見出し画像

シン映画日記『幻滅』

ヒューマントラストシネマ有楽町にてフランス映画『幻滅』を見てきた。

フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの小説「幻滅」を映画化したヒューマンドラマ。
バルザック原作とかいうと如何にも堅物好みの文芸・歴史作品かなと思いながらも、『バリー・リンドン』や『女王陛下のお気に入り』みたいな雰囲気も予告編から感じたので見てみたら、言わばフランスのジャーナリスト版の『バリー・リンドン』で、ジャーナリストが主人公の映画や成り上がり劇が好きならわりと楽しめた。

詩人のリュシアンは不倫相手の人妻ルイーズと一緒に駆け落ちして、ルイーズのツテで社交界に顔を出すが馴染めずにしめ出される。その際、サロンで知り合った小説家ナタンの紹介でリュシアンは出版社でジャーナリストとなり、名を馳せるようになる。

要するに貴族にコネがある不倫相手と一緒に社交界デビューをしようとしたが失敗して、ジャーナリストとして成り上がることで貴族らの世界にまた飛び込もうとするリュシアンの物語。

この社交界のルイーズやそのいとこの公爵夫人らのヒエラルキーが絶妙で、リュシアンがジャーナリストとして成り上がって再び乗り込むと立場が微妙に変わる。その心理戦が面白い。

一番は田舎の純朴な青年が後ろ盾なしにパリでジャーナリストとして成功することで名声を得る成り上がりストーリーだが、成り上がるとパーティーやら悪い遊びなどで堕落するのが世の常で、その成り上がりと堕落・没落の曲線が『バリー・リンドン』に近い。

また、新聞社の編集部にサルやアヒルを放つアナーキーさや、パーティーでの騒ぎぶりに『女王陛下のお気に入り』と被るものがあり、これらの作品が好きだとより楽しめる。

後半の爪の甘さとあっさりしたラストが若干残念だが、フランス革命後のフランス、ヨーロッパに興味がある人ならかなり楽しめるかな。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?