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コンプレックスが私を殺しにかかる

ずっと順調な生活を送っていた。 


4月からは大学にも通えて、
友達も普通に出来て、成績も上位で、
アルバイト先も恵まれた職場だった。


急変したのは秋頃だった。


丁度その頃は来年に向けた就職活動を
どう乗り切るか?という話で校内は賑わっていた。


その一環で、外部から
メイクアップ講師をお招きしたのだが
そこから私の人生は変わってしまった。

 

元々、私は容姿に自信があるタイプでは無く
小中高では容姿が原因で常にいじめを受けていた。


そんな私に相反して
その講義はマスクを外しての受講が求められた。


この1つの事が私の中ではとても苦痛で
その日は無断欠席をすることにした。 


家に籠るとバレるので、 
近くのスーパーに足を運んでみた。


大学に入ってからというもの、
垢抜けを出来る限り頑張っていた。


『ひょっとしたら、
自分の容姿は悩む程じゃないかも。』


そんな事を不意に思い、
時間潰しと肯定の証拠を集めに
証明写真機に立ち寄ることにした。


顔がコンプレックスの私は
自撮りという行為自体、年に1回ある程度。


意を決して、1000円を片手に
写真撮影を始めた。


数分過ぎ、無事写真がプリントされた。


先程の期待とは打って変わり映し出されていたのは
左右の歪みと面長で顔が間延びした
自分の顔が写し出されていた。


愕然とした。 


あれだけ、飲食物や日焼け止め、
顔痩せなどに気を使っても 
周りの人から見える姿はこの顔だったんだ。



恥ずかしいな。



1人、見慣れた顔が並んである紙切れを握り締め
羞恥心と悲しさで動けなくなった。


帰宅後、ネットサーフィンに走る。

 

どうやら、
他人の目に映る姿は写真が1番近いらしい。


そこから狂ったように検証が開始された。


鏡を2枚垂直に当て顔を見ては、
ミラー機能を外して自撮りをしたり、
何度も自分の顔を見直した。


いくら撮っても自分が思い描いていた
少し変化した自分にはたどり着けない。  


なんなら、
『前より酷くなってない…?』


そんな風に思った。



どうしよう。
こんなんじゃ、外に出れない。 



皆にこの醜態を晒すなんて、
恥ずかしい。 


そんな容姿に対しての恐怖心から
学校に行けない日が増えてしまった。


マスクの影響があるのは分かってた。


でも、自分以外の全員が可愛くてキレイで美しくて
かっこよくて、イケメンに見えてしまって。


酷いのは自分だけなんだなって
変な焦りが生まれてきた。



刻一刻と不登校の日々は増えていく。 



私には学校に推しがいたので、
『その人を見る為に学校に行こう。 』と
心を入れ替えようとした。


理由なんていう都合のいい言葉はどうでも良くて
とにかく元に戻らなきゃって思った。


でも、その決意もつかの間だった。



学校に行って人に話しかけられた瞬間、
私は恐怖で涙目になり壁の方に逃げ、顔を逸らしてしまった。




怖い怖い怖い。



 


嫌だ、見ないで。





 

早く、早く逃げなきゃ。






1人の世界に行きたい。




そんな事を考えていた。 


  

────
 


悪夢のような日が続き、
ようやく回復の兆しが現れた。  


しかし、今度は髪の毛やメイクが上手く行かないと
なかなか外に出れなくなった。 


少しでも『今日は盛れない』と思うと
ずっと鏡の前でストレートアイロンや
メイク道具を何度も何度も使う。


通学路は遠くて、
家から1時間かかる所にある。  

 

そんな所にあるから反芻思考になると
残り20分で学校に到着なんて事が多くなった。



「担任の先生も心配してたよ」って友達から聞いた。



それもそのはず。

  


だって、ずっと皆勤賞だったんだもん。
急にどうしたんだ?ってなるよね。 



もう、このまま死のうかなって思った。 



死んだら自分の容姿に悩むことも無いし
膨大な整形費用も稼がなくていい。



私の悩みは沢山あるけど
とりあえず、容姿が良くないから死にたい。



そんな事を繰り返し考えるようになった。



昔の方が容姿も酷かったのに
昔の方が自分らしくって
とても楽しく生きていた。



こんな可笑しい話、
普通じゃありえないって分かってる。



でも悩みの衝動に抗えなくて
何時間も鏡で自分の姿を確認しては悲しくなっている。 


マスク1個買うのだって、
店員さんに会うことが怖くて、神経をすり減らして、しんどくなっている。


本当の私は明るい子。


だったはずなのに、近頃は落ち込む回数が 
劇的に増えてる気がする。



素の自分に戻りたい。








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