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技術史

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物作りの歴史・様々な身の回りの製品の歴史を簡潔に紹介します。
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2023年9月の記事一覧

宇宙から資源を得ることは可能か!?

宇宙から資源を得ることは可能か!?

2020年12月6日、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから内部のサンプルを持ち帰ってきました。サンプルからは水や有機物が確認されており、宇宙資源開発の幕開けと言えるかもしれません。ゆくゆくは他の小惑星にも進出し、地球では採取しにくいレアメタルなどが採取される可能性もあります。
また、宇宙での活動の際、月や小惑星にある資源をそのまま“地産地消”で使ってしまおうという計画も進んでいます。例

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【技術史】星形要塞

【技術史】星形要塞

1400年代の終わりから、大砲が高性能になり、鉄の重い球が発射できるようになると、高い城壁と天守閣をもつ城は外壁からすぐに破砕されるようになりました。そこで、まずイタリアで星形要塞が登場しました。この要塞は、多角形の角に配置された大砲や、死角なく小銃を撃てるように、高度な幾何学を用いた数学的に設計されていました。
イタリアで始まった、稜堡(りょうほ)という形式の城は瞬く間にヨーロッパに広がり、数学

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【技術史】塩は歴史を変えた物質

【技術史】塩は歴史を変えた物質

塩の密売商人が引き起こして唐を消滅させた黄巣の乱、フランスの塩税への不満が爆発したフランス革命など、塩は歴史を変えた物質です。
塩がいかに重要だったかは、身の回りのたくさんの言葉が塩に由来することからもわかります。サラリーマンという和製英語のもとになった「サラリー」は、ラテン語の「サラリウム」(塩を買うための銀貨)という意味に由来します。サラダ、サラミもみな「サール」(塩)からきた言葉です。
なぜ

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【技術史】ジュラルミンの発明

【技術史】ジュラルミンの発明

ドイツのアルフレート・ヴィルムは、陸軍省の依頼で薬莢(やっきょう)に使われている黄銅を軽量なアルミニウムに置き換えられないかと考え、アルミニウムの合金の研究をしていました。
アルミニウムは、一円硬貨やアルミホイルでおなじみで軽さが売りですが、強度がそれほど大きくないため、構造材料には向かないのです。強度を上げることができれば、軽い金属素材のメリットが全開になります。
1906年のある土曜日、ヴィル

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【技術史】魔法瓶の発明

【技術史】魔法瓶の発明

酷暑が続く昨今の夏、スポーツや登山、キャンプなどで魔法瓶に入った冷たい飲み物に感動する人は多いのではないでしょうか。
1892年、イギリスの科学者ジェームズ・デュワーは、現代の魔法瓶と同じ原理の保存容器を発明しました。デュワーの発明した魔法瓶は、2つのガラス容器のあいだを真空にすることで熱が伝わらないようにして(気体がないと熱は伝わりにくい)さらにガラスの表面に銀メッキを施して、熱を逃しにくくした

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【技術史】空気タイヤの発明

【技術史】空気タイヤの発明

現代の自動車社会を支えるのはゴムタイヤです。F1グランプリやGT選手権など、モータースポーツでは車以上にタイヤの性能が勝敗を左右する大きな要因です。現代のゴムタイヤの元になる空気入りタイヤの発明をしたのは、なんとアイルランドで獣医をしていたジョン・ボイド・ダンロップです。
ある日、ダンロップは10歳になる息子が、自転車レースで優勝したいといって練習しているとき、木の車輪にゴムの棒をつけただけの車輪

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【技術史】フランスワインの救世主

【技術史】フランスワインの救世主

今も栄華を極めているフランスのワインですが、1860年代にアメリカから輸入したブドウの苗木に付着して、フィロキセラという害虫が大量に入ってきました。
これが瞬く間に蔓延し、耐性のないヨーロッパ中のブドウをほぼ壊滅しました。ワイン文化が途絶えて、ブドウ畑も羊の放牧に転換せざるを得ない状況に追い込まれたのです。
フランス政府は、懸賞金をかけて解決策を求めました。このようななか、まずアメリカ産の害虫に耐

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【技術史】象牙にかわる素材開発

【技術史】象牙にかわる素材開発

南北戦争でアメリカに多数の戦争成金が生み出されると、富裕層の家庭ではビリヤード台を置くことがはやりました。ビリヤードの球には象牙が使われていたので、象が乱獲されて供給が不安定になってきます。
そこで、先行きに不安を感じたアメリカのビリヤードメーカーが、「象牙にかわる安価な素材をみつけたら賞金1万ドル!」と懸賞を出したところ、懸賞金目当ての開発競争が起こりました。
最終的にこの懸賞金を手にしたのは、

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【技術史】鉄筋コンクリート

【技術史】鉄筋コンクリート

コンクリートは圧縮には強いのですが、引っ張られるとやがて破断します。また、鉄は圧縮されると曲がってしまいますが、引っ張りには強い性質があります。この両者を結びつけた最強の建築材料が鉄筋コンクリートです。
このような、それぞれの利点を生かして、欠点を補うような材料の組み合わせからつくる素材を複合材料といいます。
鉄筋コンクリートを発明した人は何人もいますが、実用化という点で最初の仕事を成し遂げたのは

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【技術史】無菌外科手術

【技術史】無菌外科手術

19世紀まで、手術の現場はひさんなものでした。暗く、汚く、空気も淀んだ病院で、前の患者が亡くなってもベッドのシーツはそのままです。小さな傷がもとで運悪く感染症になった患者は、腐ってきた手や脚を外科手術で切断する以外、なす術もありませんでした。
当時は、外科手術それ自体の細菌感染がもとで、40%近くの人が亡くなっていました。
こういった状況から近代の医療を生み出したのが、イギリスの外科医ジョセフ・リ

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【技術史】食糧不足から生まれた自転車

【技術史】食糧不足から生まれた自転車

1810年ごろ、ヨーロッパの気候は小氷期といわれ、寒冷化により農業が打撃を受けました。牧草は育たず、家畜も大きな影響を受けました。さらに、1815年、最大規模の火山の噴火がインドネシアのタンボラ山でおこり、寒冷化に拍車がかかります。
この寒冷化にともなう影響で馬ですら餓死があいつぎ、移動手段としての馬の不足を懸念したドイツのカール・フォン・ドライス伯爵は、馬のかわりに移動する二輪車、「ドライジーネ

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【技術史】不老不死の薬から火薬を発見

【技術史】不老不死の薬から火薬を発見

夏の夜をいろどる花火大会にワクワクした経験はあるだろうか。花火に使われている火薬は1200年以上の歴史がある。
中国の秦の始皇帝は、不老長寿の薬をつくらせるために、薬草や鉱物などさまざまな物質の組み合わせが試みられました。その中で、木炭・硫黄・硝石の黒色の混ぜ物に偶然、火がつきました。すると、この混ぜ物が火を噴き、大きな音とともに爆発しました。
850年ごろに書かれた道教の経典には、「硫黄、硫化ヒ

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