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(6)女子高生が同級生に将棋の駒の動かし方を教えたら、半年後に近畿3位になった話

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※記憶に基づいた実話だが、個人情報特定を避けてストーリーに影響がないところは改変するかもしれない。

※正確には8ヶ月後である。

3ヶ月後なう

無事に高校選手権(全国大会)出場を決めた我々D高校将棋部の女子メンバー4人。実力で全国大会を勝ち取った責任感からか、女子団体戦の3人も多少なりとも格好をつけねばならないということで、定期的な練習が始まった。

ところが教える立場にあるのが推定5級の私しかいない。

私だって、前年の高校選手権は準々決勝敗退だったので準決勝に行きたい。

当時は女子個人戦のベスト4が、8月下旬にある高校竜王戦(男女別のない個人戦のみの全国大会)に女子推薦枠で出場できた。

ちょうどこの頃に高校竜王戦の京都府予選があって私だけ出場したが、クラス分けがあったので上から2つ目で出た(3勝2敗)。申し込み時点で挑戦権すら得られていない。

~~おまけ話~~

この高校竜王戦府予選には全国大会にはつながらない女子の部があり、M高の2人と私が参加した。
しかし3人とも上記の男女混合のクラスに出ていて指す時間がなかったので、表彰式までのわずかな時間に5分切れ負けの総当たり戦で女子の部が開催された。
スワ史上、最も持ち時間が短い大会だった。死ぬまで更新されないだろう。
大ポカで敗勢になった対局もあったが時間で勝ち、無事優勝した。

~~以上おまけ話~~

男子なら有段者でも都道府県予選を勝ち抜くのが大変なのに、女子の将棋人口が少ないおかげで推定5級でもチャンスがあるのだ。

そのためにはさすがに推定5級では足りない。強くなりたい。

でも、団体戦メンバーの3人も強くしないといけない。

そこで私は、お互いが鍛えられる方法で部活を行った。

6枚落ち3面指しである。

当時は関西将棋会館道場の最低級が10級なので、道場で3級を名乗って指していた私は、大駒落ちまでしか上手を持つ機会がなかった。

それをいきなり6枚落ち3面指し。しかも対局中にアドバイスをしたり(ののしったり)、終局後に感想戦をしたり(けなしたり)する。

脳内の将棋盤の稼働率が、急激に上がった。

さらによかったことが、私が定跡をほとんど知らないことだった。

定跡を知らないということは定跡を教えられないのだから、ただひたすら将棋の「考え方」を伝えることになった。
結果的にこれが、未知の手にも動揺せずに最善手を考える訓練になった。
私自身も思考を言語化することで、知識の再確認を行えた。

私自身の棋力向上についてこれ以外は、前年から通うようになっていた指導棋士の野間先生の教室での指導対局と、関西将棋会館道場での対局、それにNHK将棋講座とNHK杯の視聴。
ただし野間先生の教室は高校と同じ京都市内とは言え通学定期券の圏外で行くのがめんどくさく、月1回程度。(後年、将棋業界で仕事を始めた頃、野間先生に「まさか君が将棋を続けるとはなあ」と言われた)
関西将棋会館道場も定期券で行けないところなのでこちらもめんどくさく、月1回以下。行った時点で疲れているので1回4局程度。
総合すると実戦は95%が6枚落ちの上手、残りの4%程度が野間先生との2枚落ち指導対局なので、平手はほぼなかった。

将棋世界は読んでいたが難しい話はよくわからず、週刊将棋は自分の大会結果が載っているときしか買っていなかった。近代将棋は存在を知らなかった。
20世紀なのでハンドブックシリーズはまだなく、詰将棋は「詰棋ドリンク」と「詰将棋パワードリル」だけを繰り返しやっていた。1日1~2問程度。
棋書は買っていたが、難しくてほとんど読んでいない。というか20年経っていまだに読まずに置いてある。
代わりに入門書を買って読んでいた。ルールだけでなく戦法や手筋が載っていると気づいたので、それなら最後まで読めたし、一番勉強になった。

あと河口俊彦先生の本を買い集めるようになっていたが、エッセイなので棋力向上には関係ない。
それと先崎先生のエッセイが好きで、先崎先生の師匠なので米長先生の著書も集めていた。
たいていのエロい日本語は、この頃に米長先生の本で覚えた。「空売り」も知った。大人の階段。

あとから振り返れば努力が全く足りないが、自分の棋力が上達するには、自力でなんとかするよりも周囲の環境をよくすることが大事だと考えていた。
将棋は、人に教えてもらって、人に強くしてもらうものだと思っていた。

ちょうどその頃、ある行事があった。渡りに船だと思った。

(Go To 7.Maybe)

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