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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2021年4月の記事一覧

『寂聴 般若心経 生きるとは』(瀬戸内寂聴・中公文庫)

『寂聴 般若心経 生きるとは』(瀬戸内寂聴・中公文庫)

30年も前にベストセラーだったそうで、私も鈍い。やっと手にして読んだ。般若心経については何冊か解説書を開いたことがあるが、これがいちばん親しみがもてたし、分かった感覚がした。
 
最近は、寂聴さんについても知らない若い人が増えてきたと思うが、その説明はここでは割愛する。女性である。小説家である。いろいろあって、出家して僧となった。作家活動も続けており、本は非常によく読まれている。その寂聴さんの語る

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ユダヤ教の祝祭 (ジュダイカ・コレクション)

ユダヤ教の祝祭 (ジュダイカ・コレクション)

西南学院大学博物館企画展が2021年4月17日から始まる。ユダヤ教の祭具をはじめとした様々な物(ジュダイカ)の展示会である。聖書考古学が専門だった関屋定夫名誉教授が研究し、また集めたものが多々ある中で、今回は祭具関係を展示することとなったという。
 
そのための研究叢書として、本書が発行された。一種の目録であるが、必ずしも今回の展示と一致しているわけではないという。つまり、本書はただの目録のために

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そのボールペンがないと困る

そのボールペンがないと困る

本にはマーカーを入れる。以前は黄色い帯のインクだったが、ここのところボールペンにしている。黄色い蛍光色だ。これでサイドにラインを入れる。けばけばしくなくてよいし、ちゃんと目立つ。愛用の蛍光色ボールペンがあり、これが近くでは案外手に入らない。
 
一年前、このボールペンのことでひどく困った。新型コロナウイルスの感染拡大の中、初の緊急事態宣言が出され、それを売っていた大型書店が閉まったのだ。確かに私は

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『ボクはこんなふうにして恵みを知った』(河村従彦・いのちのことば社)

『ボクはこんなふうにして恵みを知った』(河村従彦・いのちのことば社)

コロナ禍の2020年秋、感染拡大が穏やかになったころ、久しぶりに映画館に出向いた。妻が観たいと言った「星の子」である。芦田愛菜が久しぶりに実写映画に出演したという話題性もあったが、そのテーマが大変気になった。
 
それは、赤ん坊だったちひろの病気が治った、いのちの水に関する新興宗教にのめりこんだ親のもとで、中学三年生となったちひろが、その宗教信仰に引っかかりをもつという物語である。しかしいわばそれ

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『人口減少時代の宗教の危機と対応』(勝本正實/いのちのことば社)

『人口減少時代の宗教の危機と対応』(勝本正實/いのちのことば社)

教会関係者の誰もが心に懐きながら、口に出すことをためらうことを、言ってくれたものだと感心する。私もどちらかというと、この側面を正面から論じるべきだと考えている。そう、教会の未来は暗い。閉塞感という言葉で打ち出した本もあったが、それどころの話ではない。閉塞ならばまだ存続する。だが消滅するとなると、話が大きく変わってくる。

ユニークな著者である。キリスト教の牧師相当の方であるが、仏教を深く学んでいる

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