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スポーツと寿命

📖 文献情報 と 抄録和訳

スポーツと長寿:国際的なアスリートを対象とした観察研究

📕Altulea, Abdullah, et al. "Sport and longevity: an observational study of international athletes." GeroScience (2024): 1-13. https://doi.org/10.1007/s11357-024-01307-9
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[背景・目的] 人間の寿命はさまざまな要因に影響を受けるが、その中でも身体活動は重要な要因のひとつである。運動が健康と長寿に明らかに有益であるにもかかわらず、さまざまなスポーツと寿命との関連性についてはまだ十分に検討されていない。そこで、強固な線形回帰モデルを使用して、元アスリートを対象とした大規模な国際コホートにおけるこの関連性を調査することを目的とした。

[方法] アスリートに関するデータを公開情報源から収集し、合計95,210件の観測値を蓄積した。そのうち95.5%は男性によるものであった。このデータセットは、183か国、44のスポーツ分野における1862年から2002年の間に生まれたアスリートを代表するものである。性別、死亡年、国による差異を考慮しながら、アスリートと対応する参照集団の年齢差を測定することで、寿命の変化を算出した。

[結果] さまざまなスポーツが寿命に異なる影響を与えていることが明らかになった。また、男性アスリートの方が女性アスリートよりもスポーツから恩恵を受けやすいことも分かった。

■ 寿命を延ばすスポーツ
1. 棒高跳び: +8.4年 (95% CI [6.8, 9.9])
2. 体操: +8.2年 (95% CI [7.4, 9.0])
3. フェンシング: +6.6年 (95% CI [5.8, 7.4])

■ 寿命を短縮するスポーツ
1. 相撲: -9.8年 (95% CI [-11.0, -8.6])
2. バレーボール: -5.4年 (95% CI [-7.0, -3.8])
3. 登山: -3.8年 (95% CI [-4.9, -2.6])

ラケットスポーツ(テニスやバドミントンなど)は、男女の選手ともに一貫して正の相関を示し、男性では5.7年(95% CI [5, 6.5])、女性では2.8年(95% CI [1.8, 3.9])の寿命延長が認められた。

[結論] 決定的な証拠は得られていないものの、観察された結果は各スポーツの好気的および嫌気的特性に起因するものであり、混合スポーツが寿命に最大の利益をもたらす可能性があると考えられる。女性アスリートの結果については慎重に解釈すべきであるが、この研究はスポーツと寿命の間の複雑な相互作用を明らかにし、身体活動と人間の寿命に関する知識の蓄積に貢献している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「スポーツは身体に、健康に良いですので、どんどんやりましょう!」

という風潮があるし、実際やった方がいいとも思っている。
だが、今回の抄読研究から、「それってスポーツ種目によって違いません?」ということに改めて気がついた。

今回のメタ解析では、アスリートのスポーツ種目と寿命の関連を調査しており、その中では寿命を延ばすスポーツと、むしろ寿命を短縮させるスポーツとがあった。
なぜ、そのスポーツが寿命を延ばすのか、あるいは短縮させるのか。
そのミクロな理由にまで迫ってはじめて、解釈が可能になることなのだろうが、種目によって両方向の影響を与えうるということは驚きだった。
単純に、スポーツを推奨すれば良い、というわけではなさそうだ。

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