40代半ばからのスタートアップへの挑戦は無謀なのか?~キャリアの後半を考える大手企業管理職45歳の悩み①~
こんにちは。株式会社シンシア・ハートで代表取締役をしている堀内猛志(takenoko1220)です。
前回のnoteでは、「思い切って転職した企業がイマイチだったけど次の転職をすぐにしていいの?~自分の得意分野を見つけられずに悩む28歳のキャリア~」というシリーズについて書きました。
ここ最近は比較的若手のキャリアについて書いていたので、今回はミドルのキャリアについて考えていきたいと思います。
お悩み相談内容のサマリは以下の通りです。
40代半ばでスタートアップに転職を決意された挑戦欲求は素晴らしいと思います。一方で、大手とスタートアップの差は思ったよりも大きいのです。では、どうすればいいのか、ということを解説していきます。
以下は、今回のペルソナである「晃」については以下の通りです。
スタートアップ企業からの内定が出ないことに悩む晃(45)のキャリア
【ペルソナ】
晃。男性。45歳。
【タレント】※本人は自覚していない
アナリティカル/慎重さ、アレンジ、学習欲、戦略性、調和性
【好き(ルーツ)】
構造化、調整、なぞ解き
【好き(ブーム)】
モビリティ
【キャリア①若手時代~営業/販促~】
「北海道ですか?」
東京本社か地元大阪支社を希望していた晃は耳を疑った。
晃が就職活動を行っていた2000年は就職氷河期まっただ中で、新卒の求人倍率は0.9倍という現在では考えられないくらい就職が難しいタイミングだった。
地元の国立大学でアメフト部に所属していた晃でさえ、就活には非常に苦労した。部活の先輩を頼りにOB訪問を行い、手が真っ黒になるまでエントリーシートを書いた。現在と違いWEBでの応募を受け付けているところはほぼなかった時代である。苦労はしたが、何とか大手自動車メーカーに内定を獲得した晃だったので、配属地域に不満を言えるような権利はなかった。
北海道では地元の販売会社に出向し新車の販売を行った。慣れない土地で最初は戸惑ったが、友人知人が全くいない環境だったので休日も遊ぶ相手がいなく、外に出ると寒すぎるということもあり、ひたすら仕事と向き合っていた。結果、毎年東北・北海道地域で賞を獲れるようになり、新人育成向けの資料作成なども担当することになった。
元々文系で文章を書くのが好きだった晃は資料の作成が上手かった。たまたま晃が作った新人育成マニュアルを見た販促部の部長から声をかけられ、5年目にして販促部に異動が決まった。
企業として発信したいテーマが多く存在していたがTVCMでは伝達効率が悪い為、重点ターゲットを自動車を持つ顧客に絞り込む戦略に変更しようとしていたのが販促部の戦略だった。晃は営業とマニュアル作成の経験を活かし、小冊子を作成するプロジェクトを推進した。完成した小冊子を顧客へ郵送し、営業マンが顧客のもとに通うというローラー作戦を実行した。
この作戦がうまくいったことで、他の地域でも同じ戦略をとることが決まり、晃はあらゆる地域に小冊子の作成ノウハウを伝えていった。
【キャリア②主任時代~商品戦略・グローバル販路拡大戦略~】
入社8年目を迎えた晃は主任へと昇格し商品戦略部門に異動した。念願の東京本社だった。
当時は円高が加速していたことで、儲からない輸出ビジネスから脱却しようとしていた。晃は需要のあるところで生産し現地で販売する体質強化策を立案し、長期的な拡大戦略を各国へ提案したまわった。また、競争力のある商品投入計画を作成し、台数予測、製造コスト、物流コスト、生産アロケーション、マージンなどの情報を収集し、コスト・収益バランスを最適化した。晃が商品企画に関わった自動車が大ヒットにつながったのは今でも忘れられない思い出だ。
【キャリア③課長時代~SCM/マーケティング~】
それから6年後、晃は課長へ昇進し、社長統括である全社横断の変革プロジェクトのリーダーに抜擢された。まずサプライチェーンマネジメント(SCM)を改善し、コスト削減を実行するところから始めた。在庫が嵩む要因を分析し、販売店の受発注から購買 生産 部品物流 サプライヤーまでのプロセスを各社にヒアリングして構造を可視化した。結果、発注予測システムの精度UP及び、適正在庫量の基準値を仮決めして、現場での運用テストへ繋がった。
その後、常務統括のマーケティング戦略化を立ち上げた。全社で地球温暖化に向けた環境目標をクリアするに、自動運転やEV など新領域へ投資し、既存のガソリン車の商品開発のリソースを再配置することが急務だった。全世界の市場の成長予測と相対的シェアから客観的に整理した上で、各国の戦略担当とすり合わせしたものを経営会議で提案し承認に漕ぎつけることができた。
【キャリア④部長時代~DX/経営戦略/コーポレートブランディング~】
そして40歳という節目を迎えるタイミングで晃は部長に昇格した。変わらず経営統括の中で最重要課題を任されることになった。企業活動を通じてアイデンティティがお客様に伝わっているのか、各事業、国のファンがどれだけ増えているのか、全社活動の成果を同じ軸で計測し、各事業活動のKGI/KPI を定め、目標を管理するルールを設定した。
精力的に仕事に向かう一方で、社会人ビジネススクールでMBAを取得し、キャリアデザインを学ぶなどしていた。そんな折、晃にヘッドハンターから連絡があった。大手飲料メーカーでコーポレートブランディング部を立ち上げるために、その責任者として晃を迎え入れたいとのことだ。
これまで転職を意識してこなかった晃だが、キャリアデザインを学んでから自身のキャリアを考えるようになっていた。またビジネススクールで様々なキャリアを描く友人と会い、触発されていたタイミングでもあった。そして、何よりも自分を必要としてくれる人がいるとわかったこと、初めてのヘッドハントに浮かれているのも確かだった。結果、晃はそのオファーを勢いのまま承諾してしまう。
【キャリア⑤1度目の転職~大手飲料メーカーでのコーポレートブランディング~】
晃が任されたのはコーポレートデザイン本部におけるブランド戦略部部長のポジションだった。お客様から見て、企業理念が日々の商品サービスから感じられるか検証し、今後の各グループ会社の事業戦略や戦術に反映していくように顧客調査を設計した。従来は各社、国ごとにバラバラに調査を実施していたが、KGIKPI を仮決めし、同じ軸で客観的に現状を把握することで、目標、重点領域、グローバル共通で獲得していくべきイメージを設定し、全社活動のPDCA を中長期でローリングしていった。
非常に大きな仕事でありやりがいを感じていた一方で、企業のスピード感の遅さも感じていた。前職と規模は変わらないものの、プロパーとして入社した前職では、役職者はほとんどが同期に近い年代であったし、経営陣も20年以上コミュニケーションをとり続けていた人たちなのでキャラクターは熟知していた。それだけで承認が本当にとりやすかったのだと実感した。現職も似たような傾向を感じる。日系大手企業は外様に厳しい。
ふつふつとこみ上げる嫌な感情をどう整理しようか迷っていたタイミングで大学院の仲間と飲み、改めてキャリアデザインについて話し合った。そこで改めて感じた。「40代から始めることは決して遅くはない。しかし、早すぎることもない。つまり、決めた瞬間に動かないといけないんだ。」晃は転職後1年で2回目の転職をする覚悟を決めた。
【キャリア⑥2度目の転職活動~モビリティスタートアップへの挑戦~】
キャリアの後半はスタートアップで挑戦したいと思うようになった。大学院で自分より一回り以上若いスタートアップの経営者に触発されたこともあるが、1度目の転職を経て小さな組織でスピード感を持って仕事をしたいという想いが強くなっていた。また、自分の経験が活きると考えモビリティスタートアップを希望した。
しかし、現実はそう甘くはなかった。エージェントに登録し複数社のモビリティスタートアップ企業を紹介されたものの、ことごとく不採用になった。晃の経歴を見て、初回から経営者や事業責任者が面談をしてくれるところまでは行くのだが、その後に繋がることはなかった。また、不合格のコメントは「当社では用意するポジションがない」というような当たり障りのないものばかりで、エージェントの担当者に聞いても、それ以上はわからないとのことだった。
晃の現年収は2000万円弱、落としても1600万円は切れないと伝えているがそこがダメなのだろうか。前々職では社内ベンチャーの設立にも関わっていたので風土ミスマッチもないと思うのだがそれでも大手出身ということで懸念されているのだろうか。自身の経験があれば、拡大フェーズの企業には寄与できることがたくさんあると思うのだがステージが合わないのだろうか。
現職には転職すると伝えて引継ぎも行っているため、もう撤回はできない。実は前職の同期から子会社の責任者の話が来ていて少し安心してしまっているところもあるが、守りのキャリアを歩みたくて転職したわけではない。戻ると今回の転職はただの遠回りで終わってしまう。しかし、戻れば年収はキープできそうだ。
チャレンジしたい気持ちと現状維持のはざまで晃は揺れていた。
晃のキャリアのポイント
さて、今回はミドルからハイキャリアに近い人材と言うこともあり、これまでとはテイストを変え、本人のメンタルよりも経験業務に比重を置いて説明してきました。
かなりシンプルにまとめているとはいえ、晃の1社目の経験は非常に多岐にわたり、また、出世スピードの速さからも、社内評価の高さが伺えます。そこに晃も自信があったのでスタートアップの転職に意欲を示すのですが、結果はなかなかうまくいっていないようです。なぜ晃はスタートアップから評価されないのでしょうか。
近年、大手企業からスタートアップへの転職は増えています。
時代的な要因もあるでしょうが、大手とスタートアップの報酬格差がなくなっていることが、ミドル以上の人材の転職に繋がっていることは間違いありません。
とは言え、スタートアップへの入社が簡単なわけではありません。高い報酬に対する能力の見極め方は、大手企業のそれよりもスタートアップの方が圧倒的にシビアです。晃の誤算はここにあります。
上記について、次回以降のnoteで解説していきたいと思います。
晃のストーリーを読んで他人ごとではないと思った人は下記よりご連絡ください。
それでは今日も素敵な一日を!
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