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慢性疾患を予防。最適な食事パターンとは?

📖 文献情報 と 抄録和訳

慢性疾患予防のための最適な食事パターン

📕Wang, Peilu, et al. "Optimal dietary patterns for prevention of chronic disease." Nature Medicine (2023): 1-10. https://doi.org/10.1038/s41591-023-02235-5
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[背景・目的] 複数の食事パターンがさまざまな疾患と関連しているが、健康全般を改善するための比較可能性はまだ明らかにされていない。

[方法] 最長32年間にわたる米国の医療従事者205,852人の前向きデータを使用した。2つのメカニズムに基づく食事と6つの食事勧告に基づく食事を、主要な心血管疾患(CVD)、2型糖尿病、がんの複合アウトカムとして定義し、前向きに検討した。

✅ 2つのメカニズムに基づく食事と6つの食事勧告に基づく食事の詳細
①AHEI-2010、Alternative Healthy Eating Index-2010:慢性疾患のリスクを予測するために食品と栄養素に焦点を当てた追加のコンポーネントを組み込む証拠ベースの勧告に基づいているた指標。
②AMED、Alternate Mediterranean Diet score:9つの要素(ジャガイモを除く野菜の合計、フルーツの合計、ナッツ、豆類、魚、全粒粉、MUFA/SFA比、アルコール、赤肉・加工肉)を含み、Trichopoulouらが開発した地中海食スコアを応用した指標
③hPDI、healthful plant-based diet index:健康的な植物性食品(果物、野菜、全粒粉、ナッツ類、豆類、お茶、コーヒーなど)の摂取が多く、不健康な植物性食品(精製穀物、高糖質食品など)および動物性食品の摂取が少ないことを示す指標
④DASH、Dietary Approaches to Stop Hypertension score:高血圧(ハイパーテンション)の治療や予防に役立つように考案された健康的な食事プラン。DASH食には、カリウム、カルシウム、マグネシウムを豊富に含む食品が含まれている。食事療法では、ナトリウム、飽和脂肪、加糖の多い食品を制限。その指標。
⑤DRRD、Diabetes Risk Reduction Diet:GI、穀物繊維、多価不飽和脂肪と飽和脂肪の比率(P:S)、トランス脂肪の4要素に加え、砂糖入り飲料(SSB)、コーヒー、ナッツ、赤肉・加工肉などインスリン抵抗性に影響を与えるこれらの項目で構成する食事指標
⑥WCRF/AICR、World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research dietary score:第3次専門家報告の10項目のがん予防勧告のうち、8項目の遵守度を数値化するためのシンプルで標準化された指標
⑦rEDIH、reversed empirical dietary index for hyperinsulinemia:血漿中のc-ペプチド濃度を予測する全食事療法の能力を評価する、有効な食品ベースの食事指標
⑧rEDIP、reversed empirical dietary inflammation pattern:食品群の摂取量から食事の炎症性を評価する、近年提案されている仮説に基づいた指標

[結果]
■ 8つの食事パターンの分析
・一般的に、健康的な食事をすることは、主要な慢性疾患(主要な心血管疾患、2型糖尿病、全癌の複合)の発症リスクの低下と関連していた。
・低インスリン、低炎症、糖尿病リスク低減の食事療法を実践した参加者は、個人的にも集団的にも、主要な心血管疾患、2型糖尿病、がんの発症リスクを最も低減させた。
・これらの結果は、男女を問わず、さまざまな人種や文化的背景を持つ参加者においても一貫していた。
・これら8つの健康的な食事パターンを比較することで、食事パターンが様々な慢性疾患に対して異なる程度の効果をもたらす可能性があることを発見した。
・高インスリン血症、慢性炎症、糖尿病リスクの低下を目的とした食事が、最も大きな健康効果をもたらす可能性がある。

■ 食事成分の分析
・また、食事パターンと慢性疾患の関係にどのような食事成分が寄与しているかも調査した。
・注目すべきは、食事パターンの全体的な影響は、いくつかの食品で完全に説明することはできないことである。
・健康的な食事の重要な特徴には、奨励すべき食品(例えば、全粒穀物、ナッツ、果物、濃い黄色と葉緑の野菜、コーヒー、場合によってはワイン)と、最小化または回避すべき食品(例えば、加工肉、赤身肉、砂糖入り飲料)がある。

[結論] 食事パターンの複合的な特徴は、構成する食品や飲料の合計を超えるという事実を強調するものである。糖尿病リスクの低減を目標とする食事や、インスリンや炎症経路に関与する食事は、食事介入による健康効果を最大化するための将来のガイドラインに役立つかもしれない。

📕同雑誌内 Editorial
Comparative analysis reveals the potential to maximize the benefits of healthy eating. Nat Med 29, 545–546 (2023). >>> doi.

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「規模感ハンパないって!」

この論文をみた、第一印象である。
まさに近年の総まとめといえる、食事パターンの分析になっていると思う。
このくらいやって、はじめてNature Medicineに掲載されるほどのインパクトをもつ。

そして、あらためて思うのだが、この食事・栄養領域ほどK2P(Knowledge to Practice)が重要な領域はない。
もう、だいたい望ましい食事パターンはわかっているのだ。
そうだろう?
・ポテチは?→❌
・過剰な塩分は?→❌
・Fish or Beef?→だいたいFish❗️
・食物繊維は?→⭕️
・バランスの偏りは?→❌

だから、あとはそれを生活の中で実践すれば、全人類が健康な方向へいくはずなのだ。
だが、そうはいかない、全然。
目の前のポテチを食べないことは、できない。
Fish or Beefなら、Beef食べたいわ。
バランスの偏り、休みの前ならOKでしょ?
この本能の誘惑に打ち勝つこと。
そこに科学を見出し、自分自身をハックすること。
戦場は、そこにある。

誘惑のないこと、それを感じないことが尊いのではない
それに打ち勝っていく処に尊さがあるのだ

神谷美恵子

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