マガジンのカバー画像

【東京の夜】

5
【東京の夜】にあった物語をまとめています。
運営しているクリエイター

記事一覧

【東京の夜】04 #わたし達だけの場所

【東京の夜】04 #わたし達だけの場所

満月の日に

待ち合わせは錦糸町。

スカイツリーがよく見えるこの街は、

改札から出てすぐに喫煙所がある。

そこが決まってわたし達の待ち合わせ場所だ。

「ごめん、待たせちゃったかな」

「全然平気だよ。さっき来たところ」

「今日は何が食べたい?」

「んー、じゃあ、鳥貴族がいい」

「おっけー」

わたしは上京して、地元にはない鳥貴族をこよなく愛していた。

店に着くと、検温とアルコールを

もっとみる
【東京の夜】03 #新宿の先輩

【東京の夜】03 #新宿の先輩

人は、関係性に名前をつけたがる。

1恋愛にしろ、友情にしろ、とにかくだ。

しかし、過去を振り返った時、

わたしは、自分の記憶の〝曖昧フォルダ〟にある思い出ほど、

よりノスタルジックな気持ちにさせられる。

わたしが彼と出会ったのは、

新卒で入った会社の先輩の、人数合わせとして呼ばれた会だった。

仕事上、遅れて参加したわたしの席はもう決められており、

必然的に隣の男性と話す機会が多くな

もっとみる
【東京の夜】02 #西船橋の人たらし

【東京の夜】02 #西船橋の人たらし

秋のことだ。

少数派かもしれないが、

わたしは夏より、冬より、

秋になると、人肌が恋しくなる。

わたしは、ひどく塞ぎ込んでいた。

部屋に引きこもりがちで、コンビニにご飯を買いに行く以外は

外から出ない生活を何週間も続けていた。

そんな時、

わたしはネットで知り合った年下の男の子とご飯の予定が入った。

待ち合わせは、西船橋駅。

前の予定が少し早くに終わったので、駅構内のカフェに入

もっとみる
【東京の夜】01.1 #プロローグ

【東京の夜】01.1 #プロローグ

キミと別れてからまだ1週間しか経っていないのだ。

考えられない、もう1ヶ月くらい経ってるかと思ってた。

時間の流れなんて、人の感じ方によって

全く異なることを実感している。変なの。

キミは元気にしているだろうか。

わたしはこの1週間、とても濃い時間を過ごしたよ。

気持ちの整理、少しはついたのかもしれない。

わたしはキミの過去になるんだ

と、自分の中で、落とし所を見つけているような気

もっとみる
【東京の夜】01 #さよならは足音を立てない

【東京の夜】01 #さよならは足音を立てない

わたしたちは、夜が暗いことを知っている。

わたしたちは、夜が深いことを知っている。

わたしたちは、夜に孤独を感じやすいことを知っている。

夜の孤独はまぁ、まだいい。慣れている。

大勢が、見て見ぬフリをしながら生きている。

しかし、朝の孤独はどうだろう。

夜の孤独に対して、朝の孤独は、心をえぐる勢いが比べ物にならない。

〝それ〟をわたしは知っている。

その時のわたしと言ったら、

もっとみる