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【ショート・ストーリー】かわいいかわいい僕の×××


そろそろ僕の家にもお迎えしよう。

そう思ったのは、単純に我が家にもそいつが、当たり前のようにいたからだ。
当時実家住まいで、母が突然お迎えし、黙って貰ってきたので家族内で一悶着はあったものの、結果的に充実な生活を送っていたのを思い出した。

就職を機に、初めての一人暮らし。
物に執着しないので、越してきたばかりはがらんどうだった1DKも、家電や家具がぼちぼち揃ってきたそんな頃。
私も所謂ペット、いや、パートナーだ、なんなら同居人だ。
パートナーが欲しい、僕の同居人は何処、と毎日毎日実家のあの子のことを考えていた。
(恋人でもいたら違うんだろうな、とかいう野次はいらない。)
譲り物の実家の子は、コストこそあまり掛からなかったが、割と早くに病気が発覚してしまったので、パートナーに長く健康でいて欲しい僕は、お店で購入したいと決めていた。
値は張っても、命より大切なものなど無い。
僕と共に人生を歩んでくれる子がいいに決まっているのだから。
そういえばヒカキンさんがペットショップで猫を買って、炎上したっけ。


*  *  *


そして今、その子と一緒に暮らしている。
名前はるう子。愛称はるんちゃん。
頭を悩まし付けた名前も、結局すぐに愛称呼びになってしまうのはどこの家もあるあるだろう。
ちなみに僕はモデルのるうこさんが好きだ。いや、だからなんだってことはないです。ない筈です。

女の子だけど、とにかく食い意地が張っていて、沢山食べる上になんでも食べる。
口がちょっと小さいのか、上手く使えないのかは分からないが、大きい物は綺麗に、それは飼い主である僕に見せ付けるように残している。るう子の意地がそこには見える。
やれやれと思いつつ、小さく千切ってやると、完食する。
まったく、手の掛かる所も可愛い。

我が家に来たばかりの頃は、同じ所をぐるぐる駆け周っていたので、ちょっとお馬鹿さんかなとにこにこしながら眺めていたが、共に暮らして数ヶ月、その馬鹿さ加減は何一つも成長していない。
同じ所を行ったり来たりするるんちゃんがいる、この状況こそが日常、と平常心でコーヒーも飲めるようになった。

るう子が最初に覚えた躾はハウス。
唯一覚えてくれた躾も、ハウス。
彼女のお家は我が家に来てから一度も替えていないが、未だにじりじりと我が家を確認する素振りは頑張れ!頑張れ!と目で追ってしまう。
時々たまに、ここは自分の家か?と迷う表情をする。可愛い。
そしてお家に戻った後は、すんやりおやすみタイム。
僕に似て、るんちゃんは物凄く寝る子だ。
パートナーは飼い主に似るって本当なんだな、と実感した。
でもるう子はちょっと声が大きいのが難点だ。
僕がお昼寝してるとるんちゃんが騒ぎ出すものだから、全くもう!となってしまう。
僕は静かな空間じゃないと寝付けない、繊細boyなのだ。
これはるんちゃんと生活していて、唯一頭を悩ます案件かもしれない。

仕事帰り。
るう子はお迎えをしてくれるタイプの子ではない。
飼い主としては凄く寂しいのだが、お家ですやすやと静かに寝ている姿を見ると、一人で寂しかったろうに、たくさん仕事したんだな、と思い頭を撫でてやりたくなる。
この子にとって仕事は遊ぶ事。
我が家を駆け巡ってたくさん遊んで欲しいものだ。
でも危ないことはしないでね。

もう何をしても可愛い。ご覧の通り、るんちゃんにめろめろだ。
僕にはるうこさんに見えるよ、君が。
いつまでも元気でいてね、とたまに濡れたタオルで体を洗ってあげる。
るんちゃんはお風呂が嫌いだし、室内飼いだから許して欲しい。


あ。るう子が僕を呼んでいる。
「エラー。ルンバを充電して下さい。」




云寺



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