過去も変えられる、『インターステラー』でも過去を変えた


 はーい、テツガク肯定です。

 ネタバレがあります。
 というより、一度『インターステラー』を観た人でないと。
 ついていけない話かもしれません。



 『インターステラー』という映画は。
 今の私にとって不思議なことが、いくつかありますが。
 もっとも、不思議なのは。

 時間について。
 とても面白い考えを見せているのに。
 肝心なところは古典的ということです。



 アメリアさんの台詞です。

 時間は相対的なものよ

 伸びたり
 縮んだりはするけど――

 過去へは戻れない

 ターズさんもこう言います。

 クーパー
 過去を変えるためではない

 過去を変えるために
 呼ばれたのではない

 ターズさん。
 それはユーモアですか?
 ユーモアレベル0でお願いします。
 そう言いたくなります。


 揃いも揃って古典的なことを言いますが。
 この映画は、結果的に過去を変える話です。
 過去を変える映画の登場人物が揃いも揃って……。

 過去は変えられない。

 そう信じているのは……私には不思議でなりません。



 過去を変える。
 そのわかりやすい例が映画の前半にあります。
 クーパーさんが担任と話す場面です。

 この映画では。
 月面着陸は嘘だとなっています。

 担任の先生は言います。

 それは古い版で
 今は改訂版を使ってます

 アポロ計画は捏造で
 ソ連の破産が目的だった

 政府の作戦勝ちです

 ソ連は破綻したわ
 ロケットや――
 ガラクタに金を注いで

 20世紀の贅沢と浪費を
 繰り返さないためにも――

 事実を教えています
 空想物語ではなく

 まるで……いつかの島国みたいです。
 鬼畜米英の言葉はけしからん。

 プレイボールは始め
 ストライクは一本、二本。
 三振はそれまで、アウトは引け。


 何が言いたいかといいますと。
 人は間違いを正すためなら。
 平気で過去を捻じ曲げ、変えるということです。

 人の放った言葉は。
 必ずブーメランになって返ってくる。

 月面着陸がプロパガンダだという。
 この映画での事実も……同じプロパガンダの空想物語。

 ようは、余計なことせず、黙って食料をつくっていろ。
 そういう政府の作戦。
 それに疑問符を感じているのがクーパーさん。



 新しい正しい発見で、古い間違いを塗り潰す。

 一見、なんの疑問符も感じないかもしれませんが。
 それは非常におそろしく、同時に素晴らしいことです。

 何が素晴らしいか。
 それは、過去も未来も。
 唯一の絶対的なものではないということです。
 それは、とても曖昧な無二の認識。

 今、何を選択するかで未来が変わる。
 そう信じていて。
 今、何を選択しても過去は変わらない。
 そう教え説かれた。

 これも考え方の一つですが。
 唯一の事実ではありません。


 私がそれを思い出したのは。
 この国の古い言い回しにあります。

 今は昔、竹取の翁ありけり。
 夢は今、月のわがまま姫、現る。

 この国には今と昔しかありません。
 今の対義語は昔で、昔の対義語は今。
 未来が入る余地がありません。

 今では一般的になった。
 過去未来現在という三つの感覚は。
 わりと最近できた考え方のようです。

 それは、昔の考えが間違っている。
 過去未来現在が正しいのだ。
 という気持ちもわかりますが。

 今、愚者の私は。
 この考え方は不思議なものではないと思います。

 今と昔には、未来がないのではなくて。

 今、この瞬間と。
 今は見えない、その全ては昔。
 前も後ろも関係なく、過去未来も全て昔。
 過未の領域にある、今は選ばれていない夢は全て昔。

 それで今は昔、夢は今、となる。



 映画でワームホールの解説のシーンが面白いです。

 ココからココへ移動したい。
 だが、凄く遠い。

 そこで、ワームホールが。
 2点を繋げる。


 二つの点を描いた紙。
 それを折り曲げ、ペンで貫いて繋ぎます。
 これを時間に当てはめてみると……。

 遠い過去と遠い未来。
 それを貫いて繋ぐ、ワームホールが現在。

 まさに、今、この瞬間は。
 あらゆる場所へ繋がるワームホール。

 記憶を辿れば過去が見れます。
 選んだ過去、選べなかった過去。

 想像を走らせれば未来が見れます。
 選びたい未来、選びたくない未来。

 過去も未来も。
 実は曖昧で何も決まっていない。

 ただ、過去は変わらないと信じるから。
 変わらない気がして。
 未来だけは変えられると教え説かれたから。
 変えられると信じている。



 ココからはネタバレですが。
 この映画の結末を過去の改変と言わないのなら。
 いったい、何が過去の改変なのか、愚者の私にはわかりません。

 クーパーさんいわく。
 未来の人類が不思議な空間をつくり。
 そこへクーパーさんを導いた、橋渡し役として。
 そして、クーパーさんは過去のマーフさんへメッセージを送った。

 未来の人類、現在のクーパーさん、過去のマーフさん。

 わかりやすい過去の改変なら。
 宇宙へ行くはずのクーパーさんを止める事。
 それが、間違えた道の改変のように思えますが。

 クーパーさんを宇宙へ送ることが。
 過去の改変への正しい道順ならば。
 当然、話は変わりません。

 そして、あの不思議な空間。
 ワームホール的な現在から過去へメッセージを送っていた。
 それによって進み出した、過去改変の物語。


 これと似た話があります。
 ドラえもんの映画で、確か大魔境のやつです。

 ピンチに未来からドラえもん達が来て助けてくれる。
 その後、助けられたドラえもん達も、再び助けに行く。
 まるで、合わせ鏡のような話です。
 (といより、ドラえもんの話が過去の改変でした)


 過去と未来は合わせ鏡みたいなもので。
 未来を映す鏡だけが動いて、過去を映す鏡は静止している。
 というのは……あまりに不可思議です。
 ないとは思いませんがね。



 とにかく、今の私からすれば。
 この映画は過去改編の物語です。
 しっかりとガッツリと変えます。

 もし、変える必要のない運命なら。
 なぜ、そこまで回りくどい展開を?
 わざわざ、未来人が干渉する必要が?

 おそらく、変えたい過去だったから。
 変わった未来が現在ってワームホールで繋がってしまった。

 今は昔で、夢は今。

 今、この瞬間は絶対的な特異点ですが。
 同時に曖昧になる夢です。
 まるで違いません、眠っている時に覗く夢同様に。

 伸びて、縮んで、歪む。
 忘れ、気づき、思い出す。
 そして、何れ、さめる。


 ですから、私はこう言うんです。

 今、目の前にのさばる、その全ては。
 ほんの少し昔は幽かなITって夢だった。
 そのITが今ではペニーワイズのように確かに感じるのなら。

 どんなに信じ難いITも。
 ペニーワイズになる。

 ならば、忌々しいピエロより。
 愛しのジョーカーを第七区から呼び出そう。

 ハイホー、ワガママ! ウェーイ!

 我々は今、カントリーロードの上に。
 夢のジワタネホはどこだ?
 夢のジワタネホはどこだ?

 こんなグリーンマイルなんか忘れてしまえインテグラ。

 信じて愚かに忘れるか、信じて賢く諦めるか。

 5ヤードラインの攻防を制するのは。
 Dボーイズじゃなくて、テキサス・レンジャーだ!
 セオドア・ドチャンプ軍曹に続け!

 8キロ行って、8キロ戻ってくる間。
 我々はこの橋を渡り、向こう側で。
 セオドア・ドチャンプ元帥と。
 物思いにふけりながらポーカー大会だ!
 (ポーカーのルールは知りませんが)




 

 それでは、また次の機会にお会いしましょう。











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