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(20)女子高生が同級生に将棋の駒の動かし方を教えたら、半年後に近畿3位になった話

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※記憶に基づいた実話だが、個人情報特定を避けてストーリーに影響がないところは改変するかもしれない。

※正確には8ヶ月後である。

6ヶ月後なう

ところで、8月の全国大会のときに私は思った。

「近畿大会、勝てるんちゃう?」

近畿大会に出てくる2府7県(近畿+福井・三重・徳島)から女子団体戦には我がD高を含めて7校出ていたが、うち5校が初戦敗退。1校が1勝して、1校が2勝した(ベスト8)だけだった。

京都府予選で対戦した棋歴1ヶ月の3人よりは強いけど、D高の3人とさほど変わらない。

これは少し鍛えたら勝てるようになるんじゃないだろうか。

女子個人戦で優勝を狙うためのライバルは1人だけ。(詳細は後日)
自分のことは、全国大会より比重が下がった。
みんなただ遊びに行くだけよりもいいだろう。1つくらい勝てるようになったほうが楽しいだろう。

ここから1ヶ月少々で、とにかく勝ちやすい方法を教えることにした。

これまでは「四間飛車+美濃囲い」で、主に棒銀対策として「攻めてきた筋に飛車を回る」とか「戦いが起こった瞬間に角道を開ける」という感じで王道の指し方を教えていた。
ただ相振り飛車になることも多いし、そして私は相振り飛車を全く指したことがなかったし、もっと実戦的な指し方を教えることにした。

すなわち。

・四間飛車+穴熊だ
・できるだけ飛車を成らせるのを遅らせろ
・駒損しても、飛車だけは取れ
・と金を作れ
・二歩に気をつけろ
・と金と相手の駒を交換しろ
・特に、玉の近くにいる金を取れ
・多少駒損しても金を取れ
・角はいらない。金を取れ
・ただし、飛車は捨てるな
・そして、二歩に気をつけろ
・交換して手に入れた駒(特に金銀)は、自陣に打て
・穴熊がまるまる残っていても、打て
・そしたら相手は攻め方がわからなくなるから、その間に大駒とと金を使って攻めろ
・ただし、飛車は捨てるな
・そして、二歩に気をつけろ
・王手はバレる。王手せずに遠巻きに追い詰めろ
・ただし、飛車は捨てるな
・そして、二歩に気をつけろ
・自玉に王手が掛かっていないか、よく確かめろ
・こっそり1手詰を狙え
・ただし、飛車は捨てるな
・そして、二歩に気をつけろ
・そして1手詰にしろ
・ただし、二歩に気をつけろ
・そして、打ち歩詰めは反則だぞ
・団体戦は、詰まされるまで投げるな

「負けました」と言う前に、相手の玉を取れないか見ろ

強くなる方法ではない。1ヶ月後の大会で勝てる可能性が高まる方法だ。

これをとことん言い続けた。

高校生のノリでA・B・Cは「弟子」ということになっていたが、Aは王手飛車取りをかけられたと知っていても「飛車が好き」と飛車を逃がすので、この頃に破門した。

で、ね。

これは約5年後に私が小学生を教えるようになって気づいたことだけど。

やっぱり上位の私立高校に通って、その中でも成績がよかったA・B・C・Eは、賢いんですよ。
賢くて、物覚えがめちゃくちゃよくて、伝えたことを対局で実現させる能力が高かったんですよ。
そしてこの1ヶ月は、みんなたくさん指した。あっという間に、穴熊で大会に勝つ指し方を身につけていった。

当時は私の教え方がうまいから残した結果だと思い上がっていたけど、あとから思うと彼女たちのもともとの能力と、私のめちゃくちゃな教え方についてきて練習してくれた結果が、この連載のタイトルになっている。

(21になるね)

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