マガジンのカバー画像

本とのつきあい

196
本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
運営しているクリエイター

2022年12月の記事一覧

『教養としてのラテン語の授業』(ハン・ドンイル・本村凌二監訳・岡崎暢子訳・ダイヤモンド社)

『教養としてのラテン語の授業』(ハン・ドンイル・本村凌二監訳・岡崎暢子訳・ダイヤモンド社)

これは凄い本である。そして、タイトルを裏切る素晴らしさに満ちている。ラテン語を教えてくれる本ではないのである。だが、信仰と愛に溢れているため、キリスト者はぜひ読んで戴きたいと願う本である。
 
さらに、大学に入学した若者の、助けとなること必定という本である。
 
ダイヤモンド社という、ビジネス畑の出版社からの発行であるだけに、宣伝がうまい。著者のハン・ドンイル氏の肩書きに「バチカン裁判所・弁護士」

もっとみる
『「神様」のいる家で育ちました』(菊池真理子・文藝春秋)

『「神様」のいる家で育ちました』(菊池真理子・文藝春秋)

2022年の流行語とすらなった「宗教2世」であるが、本書はサブタイトルに「宗教2世な私たち」という形で、その実態を訴えることとなった。この言葉が世間に知れ渡ったのは、2022年7月の、安倍元首相の殺害事件を通してである。その容疑者の身の上を表す言葉として、それが浮かび上がった。
 
本書は、その前に書き上げられている模様。だから、決して「ブーム」に乗って売ろうとしているわけではない。尤も、本来集英

もっとみる
『使徒信条 光の武具を身に着けて』(平野克己・日本キリスト教団出版局)

『使徒信条 光の武具を身に着けて』(平野克己・日本キリスト教団出版局)

私の知識としては定かではないが、使徒信条は、福音書が書かれて百年ほど経ったころに、教会でこうしたものが用いられていたのだと聞く。恐らく、キリストの名を以て我こそイエスの弟子なり、と主張するグループが複数現れたが、それは今の私たちに続く教会とは異質のものであった故に、そうした思想から一線を引くために、信仰のエッセンスを何らかの形で定める必要があったものと思われる。
 
だからそれは、教会の伝統の中の

もっとみる
朝ごとに夕ごとに

朝ごとに夕ごとに

スポルジョン、あるいはスパージョンとも表記されるが、19世紀イギリスに偉大な説教者がいた。その説教は、語られる毎にイギリス各地へ印刷され、届けられた。旧約聖書の「幕屋」の名をもつ教会には、何千人といつも詰め寄っていたという。
 
すでにこの人のことは何度かご紹介しているので繰り返しはできるだけ避けるが、やはり、その才能たるやただものではなく、十代にして人々を感動させる説教を語っていたというから、驚

もっとみる
『中村哲物語』(松島恵利子・汐文社)

『中村哲物語』(松島恵利子・汐文社)

日本人の多くは、2019年12月に銃撃され亡くなった事故の報道で、初めて知った名前ではないだろうか。
 
福岡の人である。福岡高校から九州大学というのは、地元での一つの理想のコースである。クリスチャンであり、福岡が事実上の本拠地である教団の関係者でもあったことから、福岡の教会にいると、哲さんのために祈るということは、普通に呼びかけられていた。ペシャワール会の声もよく届いていたし、アフガニスタンでど

もっとみる
100分de名著・中井久夫スペシャル

100分de名著・中井久夫スペシャル

100分de名著もずいぶんと多くの本を紹介してきた。功績は大きいと思う。2022年12月、取り上げられたのは「こころの医師」中井久夫先生である。一冊の本ではなく、4週にわたり5冊(最後の週は関連する2冊を扱う)の著書を読み解いてゆく。
 
2022年8月、中井久夫先生が亡くなったとの知らせは、多くの人にショックを与えたと思われる。年齢を重ねていたとはいえ、どれほど多くの人の苦しみを解くのに貢献して

もっとみる