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(6) オンリーワン製品 調達のススメ (2024.4改)

キャンベルのオーストラリア国防省を訪問していたダフィー・リム ビルマ副大統領兼国防大臣の臨時秘書として、ビルマ軍の「影」の総司令官の息子である 杜 亮磨が副大統領一行に帯同していた。

ビルマ一行はオーストラリア国防大臣とオーストラリア防衛産業各社の見送りを受けて、国防省を辞した。オーストラリア製装甲車ブッシュマスター(乗員数10名)100台と多用途装甲車ハーケイ(乗員MAX6名)300台の契約を取り交わした。

共栄党・社会党としても麦や鉱物以外のオーストラリア製品を、購入出来た格好となる。
機器の調達以外では、オーストラリア陸軍の砂漠部隊の訓練にビルマ陸軍兵士を研修参加する契約を取り交わした。乾燥地帯でのオーストラリア軍のノウハウを身につけるのが目的だ。

オーストラリア国防軍の海空軍を避けたのは意図的なもので、Quadrilateral Security Dialogue:Quad(日米豪印戦略対話)の枠組みから外れる為と、ニュージーランド政府と国防省へ配慮をした。
原潜を購入したオーストラリア海軍との取引を避けたのは、NZの非核主義を尊重した。
海軍と合わせて米国戦闘機で統一されたオーストラリア空軍との提携は、中国への牽制と受け取られ兼ねないので、海軍と空軍とは敢えて一線を画した。

2種類のオーストラリア製 装甲車を調達した理由は、旧ミャンマー軍が採用した中国製 装甲車の後継代替機となる。両車両が米国製輸送機C-130に搭載可能なのも大きなポイントだ。
国連の作戦を遂行するに当たり、空輸可能な車輌で無ければ請け負えない。中東や北アフリカの砂漠地帯での作戦を考慮すると、ブッシュマスターとハーケイは最良の選択だった。この種の応用力が中国製兵器には全く無かった。また、中国製の軽戦車も所有しているが、オーストラリアは戦車の開発と製造はしていないので、EU製に順次変更してゆく。

プルシアンブルー社と米国国防総省と日本の防衛省間で交わされた契約の項目に「クワッド等の合同演習にUAVを利用しない事」と明記されている。
国境警備で在韓米軍とビルマ軍がUAVを利用しているが、それ以上の刺激を中国に与えない為だ。

「そう言いながら、中国と韓国企業が軒並み我が国から撤退しようとしているじゃないか。今更だろう?」   
宿泊先のホテルへ戻る車両の中で、ダフィー副大統領兼国防大臣に言われて、亮磨は笑うしかなかった。

「そちらは通常ビジネスの世界の話で、国防とはまた次元が異なります」

「中国はそうは思っていないだろう?喧嘩を売られたと思ってるのでは?」

「ですよね~」
「De su yo ne?  What's mean?」

「Sorry,sir. I said ” Correct” or ”That’s right”.」 

・・いち早く撤退したのは、資金繰りが悪化した中国の建設会社と投資会社だった。それに続く様に中国の兵器会社が撤退。道路政策にもプルシアンブルー社が手を打ってきて、中韓企業は撤退を始めた。
旧ミャンマーは英国の植民地でありながら右側通行、左ハンドル車輌だが、中国の圧力で2018年に右ハンドルの中古車輸入を禁止した。 
バスやトラック一般車両に至るまでミャンマーは年間50万台の日本の右ハンドル車を輸入してきたが、これが全てストップし、中韓新旧自動車の独壇場に変わった。

しかし、2月1日にクーデター未遂となってから再度状況が変わる。
ベトナムからプルシアンブルー製の左ハンドル中古車が大量に運び込まれる様になった。
同社製のディーゼルハイブリッドエンジンを載せ替えて、同社製のAI Naviを搭載した中古車販売を始めて、ヒット商品となっている。
中国・韓国国内の左ハンドル中古日本車をベトナムの工場で改造し、旧ソ連圏・ロシア、旧インドシナ3カ国では大人気なのだが、それをビルマに持ってきた。

国内電力事情の改善を受けて、プルシアンブルー社はタイ製・ベトナム製の家電品販売を始め、プルシアンブルー社を崇めているビルマの人々は、高品質ロングライフ設計、長期保証の家電品を求める様になってしまった。
もし、北朝鮮市場に同社が進出すると、ビルマ市場と同じ様に一強体制となるのは間違いない。

旧ヤンゴン市民がプルシアンブルー社を信奉する様になったのは、クーデターを阻止したのもあるが、クーデター未遂後に幾つかの施策を取ったのが大きい。
一つが教育だ。富裕層にとってヤンゴン市内の私立校は充実している。英国統治時代を経て数多くの留学経験者が教師になっている。一方、僅かな教育予算となっていた公立学校のレベルは推して知るべしで、軍政に批判的な教師や公務員は自主ストライキを行うなどして、満足な授業を実施出来なかった。

それが民主化への移行で変わった。教師は教壇に立ち、授業が滞りなく開かれる様になった。
生徒全員ではないが、進学コースに入った生徒にPCが配布され、卒業まで利用できる環境となった。PCにはプルシアンブルー社の「AI学習アドバイザー」というプログラムが設定されている。
予習復習の相談役、疑問点や未就内容の解説を徹底的にAIが行なうので、授業について行けない生徒を生まないツールだと教師陣からも称賛されている。授業だけではどうしても不足しがちな箇所をAI学習により網羅するのが狙いだった。

もう一つが建設会社だ。中国の建設会社は軍や軍事企業に絡む特権階級が中心となり、都市部で開発を進めて来たが、中国国内の不動産不況で建設中断のまま放置されるビルやマンションがラングーン市内でも散見されている。
プルシアンブルー社のタイとベトナムで展開中の子会社PB建設がビルマに進出し、建設放置された物件を調査し、建設内容に問題や過失が認められるとビルマ政府とラングーン市に報告し続けている。
ラングーン市の建設課が「違法建造物 」と認定すると、土地の再度売却なり、中途半端な建造物の解体を土地の所有者に勧める。
この調査によって、既に完成したビルやマンションにも問題の焦点が当てられる様になり、中国資本の建設会社の建造物が、軒並み資産価値を下げている。
「違法建造物の可能性が極めて高い」と判断され、風評被害の様になっている。
購入したり入居しているのは金持ちか旧ミャンマー軍の軍需産業なので、大半の市民は拍手喝采中という状態だ。

ラングーン市の建設問題が中国国内にも飛び火しており、同じ建設会社や不動産会社の建造物の資産価値も下がり始め、中国内の不動産不況に拍車が掛かっている。

つまり、極めて当然な仕事をするのがプルシアンブルー社で、建造物も製品も全幅の信頼を寄せるに値する状況にあるのも、黄門様一行がビルマで
暴れ始めたからだ。
オーストラリア滞在中の 副大統領と杜 亮磨の話の遣り取りが、ラングーン市内で散見される事象の数々を捉えての発言だった、と言う訳だ。

一方の苦境の原因となった中国側でも混乱が始まりつつある。メディアも経済市況の悪化を受けて、共産党を配慮しない記事が散見し始めている。
中国政府としては、建設会社、兵器、自動車メーカー、家電製造企業の責任として押し付けるしかなかった。「違法建造物」や「売れない製品」を国家機関が「承認」した経緯をガン無視して、企業側の責任であるかの様な情報操作に徹するしかなかった。
火の粉が中国共産党に及ばない様にする為だ。
企業が共産党に不信を抱く様になるキッカケとなった。

ビルマ軍への改編後、中国兵器産業が痛手を被り、それに続くようにビルマ5000万人市場から中国資本が引き上げつつあると上海の新僑社通信が伝えると、香港と韓国のメディアも同じ様な記事を書いた。
「モノづくりに信念を持っているプルシアンブルー社の製品に、我が国の製品は勝てない」
と新僑社通信が社説に書かざるを得ない程、各国企業を取り巻く環境が急変し始めていた。

***

「北朝鮮 市場における日本建設業の活躍の芽が揃ってきた」
「ビルマに進出する商機も出てきたのではないか?」
と来年度予算案を協議中である筈の議員達が
「神風が吹いた」「1950年の朝鮮特需の再現」と言ったモードで浮かれ始めると、日本の建設業界の株価がストップ高となった。

この時、日本社会党とプルシアンブルー社は日本のゼネコン株を大量に保有していた。
コロナウィルス全盛期、建設業界は建設資材の調達難と作業員の感染防止のために、建設を一時中断していた。建設再開の時期が見通せない頃、最も株安だったタイミングで購入していたのもプルシアンブルー社のコロナ製剤開発のメドが立っていたからだろう。建設業界以外の業種の株式を含めて、数千億単位で購入しているのが判明している。両組織で同時に約500億円で購入した株を一斉に売却し、820億円の収益を得た。
820億から500億円でプルシアンブルー株を購入し、残りの320億円で沖縄と島根県出雲市、宮城県気仙沼市の不動産を購入しているのが、与党の調査で判明している。株売却と同時に購入しているので、予めリストアップしていたのだろう。

野党の「利に繋がる話」を与党は決して表にはしない。
しかし、100億円相当を投じて購入した土地や建物はどうしてもそれぞれの地元のメディアが取り上げ、表沙汰になる。地方都市の土地なので面積も広い。
『工場用地か?』」
『商業施設建設か?』
『ホテル事業か?』と記事に書かれて、話題となる。沖縄で購入した不動産は全て「沖縄4区」内に集中しており、モリが立候補を表明した選挙区なので、地方紙で知った地元は活気づく。

「株の売買で軍資金を得て、地元経済活性化と当選を確実なものとする社会党陣営」
「自分たちの財テク管理能力と地元経済の活性化策を見出す先見性を有する組織」
と新聞や雑誌に記述されると、投資対象となった地元は歓迎する。カジノや風俗が進出するのではなく、環境保全を考慮されたスマートな施設や産業が社会党知事の県では増えているからだ。

社会党の錬金術を黙している与党や、社会党以外の知事が務める県や市は、人々の支持をひたすら失ってゆく。積極的なカジノ誘致、公害排出で住民からの訴訟が続出する企業を誘致し、CO2排出削減を錦の御旗の様にして原発再稼働を推進し始める 等等・・という異常な手段を採用した各自治体と、その全てを推進している与党の愚かさが、見事なまでの対比となった。

その「対比」が鮮明となったのを絶好のタイミングと見た社会党知事は、「当たり前の行政を、当たり前に推進するだけです。政治に妙手や奇抜な発想は不要です」と事ある毎に発言する。

「王道の政治こそ、真の保守だ!」
1月の都知事選の応援演説で金森富山県知事が発言した言葉が、同党の姿勢を表現しているとメディア各社が評価した。
与党が躍起になって日本社会党のアラ探しをし、中国共産党がプルシアンブルー社を懲らしめようと必死になっても、そもそも与党と中国共産党が率先して問題を起こしているだけの話なので、アラ探しをしようが、懲らしめようと藻掻こうが、全て無駄な出費で終わる。殆どがブーメランとなって、投げた当人に向かってくる。

中国の主席がビルマに投げたボールを、ビルマ最高顧問のスーチー氏がバットで撃ち返す新聞の風刺画が世界中に拡散し、カジノに前向きな都道府県が北陸小県の富山県の経済成長率の足元すら及ばないマイナスっぷりが表に纏められていた。

メディアが揶揄し始めたら最後、世論は追随してしまう。

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出雲市は、梅下元外相の死去に伴い補選が行われる「島根2区」の中で最も人口が多い市だ。
元外相の選挙事務所を継いだ身重の屋崎真麻は、元外相の婚約者だった過去を隠さず、無所属で立候補表明した。

同選挙区では与党もその他野党も候補者を擁立しようと動いていた。しかし、社会党と共栄党が無所属の屋崎候補を推薦するという構図が、注目を集めてしまう。

生前の梅下氏がモリとの関係が有ったので、プルシアンブルー社員だった屋崎候補が、梅下氏と知り合ったのではないか?とメディアが憶測を書く。
梅下氏の女性問題を報じた週刊誌が、産婦人科医に通院した「Aさん」として写真を掲載したが、その女性が屋崎候補者だと明かしてしまうと、所属事務所が梅下氏の事務所でもあり、元首相を排出した梅下家が、梅下氏の子を宿した後継者として屋崎真麻を擁立したのだろうとメディアが報じた。
梅下氏の後継者云々というよりも、社会党・共栄党の推薦を得た元プルシアンブルー社の社員という経歴を人々は歓迎した。
沖縄4区への投資がどうなるか未定なのに対して、同じく投資対象となった宮城・気仙沼市のプルシアンブルー社のテレビ関連の工場と同規模の出雲市内の土地を購入し、テレビ工場と液晶パネル工場を建設すると同社が報じたからだ。

週末は屋崎候補者の支援の為にモリが出雲市にやって来ると、屋崎氏の所属事務所が明らかにすると、メディア各社が出雲一帯の取材に一斉に動き出した。

***

妊娠5ヶ月となった屋崎 真麻の隣には、母の啓子が秘書というより介助役のように寄り添っていた。母娘を撮影しているカメラマン達を見て、啓子は可笑しくて仕方がなかった。
お腹の子の父親が誰なのか、誰も想像も出来ないだろうなと毎度の様に考えていた。

この日もそうで、多くのメディアが集まっている。

次女の真麻は妊娠してからすっかり肝が座り、貫禄さえ見せる様になった。母になろうとする気丈な姿勢から来るものだろうか、時代の寵児の子を宿し、母として恥じられない様に奮起しようと決めたのか?プロセスはどうあれ、真麻はモリと並び立つだけのオーラを纏い始めていた。

プルシアンブルー社副社長の山下智恵が出雲空港に到着すると、母娘で出迎えて、取材に訪れた記者団の質問に3人で応じる事になった。山下への質問は、やはり工場建設に及んでいった。

「御社はベトナムと台湾でテレビ生産を主に行っていますが、宮城の気仙沼市に続いて、出雲でもテレビ生産を始めようとしています。相当数の生産台数になると思うのですが、勝算があるが故でしょうか?」
と地元の記者が切り出した。

「勝算と言うよりも供給先・販売先別の製造拠点となります。
海外工場で生産しているテレビを日本に持ち込んで参りましたが、宮城の工場の生産数増加に伴って縮小していきます。
宮城は日本市場向けのハイエンド機を生産し、台湾のテレビ工場もアジア市場向けのハイエンド機に順次移行します。台湾の現在の生産製造ラインを出雲の新工場に持って参りますので生産開始まで工場建屋の建設期間の2ヶ月、5月連休明けから生産開始を目指しております。出雲工場の生産品は全て朝鮮半島市場向けでして、同地域でのテレビシェアトップを目標としています。プルシアンブルー社はロシア国営放送とタイアップして、朝鮮半島向けの放送局を開局し、高精細映像を放映可能なテレビ受像機を供給いたします。

当社が朝鮮半島へ唯一供給する製品は、テレビ関連製品となる計画です」

山下副社長の発言は、朝鮮半島市場を狙っていた日中韓の家電メーカーを困窮させるものとなった。ロシアの放送局が中央アジア市場への進出と開拓を狙っているのを公言しては居た。
北朝鮮内でも、異なる中央アジアの文化圏やロシア文化をベースにした番組を放映したいと4カ国協議の場でも語っていた。
ロシアがAIによる番組制作をプルシアンブルー社に委託するのも今思えば当然だった。
通常であれば番組制作に多額の資金が必要となるが、プルシアンブルー社の番組製造部門は少額で制作してしまう。

制作費用の大半はAIを稼働させる際に費やす電力消費量が・・番組製造の原価となる。

(つづく)


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