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ぷらっとほーむ

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記事一覧

「就労支援=ニート支援」から遠く離れて。

「就労支援=ニート支援」から遠く離れて。

■先日、山形県からの委託を受けた「若年無業者のための社会参加体験プログラム開発」事業の一環として、山形県労働相談センター・事務局長の佐藤完治さんを講師に招いてのワークショップ「労働相談を体験してみよう:コミュニティユニオン一日体験企画」を開催した。労働者の権利と労働組合(ユニオン)の存在意義について学ぶというのがテーマである。巷にあふれる「就労支援=ニート支援」への違和感――より切実に必要なのは「

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自己批判モードを、君に。

自己批判モードを、君に。

■『ぷらっとほーむ入門』の2008年度版について、スタッフ目線でぷらほの目指す理念や実際のありようを紹介する「スタッフ篇」とメンバー目線でぷらほの生きられた意味や日常を紹介する「メンバー篇」との二冊を同時刊行するという「冷静と情熱のぷらほ」企画。その「メンバー篇」の編集作業が、いよいよ大詰めを迎えつつある。編集委員メンバーたちの締切直前の徹夜作業だとか阿鼻叫喚だとかを横目に見ながら、そろそろ「スタ

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「当事者である」とはどういうことか。

「当事者である」とはどういうことか。

■先日、山形県からの委託を受けた「若年無業者のための社会参加体験プログラム開発」事業の一環として、「子どもの社会参画支援」をミッションとするNPO法人・寺子屋方丈舎(会津若松市)代表理事の江川和弥さんを講師に招いての、ワークショップを開催した。ワークショップのテーマは「NPO企画づくりを体験してみよう:コミュニティビジネス起業一日体験企画」。何だか難しそうで近寄りがたい雰囲気のNPOの活動を、実地

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「居場所」に「社会学」の花束を。

「居場所」に「社会学」の花束を。

■先日、山形県からの委託を受けた「若年無業者のための社会参加体験プログラム開発」事業の一環として、東北公益文科大学(酒田市)の渡辺暁雄准教授(社会学)のゼミに、ぷらほメンバー4名とともに参加・体験してきた。ゼミとは、大学に特有の学びの形式だが、あまり身近ではないそれを一日体験してみようというのが企画の趣旨だ。実を言うと、このゼミ(通称「あけおゼミ」)は、わたしが現在、大学院生として所属して学んでい

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「ミッション共有」とは何を意味するか?

「ミッション共有」とは何を意味するか?

■先日、調査依頼を受けて、ある居場所NPOを訪れ、そこのスタッフ全員にインタビュー調査を行った。調査のお題は、「NPOは、その団体に固有のミッション(使命)をもっていると前提されているが、果たしてそれは実際にスタッフ間でどれだけ共有されているか、共有されているとすればそれはどのような方法によって達成されているか」というもの。方法上の課題は、ミッション共有の達成度合いを、どのような基準やものさしを用

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社会学から見た「居場所」とは?

社会学から見た「居場所」とは?

■先日、日本教育社会学会第59回大会において、「「居場所」に関わる人びとによる「不登校・ひきこもり支援」の社会的構築:支援者のアイデンティティ・ワークに着目して」という題目で、研究発表を行ってきた。心の専門家による心理学的な言説(居場所における受容は心の傷を癒す)でも、東京シューレ系の反学校論的な言説(居場所における試行錯誤は「自由・自治・個の尊重」を保障する)でもなく、社会学的に「居場所」を記述

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他の誰かに「居場所」を与えるということ。

他の誰かに「居場所」を与えるということ。

■おかげさまで「ぷらっとほーむ」も創設して5年目、いろんな人びととの、いろんなかたちでの関わりを経て、現在の姿がある。ある人びとはここをひとつのきっかけとして新しい自分の居場所を見つけて旅立ち、またある人びとはこことの付き合いかたをそのときどきに合うかたちに変えながら利用し続けている。とはいえ、イベントごとなどに際しては、かつての利用者(いわゆるOB/OG)と現役の利用者とが顔を合わせる場面も多い

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相対化の作法:私たちが「宗教」に陥らないための。

相対化の作法:私たちが「宗教」に陥らないための。

■今回は、次年度版『ぷらほ入門』編集委員会の進捗状況について書く。4月に発足し、「冷静の情熱のぷらほ(仮)」企画としてスタートした編集会議は、7月末現在、15回を数える。毎回、編集部員それぞれが企画案を持ち寄り、全員でそれを議論。ときには厳しい批判がでることもあるが、企画をより公共的なものにしていくためには、これは不可欠の熟成作業である。回を重ねるごとに、編集部の人たちの目線が「編集者」としての様

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ぷらほ流・社会学ワークショップのすすめ

ぷらほ流・社会学ワークショップのすすめ

■進学希望のメンバー数名の求めで、高校受験社会についての講座を6月より毎週金曜に定期的に開くことになった。わたしは現役の予備校講師でもあるので、「そちらと同じ講義形式の授業を再現するか」などと最初は考えていたのだが、受験生ではないが「社会のしくみ」に興味があるので参加したいという人たちも現われたため、「社会学ワークショップ」=参加者の関心に応じた参加型の学びの場として進めることにした。これまで「憲

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「編集作業」遂行中、「関係形成」進行中。

「編集作業」遂行中、「関係形成」進行中。

■昨年度末に完成した『ぷらっとほーむ入門2007』。複数のメンバーの協力を得て、何度かの合宿や徹夜の作業の末にできあがった力作である。しかしながら、2007年度版は、完全にスタッフの目線で編集されたものであり、メンバーの声や姿は「ぷらほ」の日常を外部の人びとに伝えるための「素材」として登場はするものの、メンバー自身の目線から「ぷらほ」がどう見えているのかに関わる視点は実はそこには含まれていない。

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「自己満足!」批判が成立するための条件。

「自己満足!」批判が成立するための条件。

■「ぷらほ」では、利用者や関係者のオンライン上での交流の場として、インターネットの掲示板を設置し、運営している。最近そこに、匿名のある個人の方から「ぷらほ」を批判する書き込みがあった。その方いわく、「ぷらっとほーむは私から見れば[子どもの自立からほど遠く]自己満足のサークルにしか見えません」とのこと。反論はありとあらゆるレヴェルで可能だが、ここでは「自己満足」をキーワードに考えてみたい。

■そも

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「無色透明イデオロギー」からの脱却。

「無色透明イデオロギー」からの脱却。

■今回は、個人的な思いについて書く。「ぷらっとほーむ」を開設してもうすぐ丸4年になる。いろんな出来事があり、その度ごとにさまざまな気づきを得ることができた。とりわけこの1年間は、自分にとって大きな意味をもつものとなった。実を言うと、居場所づくりに関わるようになって以来ずっと、フリースペースのスタッフとしての自分の居かたに悩み続けてきた。とりわけ、どのようなキャラでそこに居るかということに葛藤し続け

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評価するスタッフ/評価されるスタッフ。

評価するスタッフ/評価されるスタッフ。

■前回、ぷらっとほーむの「ヒドゥン・カリキュラム」(そこに所属する人びとが従うことを求められる暗黙の規範)として、「変わること(変革、変容、成熟、向上など)が良いことだ」という思想が存在しているように思う、と書いた。方向性や目的地はその人次第だが、とにかく「現在の自分(やそれを取り巻く環境)を新たな自分(やそれを取り巻く環境)に更新したい」という欲望において共通する物語を選択した人びとの緩やかな共

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居場所のヒドゥン・カリキュラム。

居場所のヒドゥン・カリキュラム。

■前回、他の居場所や当事者グループと比較した場合のぷらっとほーむの「個性」のひとつとして、そこで流通している用語法について書いた。世間が強要してくるような、当事者にスティグマを刻印するラベリングの語法――「社会に出る」「立ち直る」――を回避し、当事者を縛る「内面の檻」を緩めるための手助けとして、私たちは、世間の常識的な語法とは異なる言葉づかいが可能となるような環境の構築を心がけている。言葉が変われ

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