんと出会ったのは。
 この映画よりも前かもしれませんが。
 ドクさんが30年待っていたマーティさん。
 二人の秘密の過去、それを認識しているマーティさんはこの映画で生まれました。

 同時にマーティさんのお母さんが語っていた。
 忘れられない魅惑の深海パーティーにいた。
 一生を共にするであろう、魅力的なお父さんもこの映画で生まれました。


 今の私が言う、この映画というのは現在という意味です。
 私の現在がそう認識したんです。
 もちろん、ちょっと昔の私はそう認識できませんでした。

 過去は絶対的なものだと思っていたからです。
 そして、絶対的な過去が正しい歴史をつくっていく。
 そう思っていましたが……。

 過去が未来同様に絶対的ではなく。
 認識によって歪み、変えられるものなら。
 変えてはならない、正しい歴史ってなんだ?

 

 となりました。
 さきほども言いましたが、浦島太郎現象です。
 キャプテン・ジャック・スパロウさんも仰るように。

 ホントの話をしても
 信じないと思ったら言うだろうな


 もちろん、タイムパラドクスが見たい人には。
 それは起こると思います。
 それを認識するからです。

 ただ、それを見たくない人には。
 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ばりの。
 掟破りの浪漫飛行、狙え、いろは坂の覇者!


 やっかいなのは認識です。
 『IT』でベンさんやマイクさんを悩ませたのも。
 『ジュマンジ』でアランさんやサラさんを悩ませたのも。
 もちろん、この映画の登場人物も。

 絶対的に揺るがない唯一の過去ではなくて。
 その時の認識でした。
 ですから、ITが変わってしまったんです。


 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティさんも。

 認識している過去Cから未来Cへ行く現在がある。
 そう思い信じていたら、出来事1が起き。
 過去Bへ行き、未来Yへ戻る現在があった。
 そして、戻ったと思ったその現在は。
 過去Cの続きでありながら、今までは認識できなかった未来Yだった。


 そういう現在があっても不思議ではないんです。
 今までは、変わらない、過去1、過去2、過去3があって。
 現在、何を選ぶかで、未来A、未来B、未来Cへ行ける。
 そう思い信じていたのかもしれませんが。


                 未来A
 過去1→過去2→過去3→ 現在  未来B
                 未来C

 (たぶん、こんな感じの認識でしょうか?)


 過去も未来同様に変わる。
 現在、ITを変えたいと思えば。
 ITが変わった未来と過去、それを現在という特異点が繋げる。

 過去1      未来A
 過去2  現在  未来B 
 過去3      未来C
 (どの順番でも繋がる。過去1、過去3、未来B、過去2……映画『メメント』のように)

 上にある二つ、過去と未来が下の現在で繋がる。

 あるいは、折った紙の2つの点を鉛筆のように繋げる。
 それが現在というワームホール。(画像は『インターステラー』より)



 最後に

 ココまで永く振り回しましたが。
 けっきょく、言えるのは……。

 過去を変えてはならない、タイムパラドクスが起きてしまう。

 それは誰かの認識であって。
 少なくとも私の認識ではありません。

 もし、未来には無限大の可能性があるというのなら。
 好きな過去へ行き、好き放題改変して、楽しめる未来へ行きたい。

 だなんて、我がままなことを認識できた現在。
 きっと、私の相方が抜け出してきた、七つ目の不思議の国。
 そういう、あの世へ遊びに行くくらいわけない、ということです。

 いったい、誰に迷惑がかかるというのですか?
 それが本当だったとしても。
 それを信じない人には……なんの影響もありません。

 もしかしたら、既に。
 好き放題改変された、そういう認識にいるのかもしれません。
 それならば、自分の認識は自分で好き放題改造したいものです。


 ハイホー、ワガママ! ウェーイ!
 我々は今、カントリーロードの上に。

 デロリアンやなんちゃら理論など使わずとも。
 飛べる愚かさで、イカロスに続け!

 ジワタネホはどこだ?
 ジワタネホはどこだ?



 それでは、また次の機会にお会いしましょう。












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