マガジンのカバー画像

◎ショート・ストーリー

6
ショート・ショートも含む。無意識ですが、恋のお話が多めです。
運営しているクリエイター

記事一覧

【ショート・ショート】寝ている時が一番可愛いよ。

【ショート・ショート】寝ている時が一番可愛いよ。

夜。
私はお風呂が長い。
いくら多忙でも、これだれは譲れないのである。
お風呂から上がると、夫が炬燵で寝てた。
まだ21時。いつもなら麻雀ゲームをやっている時間なのに。
お疲れなのだろう、家事をするにあたり発する生活音にもびくともしない。
がごーがごーのいびきではなく、すーすーの寝息なので、何故かなんだか、優しい気持ちになった。

一応、隣の寝室に布団を敷いてやる。
でも私も炬燵で寝る気持ち良さを

もっとみる
【ショート・ストーリー】夏目漱石の花束

【ショート・ストーリー】夏目漱石の花束

ブログの更新通知がぴろんと鳴る。
推しが、結婚したそうだ。

例えばアニメのキャラクター、
アイドル、俳優、モデル、声優、最近だとバーチャルYouTuber、等々。
推しの形はいろいろだが、わたしの場合、推しは「バンドマン」だった。
そして推しの事が好きだった。恋愛的に。
そう、ガチ恋というやつだ。

小さなライブハウスで活動するバンドの中でも六弦を弾いていた推しには、特に強くスポットライトが当た

もっとみる
【ショート・ストーリー】かわいいかわいい僕の×××

【ショート・ストーリー】かわいいかわいい僕の×××

そろそろ僕の家にもお迎えしよう。

そう思ったのは、単純に我が家にもそいつが、当たり前のようにいたからだ。
当時実家住まいで、母が突然お迎えし、黙って貰ってきたので家族内で一悶着はあったものの、結果的に充実な生活を送っていたのを思い出した。

就職を機に、初めての一人暮らし。
物に執着しないので、越してきたばかりはがらんどうだった1DKも、家電や家具がぼちぼち揃ってきたそんな頃。
私も所謂ペット、

もっとみる
【ショート・ストーリー】頭から離れない

【ショート・ストーリー】頭から離れない

1

私達は付き合っている。
錆びれた田舎のカフェ。大体、二十時閉店。
そこから閉め作業をして、二人で帰る。
カフェを出て左に出ると、すぐ丁字路に当たる。
左にに進むとすぐに彼の家がある。
カフェのバイトも、近所だからここにしたらしい。
一方私は右に曲がり、橋を越える。冬の橋は、強風過ぎて耳が千切れそうになる。
いつからだろうか、彼は当然のように私と一緒に右へ曲がり、当然のように私の自転車を押して

もっとみる
【ショート・ストーリー】朝のごはん

【ショート・ストーリー】朝のごはん

先ほど仕事へと見送った同居人が、腹筋ローラーを持ってきた。
と思ったら、どでかいパンだった。
アパートから近くの職場から焼き立てをもらってきたらしい。
袋の上からでもメープルが香るパン、いかつい顔の同居人が持ってきたパンにしてはメルヘンすぎて面白い。
腹筋ローラーの放つメープルの匂いは、ぼんやりしたわたしの頭を強めに刺激した。
酔ってしまいそうだけど、すっごくいい匂い。
まだほんのり温かいから、こ

もっとみる
【ショート・ストーリー】世界で一番つまらない

【ショート・ストーリー】世界で一番つまらない

朝、嫁を起こす。
と言ってももう昼だが。

嫁はすごい。自力で起きることがほぼない。
目覚まし時計の音も聞こえない日もあるという。いつもは私が先に家を出るのでわからないが、休日の爆睡加減を見ると、まあ納得だ。
たまに、生きているのか確認することもある。
私は三十も半ばなので、そろそろ「寝るのにも体力がいる」ということを実感している。目が覚めてしまうのだ。ついついトイレに立ってしまう。
嫁も先日三十

もっとみる