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(22)女子高生が同級生に将棋の駒の動かし方を教えたら、半年後に近畿3位になった話

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※記憶に基づいた実話だが、個人情報特定を避けてストーリーに影響がないところは改変するかもしれない。

※正確には8ヶ月後である。

7ヶ月後なう

10月下旬、高校新人戦の京都府予選が行われた。

新人戦は1・2年生対象で、2年のときには全国大会でベスト8に入った。
(高校1年のときはそんなに簡単に全国大会に行けるのを知らなかったので将棋部に入っていなかった)

私たちは高校3年生だったが、京都府予選は「京都府高校総合文化祭将棋部門」を兼ねていたので3年生も出場できた。
だいたいは受験や進学も踏まえて部活自体が高3の夏休みまでらしく、ここに出る3年生はほとんどいないのだが。
まあ、出られるから出るよね。

この大会はスイス式トーナメントだった。
「スイス式トーナメント」は指し将じゃないとなじみがない言葉だが、要するに総当たりではないリーグ戦だ。
ただし同成績の人と当たるので、全勝者はひたすら全勝者と当たる点がトーナメントと呼ばれる所以。

京都の高校将棋界は運営者にスイス式の鬼みたいな人がいて、5月の高校選手権予選以外はだいたいスイス式で行われていた。
(後年、全国高校将棋選手権は京都府開催になったときから1日目がスイス式トーナメントに変わり、現在に至っている。この形式だと1局で終わることはなく、観光に行けないのでこの物語は誕生していなかっただろう)

前年はA~C級に分かれていて、私も含めた女子の出場者3人が全員C級の棋力だったので、1戦目・2戦目・3戦目で意図的に女子同士を当てることでC級と女子の部を同時進行した。
その結果、私は1つの大会で女子の部とC級の2つ優勝した。

今年は私たち4人(Eは何らかの事情があって欠場)が出ることもあって女子の部に10人エントリー。M高の2人、そして春の女子団体戦で激闘を繰り広げた相手校のメンバーもいた。

春の高校竜王戦予選のような5分切れ負け女子の部をやるわけにもいかない人数なので、男女別で開催することになった。
私は男子のB級で出てもいいよと言われたような気もするが、よく覚えていない。

10人で6局指すスイス式。1、2回戦目は同校対決が避けられた。

3回戦あたりで異変に気づいた。

A・B・Cがさくさく勝つのだ。

特にCが、M高の2人に勝ってしまった。Cは春の女子団体戦ではあんなことをしたが、全国大会でも唯一勝ったし、A・B・Cの中では香車1枚抜き出た棋力で、6枚落ちで負ける回数も一番多かった。

そう。
この頃になると私は彼女たちに3面指し6枚落ちでもたまに負けるようになっていた。
私も強くなったはずなのに。

M高顧問のH先生は京都府の一般大会で優勝したこともある京都では知られたアマ強豪で、2年間教えてきた生徒が、3級の女子に半年教わっただけの子に負けたことにショックを受けた様子だった。

私もびっくりですよ、そんなん。

全勝同士が当たるので3回戦か4回戦で私とCが当たり、ここは私が勝った。
全勝者が1人になると、当たっていない人の中で成績上位の人と対戦することになる。
私は5回戦あたりでバレエ女子Bと対戦した。

このとき。

負けそうになった。

この対局中、私はすごく体調が悪くなったことを覚えている。吐き気が止まらなく、体温が下がってきた。

もともと体調がよくなかった可能性があるが、自分が圧倒的に強いはずの中で追い上げてきたのが、自分が半年間教えた同級生だというのが極度のプレッシャーになったのかもしれない。
またBも「どうせ負けるから」というノリですごくのびのび指していたのだと思う。
あ、将棋の内容は覚えていません。

最終的になんとか勝ったが、もう、本当に「なんとか勝った」というのがぴったりの大苦戦だった。

結果として私は全勝優勝。
Cが2位、3・4位がM高の子で、5位にB、6位にAが入った。
新人戦の全国大会は4枠あり、3・4・7・8位が出場している。

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(表彰状を引っ張り出したら、名前が鉛筆書きのままだった)

3位のM高生は夏の全国大会の女子個人戦で2勝しているので、Cもこの時点で女子個人戦に出ていたらくじ運次第でベスト32くらいには入る実力になっていたということだ。

そして7~10位の子には、3人とも勝てるようになっていた。

私たち全員に自覚がなかったが、急に実力が伸びていたらしい、とこのとき気づいた。

いよいよ翌週に、近畿大会が迫っていた。

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