米澤穂信『満願』(新潮文庫)

米澤穂信『満願』(新潮文庫)読了。
妻が「オーディブルで聴いて面白かった」と勧めてくれたのでぼくは「読んでみたら面白かった」。そうか、今はこんなふうな小説の出逢いもあるのだな。
2014年に数々のミステリー賞を受賞しただけあって、クオリティは保証されているようなもの。考え抜かれた精緻な謎解きの短編が6編収録されている。
ちょっと興味深かったのは妻と僕がともにベストだと思ったのは冒頭の「夜警」だったのだが、妻がピンとこなかった、と告げた「死人宿」がぼくはかなり気に入ったこと。やはり、小説を聴くのと小説を読むという二つの行為にはなんらかの印象の違いを生じるのかもしれない。「柘榴」の評価が分かれたのはまあ、男女だからこれはしょうがない。個人的には「関守」も好みだった。「このくらい」が「ちょうどいい」感じ。
一点だけ気になったのは、「殺人を作者が意図的に起こしている」印象があったこと。まあ、それはミステリーなんだから「作者が意図的に殺人を起こしている」のは明白なんだけど、登場人物的の状況・心情的にそれは無理して殺人で解決しなくてもよいのでは?と思わされる感覚があったのもまた事実。
隠しテーマとしては、明記はされていないが、意図的に「昭和末期」あるいは「平成初期」くらいの時代背景を下敷きにしていると感じた。

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