蛙鮫

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初めまして、小説家志望の蛙鮫です! noteで毎日投稿開始! 下記の投稿サイトでも毎日投稿しています!よろしくお願いします! https://kakuyomu.jp/users/Imori1998  Xとインスタもやってます! よろしければフォローお願いします!

最近の記事

「時を超えて」

時間潰しに立ち寄った中古CDショップの奥深く。僕は感動を覚えていた。かつて応援していたアイドルのCDが売られていたのだ。今から二十年ほど前になるだろうか。この国に活気を招いた伝説のグループだった。今はもう解散して、メンバーは各々の幸せを求めているがこうしてCDを見ているとあの頃が甦ってくる。  僕はCDを購入して家に持ち帰った。早速、ディスクで読み込むと音楽が流れていた。僕は泣いていた。今では音楽の流行もアイドルの形も変わった。この時代、いや彼女達にしかなかった曲があったの

    • 「盲目の羊達」

       晴れた日の休日。大勢の仲間達と国会議事堂に向かって歩いていく。真実を刻んだプラカードを掲げて、拡声器に思いを乗せる。 「ダークマンズ! 世界は奴らに支配されている!」 「真実を報道しろ!」 私達は政府の役人が隠している真実を打ち明けるように叫んだ。それを聞いて国会議事堂前に集まっていた警察達も眉間に皺を寄せた。  奴らもダークマンズを知っているのだ。 警察も奴らの手先だ。私が真実を言ってからは夫や娘。両親までも離れていった。    他の人達はこの世界の真実に気づいて

      • 「アナコンダ飲み込んだ」

        しくじった。暗闇の中、後悔を抱いた。同時に言葉が出ない程の圧迫感を感じる。    ただの好奇心のつもりだった。この大蛇の腹の中はどうなっているのか。ただそれを知りたかった。だからアマゾンまで遥々やってきた。しかし、その姿を見た途端に怖気を感じた。  引き返そうとした時,背後から近づいていた別の個体にやられた。  巻き付かれた途端、後悔した。慈悲なき圧迫感と殺意。  かろうじて声を出しても、帰ってくるのは異国の鳥の鳴き声のみ。やがて巨大な口が僕を覆った。  これから僕は

        • 「プロバス」

          親父が逝った。風呂に入っていた時にそのまま旅立ったそうだ。いつお迎えが来てもおかしくなかった年齢だったせいか、妙に受け止められた。まあ死因が風呂なら親父も本望だろう。  昔から親父は風呂が好きだった。一番風呂を譲らなかった。親父は風呂にはうるさかった。適切な温度じゃないと絶対に出てくる。理由を聞くと疲れの取れ方が温度によって違うとのことだった。  すると風呂側の方から風呂が沸いた音が鳴った。湯船に浸かりながら、目を閉じる。 「やっぱ分からんな」  重いため息が浴室の中で

        「時を超えて」

          「火炎と醜悪」

           自室の近くで凄まじい爆発音が聞こえた。あまりの音の大きさに思わず、目が硬直する。しばらくして、爆発音の呪縛が解けると僕は窓を開けて、ベランダに出た。辺りを見渡していると少し離れたマンションの一室でアパートが燃えていた。おそらくあれが爆発の元だ。  周囲の家からは僕同様に玄関から多くの人が顔を覗かせていた。その中には呑気にスマホを取り出して、火中の家を撮影しているものまでいた。そんな醜い人間達に嫌気を感じていると消防車が現れて、消火活動が始まった。燃え盛る建物を相手に消防隊

          「火炎と醜悪」

          「カナブンと鬱屈」

          ボロボロの足取りでゆっくりと家に向かっていく。昼間に浴びせられた上司の叱責の嵐で僕のメンタルは壊滅に追い込まれていた。  俯きながら、アパートの階段を一歩ずつ上がっていく。視界に異物が映った。  カナブンが潰れていたのだ。玄関扉の前、時間も経っているせいか、体のほとんどが粉末になっている。今まで全く気づかなかった。この粉末状の死体はもしかしたら僕がやったのかもしれない。もしくは誰かが払いのけたやつか。  どっちにせよ。カナブンは死んでいる。カナブン。カブトムシもどき。少

          「カナブンと鬱屈」

          「塗り固める」

          スーパーの商品棚を眺めていた。目の前にはビタミンCを配合した炭酸飲料が置かれている。広告にはレモン何百個分のビタミンC配合と書かれている。実に馬鹿らしい。レモン何百個分のビタミンCなんてあたかも多そうに見えるが,実際レモンのビタミンなんて高が知れている。  ブロッコリーやパプリカを食べた方がよっぽど良い。こういう売り方は全国どこに行っても見られる。まどろっこい言い回しの広告を意図的に作って,大衆から金をもぎ取る。言い方は悪いがこういうことだ。  本当ならもっと直球な言い方

          「塗り固める」

          「さらば」

          「よし。これで終わりだな」  もの一つない夕暮れのワンルームで僕は背伸びをした。引っ越し作業を行なっていたのだ。今日,僕はこの家を去る。二年契約で新しいところに行こうと考えたのだ。  数日前までもので溢れていた部屋がやけに寂しくなったのを見て、初めて物件を見にきた時の事を思い出した。窓から指す暖かな陽射し。汚れひとつない美しいフローリング。この後も何軒か回る予定だったが直感が僕を突き動かした。  ここにはたくさんの思い出がある。腹が引きちぎれそうなくらい笑ったこと,希死念

          「さらば」

          「夏の夜」

           夜の街を散歩していた。夏の夜の生ぬるい風を感じながら,静まり返った街を観察する。日中は人で賑わい,活気あふれる商店街も夜になればゴーストタウンさながらの寂しげな空気が漂っている。  しばらく歩いていると見知らぬスーパーがあった。普段行かない場所ということもあり、スーパーがあるなんて知りもしなかった。スーパーの中に入ると辺りだが普段行くスーパーとは内装も品揃えが異なっていた。  ある程度、見て、お菓子をいくつか購入してスーパーを出た。新しい場所に行くということになった自分

          「夏の夜」

          「スタジオの戦争」

          眼前の向こうで無数の虫がいた。ムカデ。ハチ。アブ。どいつもこいつも毒虫ばかりだ。人類の敵。  これまで多くの人々が奴らに苦しめられてきた。僕がここで戦わなければならない。  勇気を振り絞って走り出した。武器を取り出して,引き金に指をかけた。  毒虫が一匹また一匹と倒れていく。それでも次々と湧いて出てくる。血生臭い行為をしている最中、脳裏によぎるのは愛する妻とこの笑顔。二人の笑顔を守るために俺は何度も引き金に指をかけた。  しばらくすると奴らは動かなくなった。足元に散ら

          「スタジオの戦争」

          「道具だとしても」

          灼熱と向き合いながら、刀を打っていた。余分な要素を取り除くために熱を持った刀を叩いた。そして、冷やすために水をつけた。  叩く。叩く。水につける。叩く。叩く。水につける。一日を通してそれを続ける。時間が経つごとに頭に巻いた布が汗を吸って重くなる。そして、吸いきれなかった布から汗が流れ出る。  正直、かなり過酷だ。しかし、これが俺の生き甲斐だ。しばらくすると打った刀が出来上がった。  数日後、街を歩いていると凄まじい腐臭が漂ってきた。臭いが気になった為,辿っていくと武士達

          「道具だとしても」

          「猿飲み」

           店員が慌ただしく走り回る店内。僕はカウンターで一人、酒を飲んでいた。毎週金曜日はこうして、カウンターでしっぽりと飲むのが日課だ。  近くの席が一際騒がしい声が聞こえた。大学生であろう若いグループが酒を飲んで、はしゃいでいるのだ。酒の味を覚えたてのケツの青いガキだ。顔が若干顔抜けていない。おそらく大学一年生といったところだろう。醜い。なんとも醜いものだ。 猿そのものだ。誰だ。動物園から猿を逃したやつ。いや、違うか山から降りてきたのか。  他の客や店員達も大学生達を見て、顔

          「猿飲み」

          「心の体温計」

          「お前! こんな事も出来ないのか!」 「すみません!」  冷房が効いたオフィスの中、上司が僕を恫喝していた。 「とろとろしやがって! 俺がお前と同じ歳はもっと出来たけどな!」  上司が声を荒げている。きつい。かなりきつい。ここしばらくこんなことばかりだ。いや、この会社に入社してからこれだ。あまりのストレスで声が聞こえ中唸った。きっと現実逃避しかかっているんだ。  突然、脳裏に子供の頃の記憶が蘇った。緑生い茂る田舎の祖父母の家で過ごしていた時のことだ。祖母がいつもこういっ

          「心の体温計」

          「無機質な命を彩る」

          朧げな視界が右往左往に揺れる。絵を描くたびに作品に命を吸い取られていく気がした。両頬を強く叩いた。開けた視界を使って、再びペンを動かした。 「ダメだ。書き直し」  監督から指摘を受けて,また命を紙に注ぐ。何度も何度もその繰り返し。隣では同僚が無表情でコーヒーを流し込んでいる。近くのゴミ箱を見ると山ほどのコーヒーやエナジードリンクの缶が転がっている。  飲もうとも考えたが、僕は仕事はあと少しだ。再び、鉛筆を握った。  しばらくしてアニメが完成した。血も汗も涙も全て紙に注い

          「無機質な命を彩る」

          「片手間」

           ファストフード店の中、僕はあたりを見ていた。皆、ハンバーガーやポテトを食べている飲食店ではごく当たり前の光景が広がっている。しかし、唯一、違和感アを覚える点がある。皆、スマートフォンを触りながら、食事をとっているのだ。  大昔、我々の人類は食糧を手に入れた時、それはそれはありがたがったそうだ。それに比べて今はどうだ?食事に見向きもせず、手元の液晶画面に夢中だ。  食べ物のありがたみを忘れた現代人。なんて悲しいことだろう。まあ僕自身も今、ハンバーガー片手にこの文章を書いて

          「片手間」

          「モラルを喰う者」

           テレビの向こう側で男性が深々と頭を下げていた。この男性は有名な芸能人で不倫を働いてしまい、世の中から大バッシングを受けていたのだ。彼の無数のシャッター音とフラッシュが彼を逃すまいと覆っていた。彼に向けられるたくさんのレコーダーやマイクも命を狙う拳銃にも見えた。  不倫報道はテレビで飽きるほどみてきた。正直、こういうトラブルは身内で解決すべきなのだが、芸能人となればそうもいかない。週刊誌に食い物にされて、当事者達の間では問題は解決しているのに別の場所で火をつけられるのだ。週

          「モラルを喰う者」