「梅雨と不快感」

家への帰り道。雨が勢いよく降り注いできた。近くのマンホールが喉を鳴らしながら、雨水を飲んでいく。近くでは雨を祝福していると言わんばかりの勢いで蛙が鳴いている。

 今のこの世は彼らにとって地上のパラダイスなのだろう。僕にとっては鬱陶しい事この上ない。彼らのように雨を喜ぶ歓声もなければ、共有する仲間もいない。

 ただ、靴も靴下に染み込んでくる強烈な不快感こそこの雨に対する印象でしかない。不快だ。歩くたびに不快感が襲ってくる。そして、僕の不快感を燃料にしているかのように雨が強さを増していく。

 しばらくすると家についた。雨で重くなった体で家の扉を開けると、母が出迎えてくれた。

「ささっと風呂入ってきなさい」
 母にそう言われると僕はすぐに風呂に向かった。濡れた衣類を脱ぎ捨てて、風呂に浸かった。雨で冷えた体が一気に暖かくなっていく。

 温かい風呂と雨の音。対極な二つを感じながら僕は浴槽に潜った。

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