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#おすすめ名作映画

映画「岸辺の旅」 自殺したゴーストはかく語りき

映画「岸辺の旅」 自殺したゴーストはかく語りき

「ドレミファ娘の血は騒ぐ」以来の黒沢清監督の作品鑑賞。

失踪した夫が、普通の人間のようなゴーストになって戻ってきた。そして、失踪していた3年間の軌跡を夫婦一緒にたどる。待ち受けていたものは…。

拠り所を失って虚ろに生きている妻(ミズキ)を演じる深津絵里がとても良い。この妻の目線から映画は展開していく。この世から逃げ出した夫(ユウスケ)を演じる浅野忠信も良い。ふたりともずっとエネルギーが薄い。裸

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映画『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』 特に予定のない日曜の午後におすすめ

映画『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』 特に予定のない日曜の午後におすすめ

「10年ひと昔」というのだから、40年という歳月は随分と社会のルールや世相を変えてしまう。しかしながら、表面的な変化があっても、その深いところではあまり変わってないのではないか?とも思う。

『最悪のことを思いながら、最善のことを祈る』というのが、主人公アレックスのモットー。共感できる生き方。

その彼が家を売る決意をしてから数日間で忘れていたものに気づくという物語。

モーガン・フリーマンとダイ

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映画『未来世紀ブラジル』 私の中に潜むブラジル

映画『未来世紀ブラジル』 私の中に潜むブラジル

学生時代にT先輩と一緒に見た映画。なかなか才気がある人で遊びでイラストを描いたりドラマの脚本を書いたりしてた。三つほど年上だったが、良く飲んで喋った。ビデオの機材を借りて、馬鹿げたドラマを一緒に作ったのも懐かしい思い出。タイトルは『マニラ二号』。如何わしさが満載だわ。彼の影響でモンティ・パイソンも観るようになって、ナンセンスなユーモアに笑い転げていた。

思えば、我々の若かりし頃は全共闘のような熱

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映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

初回は、映画館で、二度目はアマプラで、今回もアマプラで鑑賞。

昨年はこの時期、戦争映画特集を自分でピックして観ていた。『野火』『キャタピラー』『ダンケルク』『硫黄島からの手紙』『プライベート・ライアン』『フルメタルジャケット』『ハクソー・リッジ』
どの映画でも、人びとが軽々と踏みにじられる様が描かれている。私は僥倖にもそのような現場に遭遇せずに生きてきた。最近は何故か、以前よりも映画であるとわか

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映画『ビッグフィッシュ』 物語は、人に永遠の生命を与える

映画『ビッグフィッシュ』 物語は、人に永遠の生命を与える

近所のGEOを時々覗いては、DVDのセル品を5枚1000円で購入している。昔見てもう一度見たいと思うものと見逃していたものを漁るのが楽しみ。

今回の掘り出し物は、ティム・バートン監督の『ビッグフィッシュ』

映画好きには、今さらな20年前の作品だけれど。私にとっては、初見。見逃さずに良かった。

生きれば生きるほど、現実の過酷さや全ての人に平等に優しいわけではない世界の現実に晒され、誰しもが少し

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映画「さざなみ」 人の心はやわらかくて壊れやすい。すべてを正直に話さなくても…。

映画「さざなみ」 人の心はやわらかくて壊れやすい。すべてを正直に話さなくても…。

『さざなみ』塩辛い映画だった。

人生の晩秋を迎えて、45年も寄り添ってくれた妻に全てをさらけ出さずとも良いのになあ。きっと話さないほうが良いこともあるのだろう。

ジェフよ、いくら愛する妻とはいえ、相手の全てを知ることは不可能だし、自分のすべてを同じように理解してもらうことは不可能に決まってるじゃあないか。

人は何らかの秘密を抱えて生きていくもの。そんな話は墓場まで持っていってくれ。

長年連

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映画『オペラ座の怪人』 彷徨える愛の行方

映画『オペラ座の怪人』 彷徨える愛の行方

『オペラ座の怪人』 4Kデジタルリマスター

目黒シネマで見て以来の鑑賞。確か、レ・ミゼラブルとの二本立て興行だった。それは贅沢なラインナップでしたわ。今回は109プレミアム新宿体験も兼ねてなので、またまた贅沢。

この物語に没入するために、精霊物語を補助線として置いておこ。

眠り猫さんのnoteで、いつも勉強させてもらっていたので、エロースとアガペーの違いというところに着眼しながら二度目の鑑賞

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映画『別れる決心』 ヘジュン、青と緑は似て非なるものだろ

映画『別れる決心』 ヘジュン、青と緑は似て非なるものだろ

恋は美しき誤解に始まり、悲しき理解に終わる。惨憺な状況に置かれても理解できないままに取り残されるヘジュン。

目を覚ませ! 緑は緑、青は青だろ。

直観で始まった恋は、言葉に輪郭を与えられると、砂でつくった山のように儚く、波にさらわれて跡形もなくなってしまう。

言葉には、いつも複数の意味が隠れていることを知っていたはずなのに…。

真実はひとつしかない、目を凝らせば、自分はその真実を掴める人間な

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映画『ジョーカー』 痛切なルサンチマン

映画『ジョーカー』 痛切なルサンチマン

meronagiさんの記事を読んだら、思いだした『ジョーカー』の続編が10月公開らしい。

meronagiさんは、eponaさんの記事から刺激を受けて書いてる。インスパイアの連鎖でマトリョーシカのようにしてしまったけれど、駄目なら言ってね。

『ジョーカー』2019年公開

映画ジョーカーの舞台は1981年のゴッサムシティ。つまり過去の出来事。『バットマン』製作者の意図としては、ゴッサムシティは

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映画『桐島、部活やめるってよ』見た 映画って時間が経つと刺さり方が変わるよね

映画『桐島、部活やめるってよ』見た 映画って時間が経つと刺さり方が変わるよね

『桐島、部活やめるってよ』を久しぶりに見た。一度目は、目黒シネマで見ているので二度目。

一度目は、最後まで桐島が出てこないという仕掛けに、テーマを忍びこませる凄技に唸らされたのを覚えていたけれど、そこまでは刺さらなかった。青春時代の人間模様を掬ったストーリーは好みの物語だけれど…。私自身は、いわゆるスクールカーストみたいなものを意識しないで生きてきた世代だからか、登場人物にあまりリアルを感じなか

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映画『生きる LIVING』を思い出したら、おひさまが優しく輝いた

映画『生きる LIVING』を思い出したら、おひさまが優しく輝いた

meronagiさんの記事を読んで、カズオ・イシグロが脚本を書いた『生きる LIVING』を思い出した。見たのは2年前。

生きる LIVING
   2022年 ‧ ドラマ ‧ 1時間 42分

その時の文章がこちら↓

そこそこの齢になり自分に残された時間を濃く深く生きるには?そんなことを考えさせられた。

誰もが思いつきそうだが、今一度これまでの人生を振り返り、やり残したことを整理し、残さ

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映画『怪物』ー普通ってなんだよー

映画『怪物』ー普通ってなんだよー

「普通ってなんだよ」と言う歌を思い出した。最近のロックは大人しい。優しい言葉で、柔らかい音で、世界の片隅に追いやられた人たちの気持ちを包もうとしている。

私のいつも出会う人たちは、自分の殻に閉じこもるか、わからないように隠れるか、逃げるかしている人が多い。多くの人の目に触れることを好まない人も多い。

そんな彼、彼女らは昔のロックのように、今ある世界に対してNOを突きつけ、戦いの狼煙を上げる音楽

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『男と女 人生最良の日々』

『男と女 人生最良の日々』

『男と女 人生最良の日々』2019年公開

「最良の日々は、この先の人生に訪れる」というビクトル・ユーゴーの名言からとったタイトルが素敵。

あの「男と女」から53年後。しかも主演のお二人の体調を考えて撮影が10日間だったとは驚き。

ルイ曰く「死は納めなければならない税金だ」
アンヌは「ひとりでいると死ぬのが怖くなる。二人でいると相手が死ぬのが怖くなる」と語る。

自然な流れで、洒落ていて味わい

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『市民ケーン』から『タクシー運転手 約束の海を超えて』

『市民ケーン』から『タクシー運転手 約束の海を超えて』

オーソン・ウェルズは、私の世代ではニッカウヰスキーのCMに出ていたヒゲのオジサマ。

その監督デビュー作『市民ケーン』は、新聞王であったケーンが最期に残した言葉「バラのつぼみ」の意味を解き明かそう、と彼の生涯を回想形式で辿る形で物語は展開します。

言うまでもないほどの名作。

「バラのつぼみ」の意味については様々な解釈があるようですが、わたくしが思い出すのは、ソフィアで受けたハビエル・ガラルダ神

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