滝口克典

1973年生まれ、山形市在住。専門は「居場所づくり」。フリースペースSORA(不登校支…

滝口克典

1973年生まれ、山形市在住。専門は「居場所づくり」。フリースペースSORA(不登校支援、2001-03年)、ぷらっとほーむ(若者支援、2003-19年)、よりみち文庫(学びの場づくり、2019年~)で共同代表をつとめる。現在は、いくつかの大学・専門学校で「専業非常勤」状態。

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  • 〈社会〉のこわれかた/なおしかた

    私たちはどうしてこんな社会に生きているのか。やまがたからの社会学入門。

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    これまでいろんなところで書き散らしてきた書評記事のアーカイブです。選書や読書の参考にしていただければ幸いです。

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    毎月1回発行している『よりみち通信』。 紙媒体でも配布していますが、noteでも読めるように1年分をこちらのマガジンにまとめていきます。

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最近の記事

災禍のもとで編まれた希望――『〈場〉のちから 多文化ヤマガタ探訪記2020‐2023』刊行によせて

年末年始のお休みにこんな一冊はいかがでしょうか? ご案内がずいぶん遅れてしまいましたが、先日、新しい本を出しました。山形新聞の連載記事をまとめた『〈場〉のちから 多文化ヤマガタ探訪記2020‐2023』で、『〈地方〉の思考 多文化ヤマガタ探訪記2018‐2020』(よりみち文庫、2020年)の続編です。県内各地の草の根の活動者たちの現場30か所をめぐり、それぞれの現場の〈ことば〉に耳をすませ、それらをもとに今後の地域のすがたを展望した一冊です(表紙イラストはイラストレーター

    • 震災文学読書会③ 『やがて海へと届く』を読む

      震災文学(ノンフィクション含む)を読んで語るオンライン読書会を、月1回ペースで開いています(毎月第三日曜の14:00~16:00)。毎回課題図書をそれぞれで読んできて、感想をもちよって語らい、交流しながら考えを深めていこうという趣旨の会です。 第3回(9/17) 彩瀬まる『やがて海へと届く』(講談社文庫、2019年) 参加ご希望の方は、事前に上記文献を読んだうえでどうぞ。参加無料です。滝口(メール:takiguchika@gmail.com)までご連絡いただければ、当日ま

      • 震災文学読書会② 『牛と土』を読む

        震災文学(ノンフィクション含む)を読んで語るオンライン読書会を、月1回ペースで開いています(毎月第三日曜の14:00~16:00)。毎回課題図書をそれぞれで読んできて、感想をもちよって語らい、交流しながら考えを深めていこうという趣旨の会です。 第2回(8/20) 眞並恭介『牛と土 福島、3.11その後。』(集英社文庫、2018年) 参加ご希望の方は、事前に上記文献を読んだうえでどうぞ。参加無料です。滝口(メール:takiguchika@gmail.com)までご連絡いただ

        • 震災文学読書会① 『河北新報のいちばん長い日』を読む

          震災文学(ノンフィクション含む)を読んで語るオンライン読書会を、月1回ペースで開いていきます。毎回課題図書をそれぞれで読んできて、感想をもちよって語らい、交流しながら考えを深めていこうという趣旨の会です。 初回のみ第四日曜(6月25日10:00~12:00)、2回目からは第三日曜の14:00~16:00 の日程で進めていきます。とりあえず2回目までの課題図書は以下の通りです。 第1回(6/25) 河北新報社『河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙』(文春文庫、2014年

        災禍のもとで編まれた希望――『〈場〉のちから 多文化ヤマガタ探訪記2020‐2023』刊行によせて

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        記事

          『〈生きづらさ〉の理由』について

           当マガジンをお読みくださっているみなさま、こんにちは。よりみち文庫の滝口克典と申します。このたび『〈生きづらさ〉の理由 (やまがた発)社会問題と市民活動の社会学』(よりみち文庫、2023年、税込2,200円)という本を書きました。  いま、私たちがくらすこの社会にはびこるさまざまな〈生きづらさ〉とそれらの解決をめざすソーシャルアクションの現状を知るための入門書です。「どうしてこんなに生きづらいわけ?」という、その「なぜ?」を解きほぐし、実際にそれにとりくんでくださる方があち

          『〈生きづらさ〉の理由』について

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          『〈生きづらさ〉の理由 (やまがた発)社会問題と市民活動の社会学』を刊行しました!

          『〈生きづらさ〉の理由 (やまがた発)社会問題と市民活動の社会学』を刊行しました!

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          「地域」のいま、そしてこれから。

          ■「地方消滅」という衝撃  突然ですが、「地方消滅」論というものをご存じでしょうか。これは、2014年に民間シンクタンク「日本創生会議」(増田寛也氏が座長)が人口減少問題に関する報告書――通称「増田レポート」――のなかで提起した議論です。同報告は『地方消滅』という題名の新書になっていますので手軽に読むことができます。  「増田レポート」は、全国1799自治体のうち896の市区町村を「消滅可能性都市」――2040年までに若い女性の人口が50%以下に減少、自治体の存続が危ぶまれる

          「地域」のいま、そしてこれから。

          あとがき

           最後まで読んでくださり、ありがとうございました。本書のさまざまな知見は、筆者がやまがたの地で〈居場所づくり〉を通じて出会ったさまざまな当事者の声や、彼(女)らとともに行った議論や運動、活動のなかでの気づき等に由来します。いわば、〈生きづらさ〉の現場からボトムアップで構成されたものたちです。  さらにそれらは、筆者が県内各校で教えるなかで精錬されたものでもあります。担当する講義のなかで、筆者は毎回、受講生全員にリアクション・ペーパーを書いてもらっています。そこで出た質問や感想

          あとがき

          21世紀の少女に訪れる「奇跡」――阿部和重『ミステリアスセッティング』(朝日新聞社、2006年)評

           実在する虚構の街「東根市神町」を舞台にした長編傑作『シンセミア』の続編が待たれる阿部だが、そのための準備作業の一環として書かれたのが本書だという。携帯電話配信の連載小説を一冊にまとめたものである。  物語は、ある奇妙な公園を遊び場に集う子どもたちに正体不明の老人が語り聞かせる「かつて実際にあった出来事」という形式で開示される。その主な舞台は2011年(同時多発テロ事件の10年後!)の東京。主人公は東北地方出身の19歳の少女シオリ。故郷の街での出来事と、上京後の東京での出来

          21世紀の少女に訪れる「奇跡」――阿部和重『ミステリアスセッティング』(朝日新聞社、2006年)評

          オウムとの暗い連続性暴く――吉田司『新宗教の精神構造』(角川書店、2003年)評

           サリン事件から8年、オウム真理教(アーレフに改称)とその土壌としての新宗教ブームに対する冷静な考察や批評がようやく姿を現すようになってきた。山形市出身のノンフィクション作家による本書も、そうした成果の一つだ。事件後、オウムをわれわれ「普通の日本人」の敵として市民社会に対峙(たいじ)させ、我々の正義と彼らの邪悪との深い断絶を強調するたぐいの言説が一般的だ。だがオウムもわれわれ同様、日本社会が生みはぐくんだ存在。決して他者ではない。こうした視点のもと本書は、われわれとオウムとの

          オウムとの暗い連続性暴く――吉田司『新宗教の精神構造』(角川書店、2003年)評

          サリン事件の謎 つぶさに――森達也『A3』(集英社インターナショナル、2010年)評

           世界中を震撼させた地下鉄サリン事件から15年。事件を引き起こしたオウム真理教の目的、教団捜査の最中に起きた幹部信者刺殺事件や警察庁長官狙撃事件の真相など、膨大な謎の解明が期待されたオウム裁判であったが、結局のところ、それらは審理を通じて明らかにされることのないまま、異例の早さで結審を迎える。かくして、一連の事件の首謀者とされた教団の元教祖・麻原彰晃に対する死刑判決が、昨年9月15日に確定した。  本書は、事件後のオウム教団(アーレフに改称)の等身大の姿を被写体としたドキュ

          サリン事件の謎 つぶさに――森達也『A3』(集英社インターナショナル、2010年)評

          おわりに――社会をどうたてなおしていくか

          ■「地域共生社会」という要請  最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。ここまで、さまざまな社会問題をとりあげ、それが人びとにどんな〈生きづらさ〉をもたらしているか、どういうしくみでそうなっているか、そしてそれを解消するべく人びとがどんな活動をしているか、といったことを見てきました。  それらに共通していたのは、公助――政府による非人称の支え――の不足ゆえに各自が自助――自分(とその家族)でなんとかすること――に努めねばならなくなり、その過重さゆえに諸種の〈生きづ

          おわりに――社会をどうたてなおしていくか

          はじめに――社会学という視座

          ■どうしてこんなに〈生きづらい〉のか?  みなさん、こんにちは。滝口克典と申します。現在は山形市に住んでいて、同市を拠点に仕事をしたり活動したりしています。主に「社会学」「社会教育」「NPO・市民活動」といった分野で教えたり書いたりしていて、専門にしているのは「社会問題」――人びとの〈生きづらさ〉――と〈居場所づくり〉です。  これらのテーマについて調べたり考えたりしながら、それを教えたり書いたりしているわけですが、わたしは専業の研究者ではありません。もともとは県立高校の教員

          はじめに――社会学という視座

          差別をどう捉えるか――「マイノリティの生きづらさ」の理由

          ■ヘイトスピーチからヘイトクライム、ジェノサイドへ  「ヘイトスピーチ」という言葉をご存じでしょうか。よく「誰かの悪口」や「罵詈雑言」という意味合いでこの言葉が使われている場面に遭遇しますが、それは間違い。正しくは、憎悪や差別を扇動する表現のことを指します。「ばーか!」は該当しませんが、「みんなであいつらをバカにしようぜ!」は該当します。  ゼロ年代以降、このヘイトスピーチがさまざまな場面で頻出するようになり、社会問題化しています。当初はインターネットの匿名掲示板などでひっそ

          差別をどう捉えるか――「マイノリティの生きづらさ」の理由

          なぜ「地方消滅」といわれるのか――私たちが原発依存をやめられないわけ

          ■「地方消滅」?  みなさんは「地方消滅」論というものをご存じでしょうか。これは、2014年に民間シンクタンク「日本創生会議」(増田寛也氏が座長)が人口減少問題に関する報告書――通称「増田レポート」――のなかで提起した議論です。同報告は『地方消滅』という題名の新書になっていますので手軽に読むことができます。  「増田レポート」は、全国1799自治体のうち896の市区町村を「消滅可能性都市」――2040年までに若い女性の人口が50%以下に減少、自治体の存続が危ぶまれると予測され

          なぜ「地方消滅」といわれるのか――私たちが原発依存をやめられないわけ

          「家族」はいま、どうなっているか

          ■「家族」とは誰のことか  大事なものは何ですかと訊かれたら、あなたは何と答えますか。「家族」と答えるのがひとつの定型句のようになっている昨今ですが、さてでは、あなたにとってその「家族」とは誰のことでしょうか。自分にとって「家族」とは○○だ、と感じるものをマインドマップ形式で手もとに書き出してみてください。  マインドマップとは、頭で考えていることを可視化しつつ整理していく発想法のひとつです。無地の紙の中央に掘り下げたい概念のワードを置き、そこから連想されるキーワードやイメー

          「家族」はいま、どうなっているか