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ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)

多様性が調和する共生社会とは?

「多様性の時代」と言われていますが、改めて「多様性」って何でしょうか?
ダイバーシティは「多様性」「一人ひとりのちがい」を意味します。
​それを認める・尊重するだけが「多様性の時代」ではありません。
なぜ、インクルージョンも一緒なのか? なぜ、D&Iが必要なのか?
これから説明していきたいと思います。


1「多様性」は多岐にわたる

まずは一般的に、多様性とは、年齢、人種や国籍、肌の色、言語、心身機能、性別、性的指向、性自認、宗教・信条、価値観、キャリアや経験、働き方、企業文化、ライフスタイル など多岐にわたります。

いかなる種類の差別がなく、互いを認め合い、誰もが自分らしく生きられる共生社会が目指されています。

(1)市民とワークショップで見えてきたこと

「多様性って何」を15分対話→シェア→「多様性をどうしたら社会はよくなる?」を15分対話→シェアしたときのワークショップの様子。今の時代、一般社会において多様性の認識は大変高まっていることが伺えます。なお、アイスブレイク的にも多様性のことを考え合うのは有効です。
市民から出てきた多様性を「外側・表層的な多様性」と「内側・深層的な多様性」に分類。さらには、「それぞれの中のもっと深い部分」や「そもそも一人一人が多様性」というすばらしい意見も。
どの地域でワークショップしても、多様性について学び合ったり、知り合ったり、認め合ったり、尊重し合ったりという段階の意見が基本的に多いです。

(2)多用性を認め合うのは当たり前の時代

「ダイバーシティを推進しよう」と多様性に着目した取組のほどんどが、「多様な人々を受容できる体制づくり」がメインでした。

そこで、私たち「サステナブルタウン」で力を入れて取り組んでいる考え方が、​東京2020オリンピック・パラリンピックの3大キーワードであった「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」です。

いま、多くの企業や自治体等で戦略・計画に取り入れられています。

(3)これからは「多様性を活かし合う時代」

インクルージョンとは「包摂・包括・包含」「受け入れる・活かす」を意味します。
ダイバーシティだけでなく、インクルージョンも。D&Iは、何のために必要なのでしょうか?

それは、価値創造につなげるためです。お互いを理解し、多様性を尊重するからこそ、個々の人財が力を発揮できます。多様な人々が互いに影響し合い、異なる価値観や能力を活かし合えます。

そういった関係性の構築がイノベーションを生み出し、価値創造につなげることができます。

これが、私たちみんなで実現していくこれからの日本社会の姿です。

2 ダイバーシティ&インクルージョンとは

(1)簡単なD&Iの理解

まずは、簡単に3段階で説明します。

多くの多様性の議論の中では、図の真ん中の「多様性の受入」の段階に留まってしまっています。そのような狭義の福祉的な意味合いから脱却して、D&Iのフェーズにコミュニティを高めていく高めていくためには、どのようにしたら良いでしょうか?

(2)簡単なD&Iの理解を料理に例えると・・・

上記(1)の段階で、市民の皆さんと共に「D&I」を料理に例えてみるワークショップを行いました。たくさんおもしろいアイデアが出てきます。

「そうか、海の多様性を活かし合うと、「海鮮丼」ができる!」
「一つ一つの魚や卵は単独でもおいしいけど、海鮮丼だとハーモニーだよね!」といった意見も。

「トマトだけでもおいしいけど、葉物とか枝豆とか、きゅうりとか、いろいろ入っている中のトマトもまたおいしいんだよなぁ」
「野菜とは違うけど、生ハムとかどう?」といったご意見がありました。

(3)D&Iを妨げる原因

❶ 対立を生む「同質性」
「女」「高齢者」「外国人」等々といった同質性は、対立を生んでしまいます。
「男と女」「若者と高齢者」「日本人と外国人」といった同質性からの脱却によって、「自分自身に潜在するバイアス(偏見)」や「凝り固まった思考パターン」に気づくことができます。
それが、「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」と呼ばれるものです。

❷ アンコンシャスバイアス
例えば、以下のようなものがあります。

同調性バイアス(マジョリティバイアス) ※集団
集団に所属することで、同調傾向・圧力が強まり周囲に合わせてしまう
例 ◆満場一致の雰囲気に合わせる。
  ◆ハラスメント的な指導の常態化に誰も意見しない。

アインシュテルング効果 ※集団
慣れ親しんだ考え方やものの見方に 固執してしまい、他の視点に気づかないor 無視してしまう
例 ◆過去の成功体験にこだわる。
  ◆前例がないと許可されない。

ステレオタイプバイアス ※個人
あるグループに所属するものには 特定の特徴があると判断する。
例 ◆高齢者=ITが苦手
  ◆外国人=英語を話す
  ◆A型=きれい好き・几帳面

慈悲的差別 ※個人
少数派に対する「好意的ではあるが勝手な思い込み」
例 ◆「車いす使用者だから○○できないから、私がやろう」
  ◆「子どもがいる女性には、負荷の高い業務を任せられないな」

アンコンシャスバイアスは、多様性を活かし合うことの邪魔になります。
そして、ネガティブな連鎖を生み出してしまいます。

アンコンシャスバイアスは誰にでもあります。ですので、それを自覚すること・防止することが大事です。
同僚や仲間と「それってアンコンじゃない?」「それは偏見だよ(笑)」と気軽に言い合えるような関係づくりが大切と思います。

❸ 多様性の軸を増やすことが大事
「男と女」「若者と高齢者」「日本人と外国人」といった多様性の一軸しかない状況が問題となります。対立や同質化の原因となります。
ですので、多様性の軸を増やすこと、特に「内側の多様性」を活かすことがとても重要なポイントです。

(4)改めてD&Iの理解を料理に例えると・・・

では、上記を踏まえて料理で例えてみるとどうなりますでしょうか?

鍋には、野菜の他に、出汁があります。魚介や肉、キノコやこんにゃく、豆腐など、たくさんの多様性をまさに活かし合う料理です。
先ほどの、サラダの例でも生ハムやドレッシングなど、多様性を活かす視点が市民の皆さんからも意見が出ていたのも、ふりかえるとポイントですね。

3 D&Iをより深く

(1)さらに進んだD&I

さきほど、この3段階で説明しました。

この先、もっとD&Iを進めるためには、こうなります。

これまで、均一的な色として「グレー」で着色していた一人一人が、たくさんの可能性を持つ人として「カラフル」になりました。
「部長の田中さん」「自治会長の佐藤さん」ではなく、「田中さんはどんなことが好きなのか、得意なのか」「田中さんは、普段どんなことをしているのか、どんな課題意識を持っているのか」などと、属性に縛られずにコミュニケーションとれると、多様性、可能性、価値といったことがどんどん見えてくるはずです。
そして、そういう文化のあるコミュニティを目指していくことが大事です。

(2)アンラーニング

多様性を尊重するためにお伝えしたい言葉があります。
You must unlearn what you have learned.
映画『スターウォーズ』マスター・ヨーダの教えです。                             
LEARN=「学ぶ」ですが、では、「学ぶ」の反対とは、どういう意味でしょうか?

UNLEARNとは「学びほぐし」として知られています。

学びほぐしとは、「今までの知識・経験」と「新たに学び得たもの」をもとに再構築する考え方です。
これが、D&Iに必要な姿勢だと思います。

では、学びほぐすためにはどうしたら良いでしょうか?
一つの答えとして、「ワークショップが有効」とお伝えいたします。
参加体験型の学びの場において共通の体験を通して他者への理解を深め合うことがコミュニティにおいて重要だと思います。

そして、D&Iなワークショップをしていくためには、やはり、私たちの意識の変革が必要です。多様性を「共に社会を作っていくパートナー」として捉える意識です。

4 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)

「ダイバーシティ&インクルージョン」に「公平/公正性(Equity)」という考えをプラスした概念をDE&Iと言います。

エクイティ(公平性)とは、さまざまな情報や機会へのアクセスが、公平に保証されている状態を指します。
なお、似たような言葉として「イコーリティ(平等)」とは、一人ひとりの違いには着目せず、すべての人に同じ情報や機会を提供する概念を指します。

DE&Iはイラストで捉えた方が分かりやすいです。

身長の異なる3人がいます。
同じ3つずつ台を積み上げた状態です。
同じ高さになるようにそれぞれにあった台を積み上げた状態です。

DE&Iは、そもそも社会には不平等な構造があり、誰もが同じスタートラインに立っているわけではないことを前提としています。

平等に対生し整備したり支援するということで終わるだけではなく、それぞれの人に対して必要なサポートの工夫ができているかという視点で見直ししてみることが大切です。
公平な機会のもと、多様な人材が互いに尊重しあい、力を発揮できる環境を実現するという概念がDE&Iとなります。

5 まとめ

まちづくり・組織づくりには、D&Iが大事とお伝えいたしました。
「多様性をどう活用するか」という、よりアクティブな展開が地域や組織において求められていると思います。
お互いを理解し、多様性を尊重するからこそ、個々の人財が力を発揮できます。多様な人々が互いに影響し合い、異なる価値観や能力を活かし合える文化が、イノベーションを生み出し、価値創造につなげることができると思います。

例えば、「男性・女性」といった多様性だけでなく、もっともっと様々な多様性を尊重し、一人一人の可能性をもっと活かし合える「D&Iな社会」へ!

このまちの多様性は「いっしょに社会を作っていくパートナー」という意識を持つと、可能性がもっとたくさん見えてきます。

多様性が調和する共生社会を目指して今日から、あなたもD&Iの実践者に!

おわりに

私たちサステナブルタウンでは「地域に暮らす一人一人が環境・社会・経済にとって最良な選択を見つけられる”サステナブルな地域社会”を日本中にたくさん作る」ことをミッションに活動しています。

◆ まちづくり活動、生涯学習、社会教育、市民活動、地域共創
◆ イベント学(プログラム作成・運営ノウハウ等)
◆ 公共施設や都市計画のソフトづくり(地域共創のワークショップ)
◆ コーディネート、コミュニティ活性化、WS運営
◆ チラシ・ポスター作成
◆ ポートランドのまちづくり
◆ 観光・おもてなし
◆ 多文化共生
◆ 多言語対応
◆ やさしい日本語×多言語音声翻訳
◆ 東京2020オリンピック・パラリンピックとまちづくり
◆ SDGs
◆サステナビリティ
◆D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)
◆レガシー
◆男女共同参画 など

さまざまな分野にて、2012年より、全国各地にて、その地域の課題に合わせて講座や講演会の内容・方法を考えて取り組んできました。
学びの力でより良い社会づくりを目指す活動を行う専門家として、これからもご要望に応じて取り組んでいきます。


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