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ブックレビュー

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記事一覧

鈴木悦夫『幸せな家族 そしてその頃はやった唄』(中公文庫)

…あー。書いてみようと思ったんですが、長篇ミステリのレビューって、めちゃくちゃ難しいんですね。「1989年の作品で」「あの有名な」「フーダニットというよりは」と書いただけでもなんか読み了えた自分としては「それは全部ネタバレかもよ!」という気がしてしまう。なので感想は「面白かったのでぜひ読んでください」としよう。ジュブナイルとして書かれているのですらすら読めます。
ちなみにこの文庫を購入される場合は

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筒井康隆『世界はゴ冗談』(新潮文庫)

筒井康隆『世界はゴ冗談』(新潮文庫)読了。
一読して驚嘆。八十歳にしてこのクオリティの短篇群を書けるのはすさまじい。しかも扱っている題材が「震災」「ウクライナ」など。ああ、そうか、この方はもう50年以上も『現代作家』を続けてらっしゃるのだな。
小説についての小説「小説に関する夢十一夜」、メタフィクション「メタパラの七・五人」などなつかしいテーマも健在、さらに「ペニスに命中」や「奔馬菌」などおれが中

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『午後三時にビールを』中央公論新社編(中公文庫)

 完全にタイトルに惹かれて購入した「酒場作品集」。「作品」と銘打っているようにほぼ小説は載っておらず、エッセイ、随筆、短文が大部分を占めている。
 とにかく執筆メンバーがすごく、自分が知っているだけでも、萩原朔太郎、井伏鱒二、大岡昇平、太宰治、坂口安吾、檀一雄、久世光彦、小沼丹、内田百閒、池波正太郎、吉村昭、開高健、向田邦子、安西水丸、田中小実昌、中上健次、島田雅彦、吉田健一、野坂昭如、倉橋由美子

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米澤穂信『満願』(新潮文庫)

米澤穂信『満願』(新潮文庫)読了。
妻が「オーディブルで聴いて面白かった」と勧めてくれたのでぼくは「読んでみたら面白かった」。そうか、今はこんなふうな小説の出逢いもあるのだな。
2014年に数々のミステリー賞を受賞しただけあって、クオリティは保証されているようなもの。考え抜かれた精緻な謎解きの短編が6編収録されている。
ちょっと興味深かったのは妻と僕がともにベストだと思ったのは冒頭の「夜警」だった

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『超短編!どんでん返しSpecial』

小学館文庫編集部 編『超短編!どんでん返しSpecial』(小学館文庫)読了。ミステリ、ホラー、SF、時代小説など、ジャンルの垣根を超えた現代作家さんたちが執筆されており、文字数制限とアクロバティックな決着なんていうダブル制限のなか皆さんそれぞれの技法で果敢にチャレンジしている!と感心した。自分的に「これはすごい」と唸ったのは澤村伊智さん「井村健吾の話」結城真一郎さん、「昼下がり、行きつけのカフェ

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