マガジンのカバー画像

本とのつきあい

196
本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
運営しているクリエイター

2023年2月の記事一覧

『タカシ 大丈夫な猫』(苅谷夏子・岩波書店)

『タカシ 大丈夫な猫』(苅谷夏子・岩波書店)

これが岩波書店からの本だということで、まず驚いた。著者が、岩波書店に縁のある人だと後から気づき、それなりの納得はしたのだが、表紙がハチワレ猫のどアップだというのは、岩波らしくない。
 
二本足で走る、などと文字にしても、人間は毎日やってるよ、と言われるかもしれない。インパクトはない。だが、この主役タカシは、猫である。「出会わなければよかったのに。」ケイコさんは、事故に遭ったらしい子猫を拾う。獣医に

もっとみる
『希望のつくり方』(玄田有史・岩波新書)

『希望のつくり方』(玄田有史・岩波新書)

とにかく一冊、「希望」という言葉だけを綴っている。それは、文学者の思いつきではなく、ライフワークとして「希望学」を打ち立てて、地道なフィールドワークも行っている人だ。これは新書とはいえ、ここまでの集大成の観がある。
 
そのために、実例や体験を含め、丁寧に書かれている。最後のまとめは、本書の何頁にこれがあった、と挙げ、またそこを見ることがしやすいように配慮してあった。
 
どうにも閉塞感に包まれて

もっとみる
信仰とは何か

信仰とは何か

『証し 日本のキリスト者』(最相葉月・KADOKAWA)に、多くの牧師や信仰者が気づき始めた。これはもっと読まれて然るべきだと思う。否、キリスト者は読まねばならない、と言った方がいい。
 
私は本をご紹介するとき、全部読み終わっていない本を取り上げることはない。だが今回、それをある意味で裏切ることをする。何しろ1000頁を超える本である。ちまちましか読まない私が読み終わるのはいつになるか分からない

もっとみる
『聖書を読むたのしみ』(斎藤和明編・並木浩一・古屋安雄・光村教育図書)

『聖書を読むたのしみ』(斎藤和明編・並木浩一・古屋安雄・光村教育図書)

ICU選書だという。ICUとは、国際基督教大学の略称で、いわゆるリベラル・アーツ(人間を良い意味で束縛から解放するための知識や、生きるための力を身につけるための手法――桜美林大学による説明)をモットーとする大学である。専門分野を越えた形での学問を目指しているという。大学創立50周年を迎えるにあたり、1999年にこの選書が誕生したのだという。その後続刊は殆どないようなので、もったいないと思えるほどに

もっとみる
『畠中尚志全文集』(畠中尚志・講談社学術文庫)

『畠中尚志全文集』(畠中尚志・講談社学術文庫)

岩波文庫でスピノザの本を翻訳していることは知っていた。だが、こんな人生であった方だということは、知らなかった。感動しかない。
 
國分功一郎氏が、最近スピノザについて本を立て続けに書いている。それを味わう中で、この畠中氏のことにも触れることがあった。そして、近々畠中氏の文章を1冊にする、というような話を聞いていたので、予約注文していたのだ。
 
詳しくは本書をぜひご覧戴きたいので、ここに出してしま

もっとみる